6月18日、選択的夫婦別姓制度の導入をめぐって、国会にて新たな動きが見られました。立憲民主党、日本維新の会、共産党の3野党がそれぞれ提出していた夫婦別姓の導入に関する民法改正案が、衆議院法務委員会で同時に審議の対象として取り上げられたのです。これにより、選択的夫婦別姓制度の具体的な議論が本格化する兆しを見せはじめました。今回は、この制度の経緯や背景、そして今後の展望について詳しくご紹介します。
■選択的夫婦別姓制度とは?
現在の日本の民法では、婚姻する際に夫婦は同じ姓を名乗らなければならないと定められています。日本では結婚したカップルの約96%が妻が夫の姓に変更しているとされ、特に女性に対する影響が大きいと指摘されています。
選択的夫婦別姓制度とは、結婚する際に夫婦が同姓を選ぶこともでき、別姓を選ぶこともできるという制度です。強制ではなく「選択制」であるため、従来の価値観や家族の形を守りたい人たちにとっても、現行制度をそのまま選択することが可能です。一方で、姓を変えることで生じる社会的・職業的な不便さを感じている人々にとっては、自らの意志で姓を保持できる柔軟な選択肢となります。
■なぜ今、再び議論されているのか?
夫婦同姓を義務付ける現行法律については、長らく見直しの声が上がってきました。少子高齢化や多様な家族の在り方が顕在化しつつある中で、従来の制度が現代社会に合わなくなってきているとの認識が広まっています。
実際、最高裁でも過去に夫婦同姓制度の合憲性について議論されており、2015年と2021年の判決ではいずれも「合憲」とされたものの、いずれも判決には裁判官の間でも意見が分かれていたことが明らかになりました。
また、内閣府の世論調査では「選択的夫婦別姓制度を導入すべき」との意見が過半数を超えており、特に若い世代や都市部を中心に支持が強まっているとされます。そのような背景を受けて、制度の柔軟化がいよいよ政治の場で現実的な議題となってきたのです。
■3野党の法案が審議入り―各党のアプローチ
今回、衆院法務委員会で取り上げられたのは、立憲民主党、日本維新の会、共産党がそれぞれ提出していた選択的夫婦別姓を導入する内容の民法改正案です。法務委員会で3つの案が同時に審議対象となったことは、これまで個別の法案提出に留まり審議すら行われなかった状況からすれば、大きな一歩であると言えるでしょう。
立憲民主党は以前からこの制度の導入に賛成しており、これまでも複数回にわたり民法改正案を提出してきました。今回の内容も、基本的に過去の案を踏襲しており、婚姻時に夫婦それぞれが同姓あるいは別姓を選べるようにすることが主旨です。
日本維新の会も、個人の尊厳と多様な選択を尊重する観点から、選択的夫婦別姓を認める方向で法案を作成しています。特徴的なのは、制度設計において家庭内での混乱を防ぐためのルールづくりに配慮を見せている点です。
共産党も一貫して選択的夫婦別姓制度の導入を訴えてきました。他の野党と足並みを揃える形で、婚姻時に自由に姓を選べる立法を目指しています。
このように、各野党が同様の趣旨を持って異なる法案を提出したことは、野党間での協力の可能性を示唆しており、今後の国会審議を通じて一本化された法案としてまとめられることも期待されています。
■与党・自民党のスタンスは?
現段階では、与党である自民党は慎重な構えを保っています。党内には伝統的な家制度を重視する見解や、夫婦別姓が子どもへの影響を与えるのではないかと懸念する声もあり、一枚岩ではありません。一方で、かつてよりも「議論自体は必要である」との認識も広まってきており、完全に議題から除外するという姿勢ではなくなってきています。
特に若手議員の間では、社会の変化に対応する必要性を訴える声もみられ、今後の党内議論の動向に注目が集まっています。
■国民の声と今後の展望
世論調査では、選択的夫婦別姓に対する賛成意見が拡大していることはすでに触れましたが、とりわけ女性や若者の間で「自己決定権の象徴」として、制度改革の必要性を訴える声が高まっています。
また、グローバル化が進むなかで、国際結婚や海外での生活、ビジネス環境などにおいて現行制度が不便だと感じる人々も少なくありません。例えば海外では、別姓で生活している夫婦が日本では法的にはそれが認められず、様々な手続き上の障害が生まれているケースも報告されています。
こうした現実に即した制度づくりが求められており、今国会で初めて実質的な審議に入ったことは、大きな転機として位置づけられます。
■まとめ:未来の家族の形を見据えて
選択的夫婦別姓制度は、単なる「姓をどうするか」にとどまらない、個人の尊厳や多様な生き方をどう社会が受け止めていくかという、より広い意味を持つテーマです。結婚のあり方、家族の形が多様化する現代において、すべての人が納得できる制度を構築していくことは、社会全体の成熟を示す一歩でもあります。
今後、国会での審議を通じて、与野党が建設的な議論を進め、より多くの国民の思いやニーズを反映した制度が整うことを期待したいところです。私たち一人ひとりもまた、家族の形について改めて考え、未来の暮らしを形作っていく意識を持つことが求められているのかもしれません。