近年、街を走行する車両の中には、見た目を派手に改造した車や、走行音が非常に大きな車を見かける機会が増えてきました。こうした改造車の中には、法律で定められた基準を逸脱した「不正改造車」と呼ばれる車両も少なくありません。こうした不正改造車について、国土交通省は警鐘を鳴らし、全国的に取り締まりを強化しています。
今回のYahoo!ニュース(2024年6月10日配信)では、「自己満足」不正改造車の危険性というタイトルのもと、不正改造車の現状とその危険性について詳しく取り上げられていました。本記事では、この報道をもとに、不正改造車が及ぼす影響やその背景、そして私たちが安全で快適な社会を保つためにできることについて考えていきます。
不正改造車とはなにか?
まず「不正改造」とは、法令に違反した車両の改造を指します。日本では、道路運送車両法・保安基準に基づき、車両の仕様や安全性について厳格な基準が設けられています。そのため、見た目を変えたり、運動性能を高めたりという目的で車両を改造する場合でも、その内容が法令に則っていない場合、それは「不正」と見なされ、使用や走行が禁止されることがあります。
たとえば以下のような例が不正改造に該当します。
– 過度に明るくまぶしいヘッドライト
– 保安基準を超える騒音を発するマフラーやエンジン
– 大型のエアロパーツで歩行者への安全性が損なわれる
– 車幅を大きく変更して車検証とかけ離れたサイズにする
– 違法な灯火類(色や点滅の規定に反する)を設置する
これらの改造を施した車は、見た目や音でドライバー本人の満足感を得る目的で行われることが多く、記事内では「自己満足のための改造」とも表現されています。
社会全体に及ぼす危険と影響
では、こうした不正改造車がどのような問題を引き起こすのでしょうか。その影響は、ドライバー本人だけに留まらず、社会全体に広がる可能性があります。
1. 事故のリスクを高める
法令に適合していない改造を施すことで、本来設計された性能や安全性が損なわれる可能性があります。たとえば、車高を不自然に下げてしまうと、段差で車体が地面に当たってコントロールを失うことがあります。また、排気音があまりに大きいと、周囲の音が聞こえにくくなり、警察車両や救急車のサイレンにも気づかず、結果として事故に繋がる危険もあります。
2. 住環境への影響
夜間や早朝に、爆音を響かせて走る車両によって、騒音被害を受けている地域があります。住民の中には「毎晩爆音で目が覚める」「子どもが音に怯えて眠れない」といった深刻な話も多く聞かれます。これは単なる迷惑行為にとどまらず、生活の質や精神的な健康に悪影響を与えているのです。
3. 車離れに拍車がかかる
中には、「車=騒音・迷惑」という印象を持つ人も出てきており、特に若い世代では車に対してネガティブなイメージを抱く傾向があります。法を守ってカーライフを楽しむ多くの人々にとって、不正改造車が業界全体のイメージを損ねているという現実も無視できません。
取り締まりと啓発活動の現状
こうした状況を受けて、国土交通省や警察などの関係機関は、不正改造車に対する監視強化を進めています。2023年度には、全国で実施された合同取り締まりにより、数千件の違反が摘発されたとの報告があります。中には、SNSなどで広まった改造トレンドを真似たために、知らず知らずのうちに違法改造となっていたケースもあります。
また、行政や自動車関連団体は、イベントや学校などで啓発活動を行い、「法とマナーを守ったカスタムこそ、真にカッコいい改造だ」という理念を広める取り組みを強化しています。若年層や初心者ドライバーに向けて、改造と保安基準について正しい知識を持つことの重要性が訴えられています。
私たち一人ひとりができること
不正改造に関する問題は、法律だけでは完全に防ぎきれない場合もあります。そのため、私たち一人ひとりが、安全で快適な交通環境を守る意識を持つことが大切です。以下に、私たちができる具体的な行動をいくつか挙げてみます。
1. 法に則った改造を行う
車のカスタムは、個性を表現できる楽しみの一つでもあります。しかし、見た目や音、性能を追求するあまり、他人に迷惑をかけたり、法律違反となるような改造は避けるべきです。改造を行う際には、必ず保安基準を確認し、専門の業者に相談をしましょう。
2. 情報を正しく得る
ネットやSNSには、さまざまな改造情報があふれていますが、中には誤った情報や違法なカスタムを推奨する内容もあります。情報をうのみにせず、信頼性のある情報源から正しい知識を得ることが大切です。自動車メーカーや国土交通省の公式サイトなども有効な参考になります。
3. 不正改造を見かけたら通報する
不正改造車が公道を走っているのを見かけた場合、最寄りの警察署や自動車整備振興会などに通報することも一つの方法です。また、トラブルを招かず、匿名で通報できる窓口も用意されています。誰もが安心して過ごせる街づくりのために、小さな行動が大きな一歩となります。
結びに
「自己満足」のために行ってしまった不正改造は、結果として自分だけでなく、周囲の人々にも大きな影響を及ぼす可能性があることを、改めて理解する必要があります。個人の趣味や表現の自由が尊重される社会である一方で、それが法律や他人の権利を侵害するものであってはなりません。
車を愛するすべての人が、それぞれの価値観を大切にしながら、安全で快適なカーライフを楽しむためには、法とマナーを守るという基本が何よりも重要です。本来の車の魅力を損なうことなく、社会と調和した車文化を築いていくために、今一度「カッコよさ」と「正しさ」が両立できるカスタムのあり方を考えていきましょう。
誰もが気持ちよく道路を共有できる社会を目指して、私たち一人ひとりができる行動を実践していきたいものです。