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PTAの解散が問い直す、「親の関わり方」の未来形

近年、多くの学校で従来のPTA(Parent-Teacher Association:保護者と教師の会)の在り方が見直され、PTAを解散したうえで新たな組織を立ち上げる動きが全国的に広がっています。この記事では、「PTA解散が増 新組織作る保護者も」というテーマに基づき、PTAを取り巻く現状とその背景、新しい取り組み事例、そして今後の展望について考えてみたいと思います。

■ PTAとは何か ― 成り立ちと役割

PTAは、児童・生徒の健全な育成を目的に、保護者と教師が協力し合うことを目的として構成される団体です。その歴史は戦後にまでさかのぼり、学校と家庭、地域の連携を深めるための重要な架け橋として、多くの学校で活動が行われてきました。校内外の行事運営、安全の見守りや地域との連携、広報誌の作成まで、その活動は多岐にわたっています。

■ 加入は「任意」だが「強制」の現実

法的にはPTAへの加入は任意であるとされていますが、実際には新学期の保護者会で自動的に加入が前提とされていたり、脱退の意思表示がしにくい雰囲気があったりと、“事実上の強制加入”と受け止められてきた面があるのも否めません。

「仕事をしながらPTAの役員を務めるのは負担が大きい」「活動の意義や必要性が分からないまま役割を押し付けられる」。そんな声が近年、保護者の間で少しずつ表面化してきています。これまで“当たり前”とされてきた仕組みが、現代の多様な生活スタイルや価値観にそぐわなくなってきているのです。

■ PTA解散の動きが加速 ― 自治体による対応と学校の変化

実際に、近年ではPTAの解散を決断する学校も増えてきています。中には、保護者が一致団結して総会で解散を決議し、その後、自主的な新組織――例えば「保護者と教職員の任意団体」や「サポートクラブ」などを立ち上げる例もあります。

たとえば、大阪府や神奈川県など都市部を中心に、PTAを解散し、学校と保護者がよりフラットに関われる新しい組織形態を模索する動きが見られます。これらの新組織では、「役員の輪番制の廃止」や「無理のない活動の自由参加」が特徴で、参加する保護者にとっても心理的負担が軽減されているといいます。

また、自治体によってはPTAに代わる地域との橋渡し機関を立ち上げたり、学校側が保護者と話し合いながら柔軟な支援体制を整えるなど、新たな教育環境の構築に向けて一歩を踏み出しています。

■ PTA問題が浮き彫りにした“共働き社会”の課題

PTA解散や見直しの動きが増えた背景には、共働き世帯の増加や、ひとり親家庭の負担感など、現代の家庭環境の大きな変化があります。

特に共働き家庭では、日中に参加を求められるPTA活動が大きなプレッシャーになることが少なくありません。「やりたくても物理的にできない」「参加できないことで罪悪感を感じる」――そんな状況は、多くの保護者にとって非常に重い負担としてのしかかります。

その上、多忙な中で役職が回ってくることがあり、そのために職場を休んだり、子どものお世話と並行して夜に資料を作成したりと、無理を重ねざるを得ないケースもあります。こうした状況が続けば、“ボランティア”であるはずの活動が“義務”となり、本来の主旨から外れてしまう懸念も指摘されています。

■ 「つながり」は失われずに維持できるか?

PTAを解散することで気になるのは、“地域や学校とのつながりがなくなってしまうのでは?”という不安です。

しかし、実際に新たな組織へと移行した学校では、逆に保護者と教職員の自由な交流が生まれ、より円滑なコミュニケーションが図られているケースもあります。活動に“任意性”がある分、「やってみたいと思った人がやる」「助けが必要なときに手を差し伸べられる」そんな温かな関係性の構築が目指されています。

たとえば、年に1回のお祭りのみボランティアを募集したり、登下校の見守り活動を地域の高齢者との連携で実施したりと、従来のPTAの枠にとらわれない柔軟な方法が模索されています。

■ 子どもたちのために、できることをできる範囲で

忘れてはならないのは、PTAも新組織も、すべての活動は「子どもたちのため」にあるということです。では、その“ため”に、私たちは何をどうすべきなのでしょうか?

答えは一つではありません。大切なのは、保護者一人ひとりが自分のライフスタイルや価値観に合った形で、無理なく子どもたちに関わり、支える仕組みを築いていくことです。そして、それを実現するためには、話し合いを重ねながら“時代に合った仕組み”を共に創り出していくことが不可欠です。

子どもにとって、家庭・学校・地域の大人が支え合い、見守ってくれる環境は何物にも代えがたい“安心感”をもたらします。だからこそ、私たちは「やらされる」ではなく、「進んで支える」――そんな共助の在り方を模索することが求められているのです。

■ 最後に ― “参加する形”を自分たちで選べる社会へ

PTAに代わる新しい保護者組織のあり方は、まだまだ模索の途中ですが、「制度が時代に合っていないなら変えればいい」という柔軟な発想が受け入れられつつあります。

参加を無理に求めるのではなく、多様な参加方法を用意して、多くの人が“自分にできる形”で関われるようにする。そんな優しい仕組みを目指して、今こそ私たちは、学校と家庭、地域が三位一体となった新しいつながりについて考える時期に来ているのかもしれません。

常に子どもたちの笑顔を中心に据えて、大人たちが手を取り合い支え合う社会。それは決して理想論ではなく、私たち一人ひとりの行動から始まる現実の一歩なのです。