インド発祥のスパイス香る炊き込みご飯「ビリヤニ」を提供する店が、ここ日本でも急速に増えています。もともとは南アジアの伝統料理であるこのビリヤニは、今や日本国内のエスニック料理店や専門店のメニューに頻繁に登場するほどの人気ぶり。その背景には、数々のグルメトレンドの変遷や、食文化の多様化に対応する消費者の嗜好、そしてスパイス料理の健康価値の見直しがあります。
今回は、「ビリヤニ食べられる店増 人気の訳」という注目の話題をもとに、なぜ今こんなにもビリヤニが日本で支持されているのか、その理由とともに、ビリヤニの魅力や国内のおすすめスポットなどを掘り下げてご紹介します。
ビリヤニとは? そのルーツと魅力
ビリヤニは、主に米(バスマティライス)を香辛料やハーブ、肉や魚介、野菜と一緒に炊き上げた料理です。起源は諸説ありますが、ペルシャからインドに伝わり、各地のムスリム文化に合わせて進化を遂げたとされています。世界各国に地域ごとのバリエーションが存在し、インドのハイデラバード風、ムンバイ風、バングラデシュ風、スリランカ風など、具材やスパイスの使い方に違いがあります。
ビリヤニの魅力は何と言っても、複雑で奥深いスパイスの香りと、じっくり時間をかけて炊き上げることで生まれる豊かな風味、そして噛むたびにご飯と具材の旨みが感じられる点にあります。特に、日本人にとって米料理は親しみ深く、食べやすいという点も人気に拍車をかけています。
日本で広がるビリヤニ人気
2020年代に入り、日本でもビリヤニを専門とするレストランやテイクアウト専門店が増えてきました。もともとカレー専門店の一部で提供される“隠れメニュー”的な存在だったビリヤニが、いまでは主役級の扱いに。特に東京や大阪といった大都市圏では、週末ともなるとビリヤニを求めて行列ができる人気店も登場しています。
また、SNSをきっかけにビリヤニの存在を知ったという若い世代の消費者も多く、インスタグラムやTwitterで「#ビリヤニ」のハッシュタグ投稿が増加。見た目の華やかさや、熱々の釜から立ち上るスパイスの香りを視覚と嗅覚で楽しめることが、SNS映えする料理としての人気にもつながっています。
なぜここまで人気が加速しているのか
1. 健康意識の高まりとスパイスブーム
コロナ禍を経て、健康意識が高まる中、自然由来のスパイスを使った料理に注目が集まっています。ビリヤニに使用されるターメリック、クミン、カルダモン、クローブなどのスパイスには、抗酸化作用や消化促進、血行促進などの効能があるとされ、免疫力の維持や体調管理を気にする人々にとって魅力的な要素となっています。
2. エスニック料理の市民権の獲得
これまで主にカレーやタイ料理などに偏っていた日本でのエスニック料理ブームですが、最近では中東料理や南アジア料理などの多様な文化が受け入れられるようになりました。その中においてビリヤニは、「スパイス=辛い」というイメージにとらわれない、芳醇でやさしい味わいという新しい発見を提供してくれる料理として再評価されています。
3. ベジタリアン・ヴィーガン層からの支持
ビリヤニにはチキンやラムを使うものが一般的ですが、野菜だけで作るベジタブルビリヤニも多くの店で提供されるようになっています。動物性食品を控えている人や宗教的な理由で特定の食材を避けている人にも対応できるレパートリーの広さが、現代の価値観にマッチしています。
家庭でも楽しめるビリヤニ
最近では、ビリヤニを家庭で手軽に楽しめるようになりつつあります。市販のビリヤニスパイスミックスや、レトルトビリヤニ、冷凍食品なども充実してきており、スーパーマーケットでも見かける機会が増えました。バスマティライスやギー(インドの伝統的なバターオイル)なども通販で入手可能なので、少し手間をかければ自宅で本格的なビリヤニを再現することもできます。
おすすめのビリヤニ専門店
全国には、個性あふれるビリヤニ専門店が点在しています。以下は、特にビリヤニ好きから人気を集めている店の一部です。
– 東京・御徒町「ダバ・インディア」:スパイスの香り高さで高評価。南インド風の本格派が楽しめます。
– 大阪・心斎橋「ニルワナム」:香辛料の配合にこだわり、チキンビリヤニが看板メニュー。
– 名古屋「クリシュナ・ビリヤニ」:炊き加減に定評あり、ベジタリアン対応メニューも豊富。
シェフによって使うスパイスの種類や配合が異なるため、食べ歩けば食べ歩くほど奥の深さが感じられるのも魅力です。
今後の展望:さらなる多様化へ
ビリヤニ人気は今後も続くと予想されており、既存の南アジア料理店だけではなく、和とビリヤニの融合、創作系メニューなども登場しています。例えば、抹茶や柚子など日本ならではの食材を使った和風ビリヤニや、スープタイプ、アヒージョ風など、洋風アレンジも注目されています。
また、「食の異文化交流」が日常に溶け込む中、ビリヤニのように一皿で世界観を表現できる料理は、食育や異文化理解の一環としても価値があります。
まとめ:一度は食べてみたい世界の味
ビリヤニは、その美味しさだけでなく、食文化としての背景や、健康・多様性・トレンドという現代の価値観にもしっかりとフィットしている料理です。日本におけるビリヤニ人気の高まりは、単なる「流行」ではなく、私たち日本人の味覚やライフスタイルの変化を象徴する“食の進化”のひとつといえるでしょう。
まだ本格的なビリヤニを試したことがない方は、ぜひこの機会に近くの専門店を訪れてみてください。一口食べれば、異国情緒あふれるスパイスの世界が、私たちの暮らしに深く根づいていく実感が得られるはずです。