1995年に失踪した女性、門脇綾乃さん――17歳で突然行方不明となってから、28年が経ちました。当時高校生だった彼女の消息はいまだにつかめておらず、家族・警察・地域社会の尽力にも関わらず、事件の全貌は解明されていません。長い年月が経った今でも、彼女の行方を案じる家族や当時の関係者、そして事件を風化させないようにと努力する人々の想いは途切れることなく続いています。
今回、失踪から28年が経過したことを受け、改めて兵庫県警が情報提供を呼びかけています。小さな手がかりでも良い、28年という時を超えてもなお事件解決を諦めない決意が表れています。
門脇綾乃さん失踪の経緯
1995年7月、当時兵庫県姫路市に住んでいた高校2年生の門脇綾乃さんは、学校を無断欠席しました。その後、家族が行方を確認しようとしましたが、携帯電話もつながらず、自宅にも戻ることはありませんでした。家族が警察に捜索願を出す一方で、友人関係や交友関係などを慎重に確認しましたが、有力な情報は得られませんでした。
目撃情報も極めて乏しく、失踪後すぐの内は誘拐の可能性なども含めて捜査が行われましたが、手がかりはなく、年月が経つにつれて事件の全貌は徐々に難解さを増していきます。現在、兵庫県警による捜査は「未解決事件」として継続しており、定期的に情報提供の呼びかけを行っています。
家族の「待ち続ける思い」
門脇さんの母親は、事件から28年が経過した今も娘の帰りを信じて待ち続けています。毎年、命日に当たる日に地元の駅や商業施設などでチラシを配布し、彼女の顔写真や特徴を記載したポスターを掲示するなど、市民に直接訴えかけ続けてきました。
インタビューに応じたご家族の言葉には、時と共に変化する感情の揺れがにじみ出ています。「もう28年も経っているのに、何もわかっていないという現実を受け止めるのがつらい」と話す一方で、「どこかで生きていて、戻ってきてくれると信じたい」という切実な思いも吐露されました。家族にとっては、年月が経過しても「終わった話」などでは決してなく、ずっと止まったままの「時間」を生きているのだと感じさせられます。
捜査の現状と市民への呼びかけ
兵庫県警は未解決事件に関する特設窓口を設け、綾乃さんに関する情報を広く呼びかけています。特に今回は、顔写真のほかに「現在29~30歳になっている可能性のある合成写真」も作成・公開し、年齢を重ねた姿を思い浮かべてもらえるよう工夫がなされています。
また、SNSやデジタルツールを活用した情報発信も強化しており、若い世代にも関心を持ってもらう取り組みが始まっています。どんな小さな違和感でも、記憶の隅にある情報でも構わない。一人ひとりの記憶が事件解決の鍵となり得ることを、警察は繰り返し強調しています。
もしも「あの時こんな子を見かけた」「以前こんな話を聞いた」ということがあれば、ぜひ警察の専用窓口への連絡が呼びかけられています。
失踪事件をどう捉えるか
未解決の失踪事件には、時間の経過と共に次第に関心が薄れてしまう難しさがあります。しかし、当事者である家族にとっては、年月が経ったからといって気持ちが薄れるようなことはありません。毎日が「何もわからないまま続く日々」であり、「生きていれば、今どこで、どんな生活をしているのか」「もう会えないのか、それともいつか奇跡が起こるのか」と思い続ける時間なのです。
こうした事件報道を見ることで、「自分だったらどうするか」「身近に突然いなくなった人がいたらどうすべきか」といった想像力を高めるきっかけにもなります。そして、私たち市民の一人ひとりが、事件を「自分とは関係のない遠い世界」として片付けてしまわず、記憶の片隅にとどめておくことが、解決への一助となる可能性があります。
また、防犯の観点からも、家庭や学校、地域社会において「もしもの時にどう対応すべきか」を話し合う機会を持つことが改めて大切になります。今ある日常は、「当たり前」ではなく「偶然の積み重ね」であるという認識を、こうした事件は私たちに改めて教えてくれます。
未来への希望をつなぐ
門脇綾乃さんの失踪から28年という節目を迎え、家族や警察だけでなく、一般市民一人ひとりも「風化させない」努力の一端を担うことが求められています。長い年月が経った事件であっても、思いがけない記憶や情報が新たな展開をもたらす可能性はゼロではありません。技術の発展と人々の協力により、未解決事件が再び動き出したケースも複数あります。
現在、兵庫県警は匿名での情報提供にも対応しています。情報の内容によっては報奨金制度が適用される場合もあるとのことで、情報を持っているけど伝えづらいと感じている方への配慮も進んできています。
私たちにもできることは、小さなことでもたくさんあります。記事を読んで門脇綾乃さんのことを知った方は、ぜひ周囲にもその話題を伝えてみてください。その一言が、新たな情報のきっかけになるかもしれません。
最後に、今も必死に探し続けているご家族の思いに、少しでも応えることができるように――。私たちがこの出来事を「過去のこと」とせず、現在進行形のできごととして関心を持ち続けていくことが、綾乃さんとご家族の28年間に寄り添う最大の支援となるはずです。
もし心当たりの情報がある方は、兵庫県警や最寄りの警察署、または公式ホームページからの情報提供もご活用ください。誰かの一歩が、希望へとつながる一歩になることを願ってやみません。