57歳で突然発症した「網膜剥離」──見えなくなる恐怖とその後の生活
57歳という年齢で「網膜剥離」という目の病に突然襲われた男性の体験が、多くの人々に警鐘を鳴らしています。この記事では、その男性の実体験をもとに、網膜剥離の症状、原因、治療法、そして再び視界を取り戻すまでの道のりを紹介します。年齢を問わず誰にでも起こりうるこの症状について正しい知識を持つことが、いざという時の早期発見・早期治療に繋がるかもしれません。
視野の欠損「それは突然だった」
この記事の主人公である男性は、普段から健康に気を使っており、特に目に関して問題を感じていませんでした。ところがある日、車の運転中に「右目の隅の視野が突然欠ける」感覚に襲われます。それはまるで、何か黒いカーテンが視界の端からじわじわと降りてくるような、言葉では表現しがたい不自然な“違和感”だったと語っています。
最初は疲れ目かもしれないと放置しようとしましたが、翌日になっても症状が改善することはなく、すぐに眼科を受診。診察の結果、「網膜剥離」と診断され、そのまま緊急手術を受けることになりました。
網膜剥離とは? 自覚症状と原因
網膜剥離とは、眼球の内部にある光を感知する薄い膜「網膜」が、眼球の内壁からはがれてしまう病気です。最初は視界に閃光が見えたり、小さな黒い点が浮いて見える飛蚊症の症状から始まり、進行すると視野が欠損したり、完全に見えなくなる恐れがあります。
加齢による影響や強度近視、眼球への打撲などが原因とされていますが、突然発症するケースも多く、自身ではなかなか早期発見が難しいのがこの病の特徴でもあります。記事の男性も「まさか自分がそうなるとは思いもしなかった」と語っており、自覚症状の重要性を訴えています。
手術と回復への道
男性は、診断を受けたその日にそのまま入院し、翌日には手術を受けました。網膜剥離に対する治療法には大きく分けて2種類あり、「硝子体手術」と「強膜内陥術」があります。今回のケースでは「硝子体手術」が選ばれ、眼球内に細い器具を挿入して剥がれた網膜を元の位置に戻し、空気やガスを使って固定する方法が採用されました。
手術は成功し、術後の経過も良好だったものの、完全な回復までには時間を要しました。特にガスを用いた場合は、術後1週間以上うつ伏せでの姿勢を保つ必要があり、それだけでも精神的・肉体的な負担は非常に大きいものだったといいます。
術後の生活と再発への不安
手術後の男性は、視力の回復や再発の不安と日々向き合いながらの生活を送っています。特に術後すぐは、見える範囲も不安定だったり、形が歪んで見えるなどの違和感があり、完全に元通りとはいかなかったそうです。時間とともに視機能が安定してくるにつれ、日常生活には大きな支障はなくなったものの、「もし反対の目に発症したら…」という不安を抱えながら生活していると述べています。
その経験を通じて、男性は「今ある視力を大切にし、目に違和感があればすぐに病院に行くことの大切さ」を強く感じたと振り返ります。なぜなら、網膜剥離は治療が遅れると失明に至る可能性もあるため、早期の対応が視力を守る最大の鍵となるのです。
中高年以降に増える「目の病」
日本では40歳以上の男性において、網膜剥離の発症率が高くなるという報告もあり、今回のように50代後半で発症するケースは決して珍しくありません。特に40歳を過ぎると加齢による眼球内の構造変化が進み、「後部硝子体剥離」と呼ばれる現象が起きやすくなります。これも網膜剥離の一因となるため、自覚症状がなくても定期的な眼科検診が重要になってきます。
また、強度の近視を持つ人も比較的リスクが高いとされており、普段から飛蚊症や光視症(フラッシュのような光が見える症状)に悩まされている人は特に注意が必要です。これらの症状が普段より強く感じられる場合や、視野の一部が欠けて見えるようなことがあれば、迷わず眼科を受診するべきでしょう。
予防できる? 日頃の目の健康管理
残念ながら、網膜剥離そのものを完全に予防する手段は確立されていませんが、目の健康を日頃から意識することは発症リスクの低減に繋がります。以下のような習慣が推奨されています。
・定期的な眼科検診(特に40歳を過ぎたら年1回以上)
・PCやスマートフォンの長時間使用を控える
・目の疲れを感じたら休息をとる
・強度の近視の人は飛蚊症や光視症の変化に敏感になる
・強い打撲を目に受けないよう注意する
また、健康的な食生活や適度な運動、十分な睡眠など、全身の健康維持が目の健康とも密接に関係しています。
「違和感」は体からのサイン
57歳での突然の網膜剥離という経験を通して、男性は「いつもの感覚とは少し違うな」と思った瞬間に行動する大切さを身をもって知ったと語ります。現代社会では「疲れ」と割り切って放置してしまいがちなこうした違和感ですが、実際には体からの重大なサインであることも少なくありません。
特に視力という、人間の五感の中でも最も重要ともいえる感覚が損なわれると、その後の人生に大きな影響を及ぼしかねません。見えるということのありがたさ、その尊さを改めて実感し、日頃から目を労わる暮らしを意識することが求められています。
最後に
「視野が欠けた」と感じたその瞬間から、命を守るかのように迅速に行動したことで、男性は視力を失うという最悪の状況を回避することができました。しかし、網膜剥離は誰にでも起こりうる病気であり、放置すれば失明に至る可能性もあります。一人でも多くの方がこの記事を通して目の健康について考え、日頃の生活の中で「目の違和感」に敏感になるきっかけとなれば幸いです。
それは、自分自身の未来の視界を守ることに繋がるのです。