Uncategorized

都営バスで再び乗客置き去り──問われる公共交通の信頼と私たちの関わり方

2024年、東京都を走る都営バスにおいて、乗客が車内に置き去りにされるという事案が3回発生し、公共交通機関の安全性とサービスの在り方に対して改めて考える機運が高まっています。中でも、今回報道された出来事は「今年度3回目の置き去り事故」として注目を集めており、東京都交通局に対して利用者・市民から不安や疑問の声が上がっています。

私たちが日々利用する公共交通機関。その根底には「誰もが安心して利用できること」「無事に目的地まで運んでもらえること」といった信頼関係があります。その信頼が揺らいでしまうとき、利用者は不安に駆られ、改善を求める声が強くなります。本記事では、今回の都営バスでの置き去り事故についての概要と、その背景、今後の改善の取り組み、そして私たちが公共交通とどう向き合っていくかについて考えていきましょう。

■ 今年度3回目の置き去り事故とは

報道によると、今回の置き去り事故は東京都北区内にある都営バスの営業所で発生しました。乗客がバス車内に取り残されたまま、運転士がバスを車庫に戻してしまったというものです。

具体的には、高齢の女性がバスの座席で寝ていたため、運転士が気付かずに車庫に戻ってしまったとされています。車庫に到着した後、別の職員が点検中に女性を発見。幸いにも怪我や体調の異常はなかったということですが、その場に取り残された乗客がどれほどの不安を感じただろうかと想像すると、胸が痛みます。

また、これは偶発的な1件ではなく、既に今年度に3回目の発生。つまり、過去の事例からの学びや対策がまだ十分でなかった可能性もあると受け止められています。

■ なぜこのような事故が繰り返されるのか

では、なぜこのような置き去り事故が発生してしまうのでしょうか?

まず第一に挙げられるのが、「終点での車内確認不足」の問題です。バスは乗り合いで運行される公共交通機関であるため、終点に到着した際には車内に忘れ物や残された乗客がいないかを確認する業務が運転士に課せられています。しかし、業務の多忙さや運行ダイヤの厳しさなどから、この確認作業が形骸化してしまうこともあるようです。

また、今回のように乗客が座席で眠っていた場合、運転士が気づかないリスクもあります。安全のための確認は、目視によるものだけでなく、意識的な点検として習慣づけることが大切です。

加えて、車内に防犯カメラが設置されている場合でも、その映像を活用して乗客の存在を確認する仕組みがあるのかどうか、運用マニュアルにどれだけ実効性があるのかも問われています。

■ 都交通局の対応と再発防止策

こうした事故を受け、東京都交通局では改めて再発防止に努める方針を表明しています。

具体的には、「終点到着時の車内確認の強化」を指示し、運転士が車内を目視で確認する手順を再教育。また、営業所でのチェック体制も強化するとのことです。バス車内に「乗客がいないかを確認してください」という記載を掲げるなど、職員だけでなく乗客自身にも注意を呼び掛ける工夫を取り入れています。

さらに、今後は新技術の活用も検討されています。例えば座席の着席センサーや搭乗者状況をリアルタイムで監視できるシステム、AIによる安全確認支援など。一方で、運用にはコストや実用性といった課題もあり、実現には時間がかかると見られます。

しかし、どれほど方法や手段が発展しても、最終的にそれを実行するのは「人」であることを忘れてはなりません。運転士一人ひとりが自分の業務の重要性を真摯に受け止め、責任感をもって行動することが、安全運行の鍵を握っているのです。

■ 利用者としてできること

バスを利用する私たち利用者にも、できることがあります。それは、「周囲への気配り」と「情報の共有」です。

例えば、終点前には意識的に周囲の様子を見る、具合の悪そうな人や眠っている人がいれば、そっと声をかける。また、異変を感じたら運転士や乗務員に知らせることで、重大なトラブルを未然に防げる場面もあるかもしれません。

もちろん運営側の責任は大きいですが、サービスを利用する側も社会の一員として協力し合う姿勢が、安全で心地よい公共交通をつくる第一歩につながります。

■ 高齢社会に対応した公共交通のあり方

今回の事故に登場するのは高齢者女性でした。日本が高齢社会に突入している今、誰もが安心して移動できる環境づくりが急務です。年齢や体力、健康状態に関係なく、すべての人が等しく移動の自由を享受できる社会でなければなりません。

そのために、公共交通機関にはますます多様なニーズへの対応が求められます。高齢者、障害を持った方、小さな子どもを連れた家族など、多様な人が安心して利用できる運行体制、施設のバリアフリー、配慮ある接客、そしてトラブル時の迅速かつ丁寧な対応が、今後の最重要課題となっています。

■ まとめ 〜安心して乗れるバスに向けて〜

都営バスで発生した乗客置き去り事故。幸いにして大きな人的被害はありませんでしたが、公共交通に対する私たちの信頼を揺るがす出来事であることに変わりはありません。

このような事故が二度と起きないよう、東京都交通局をはじめ、各バス事業者には安全第一の対応と再発防止策が求められています。そして、その努力が確実に実を結ぶよう、私たち市民一人ひとりが公共交通に対して思いやりと注意を持って接することもまた重要です。

「安全」「安心」「信頼」──これらはすべての公共サービスに不可欠な価値です。誰もが笑顔で移動できる社会のために、行政・企業・利用者が力を合わせてよりよい交通環境を作っていくことが、今私たちにできる一歩ではないでしょうか。