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## ツバメの巣 無断撤去が後絶たず——共存へ向けた心がけとは
春から初夏にかけて、日本各地の軒先や家の出入り口の近くにツバメの巣が見られる季節がやってきます。ツバメは渡り鳥で、毎年遠く東南アジアから海を越えて日本へやってきます。そして、昨年と同じ場所に戻って巣を作り、ヒナを育てる習性があります。そんなツバメたちですが、ここ数年、増えているのがその「巣の無断撤去」をめぐる問題です。
Y!ニュースによると、ツバメの巣を人間にとって「邪魔」「汚い」「怖い」などの理由で撤去してしまうケースが増えており、それが野鳥保護の観点から大きな問題となっています。本記事では、この問題の背景や法的な取り扱い、そして私たちにできる共存のための工夫について、わかりやすく解説していきます。
### ツバメは身近な「自然」——日本人に親しまれてきた鳥
ツバメは古くから日本人に親しまれてきた鳥です。「ツバメが巣を作る家には福が来る」と言われるように、縁起の良い存在として扱われてきました。農村部では、ツバメがいることで害虫を食べてくれる役割を果たし、家の中に穏やかな日常を感じさせる存在でもあります。
ところが近年、都市化の進展や生活スタイルの変化により、人とツバメの関係性は少しずつ変化してきました。軒先に巣を作られることで、糞や羽根の散乱による汚れ、またアレルギー反応などを懸念する人が増えているのが現状です。
### 知らずに違法？——鳥獣保護管理法の規定
「掃除が大変なので、撤去してしまった」という人もいるかもしれませんが、実はツバメを含む野鳥は、法律によって保護されていることをご存じでしょうか？
日本では、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律（通称：鳥獣保護管理法）」によって、野鳥とその卵・ヒナ・巣も含めて、勝手に捕獲・損傷・殺傷・移動・駆除してはならないと規定されています。違反した場合は、懲役や罰金などの刑事罰が科せられる可能性もあります。
特に、巣に卵がある、またはヒナが育っている状態での撤去は、法律違反となる可能性が極めて高く、慎重な対応が求められます。意図的でなくても、「知らなかった」では済まされないのが実情です。
### なぜ無断撤去が増えているのか？
無断撤去の背景には、生活環境や価値観の変化もあります。例えば、駅やショッピングモール、マンションの出入り口などに巣を作るケースでは、人の往来が多く「見た目が悪い」「清掃が大変」といった理由で撤去されてしまうことがあります。
また、小さなお子さんや高齢者がいるご家庭では、鳥インフルエンザなどの感染症を過度に心配してしまい、「安全のために取り除かねば」と考える方もいます。しかし、国内でツバメを通じた感染症の報告は極めて少なく、必要以上に恐れることはありません。
さらに、都市部では自然との接点が少なくなり、「野鳥の営巣＝迷惑」と感じてしまう人が増えていることも一因となっているようです。
### 私たちにできる工夫——ツバメとの共生のために
では、ツバメの営巣を迷惑と感じる人がいる一方で、どのように共存の道を探ることができるのでしょうか？下記にいくつかの対応例をご紹介します。
**1. 巣の下に「フン受け」を設置する**
ホームセンターなどで販売されている「フン受け板」や、自作の段ボールトレイを巣の下に設置するだけで、糞害はかなり軽減できます。最近では、ツバメ巣用の受け棚や汚れ防止シートなども登場しており、管理がしやすくなっています。
**2. 人通りの多い場所では、誘導する方法を考える**
どうしても人の出入りが多く危険が伴うような場所に巣を作ってしまった場合は、事前に簡易的な防鳥ネットなどで該当箇所への営巣を防ぎ、あらかじめ静かで安全な別の場所に人工巣を設置して誘導するケースも見られます。
この際も、「営巣前」に対応することが原則です。卵やヒナが存在する場合の対応は、自治体や自然保護団体に相談し、適正な処置を行いましょう。
**3. 地域で見守る意識を強化する**
ツバメは一羽ではなかなか生活できません。地域での見守り活動や、民家の壁を利用した「つばめマップ」などの試みが各地で行われており、共存の意識を高める一助になっています。自治体によっては、ツバメを観察するコーナーや啓発チラシを配布しているところもあります。
### ツバメと共にある日常の大切さ
都会の騒がしさや忙しさのなかで、ツバメの姿は人々に「季節の移ろい」や「生命の営み」を静かに伝えてくれます。子どもたちにとっては、自然と触れ合い、動物の命の大切さを学ぶ絶好の機会にもなります。
ツバメは、人間の生活圏と自然の接点にいる存在だからこそ、私たちのささいな配慮や優しさがその生き方を左右します。私たち一人ひとりが「どうすれば共に暮らしていけるか」を考えることが、持続可能な社会の第一歩になるのかもしれません。
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ツバメの小さな命を守ることは、私たち自身の暮らしや未来を見つめ直すことでもあります。共にある自然を、どうか大切にしていきたいものですね。
