6月に入り、気温や湿度の変化に加え、新年度の疲れが重なって体調や気分を崩してしまう方が増える時期となりました。特にこの時期に注目されるのが「六月病」という言葉です。実際に体の症状が出るだけでなく、心の面でも不調を感じるこの「六月病」は、誰でもかかる可能性がある身近なものです。
本記事では、「六月病」とは何か、その原因や特徴、対策について詳しく解説し、心身のバランスを整えるためのヒントをご紹介します。もしこの時期、何となく気分が落ち込んだり、疲れが取れなかったりする方がいれば、ぜひ参考にしてみてください。
■ 「六月病」とは?
「六月病(ろくがつびょう)」とは、6月に入ってから心身に不調を感じる状態を指す通称です。医療的な正式名称ではありませんが、学校や職場といった新しい環境への適応が求められた4月からの2ヶ月が経過し、5月の連休(いわゆるゴールデンウィーク)明け頃から、心のエネルギーが切れてしまう人が多いことから、近年こう呼ばれるようになりました。
特に新社会人や異動・転勤などで新しい環境に飛び込んだ人に多く見られます。4月は緊張感や興奮でなんとか頑張れるものの、5月後半から6月に入る頃になると、その反動が心と体に現れやすくなるのです。
■ 主な症状
六月病の症状はさまざまで、以下のようなものが一般的に見られます。
・朝起きられない、眠っても疲れが取れない
・集中力が続かず、ミスが増える
・気分が落ち込みやすい、やる気が出ない
・胃腸の調子が悪い、食欲がない
・頭痛や肩こりが続く
・職場や学校に行きたくない、対人関係がつらく感じる
これらはうつ病や自律神経失調症の初期症状とも似ており、無理をするとさらに深刻な状態に至る恐れもあるため、「たかが気分の問題」などと軽く考えずに、自分の心身の変化には敏感になることが大切です。
■ なぜ6月に心の不調が増えるのか?
六月病にはいくつかの背景がありますが、主な要因として以下が挙げられます。
1. 環境の変化に対する適応疲れ
新年度での生活が始まり、大きな環境の変化があった方にとっては、その緊張とストレスが2ヶ月以上続いており、心身に疲れが溜まりやすいタイミングです。“頑張りどき”を過ぎ、エネルギーのガス欠状態になるのがまさに6月なのです。
2. 気候変動と天候の影響
日本の6月は梅雨の時期にあたります。長引く雨や曇天によって日照時間が減ると、脳内のセロトニン(心を安定させるホルモン)が分泌されにくくなるといわれています。気温・湿度も高くなり、身体のだるさを感じやすくなるのもこの時期ならではの特徴です。
3. 明確な目標を失いやすい
4月から新生活を頑張ってきた人ほど、充実した日々を送っていたつもりでも「今の自分は何を目指しているのか」という目的意識を見失いがちになります。特に仕事や学業などで期待していたような結果が出なかったとき、自信を失ってしまうことも、心の不調に結び付く原因になります。
■ 自分自身をいたわるための対策
六月病における最も重要なポイントは、「無理をしないこと」「自分にやさしくすること」です。以下のような方法で、心身を整えるサポートができます。
1. 生活リズムを整える
つい夜更かしをしてしまったり、食事を抜いたりしていませんか? 生活リズムの乱れは、自律神経のバランスを崩す原因にもなります。就寝時間と起床時間を一定に保ち、朝は太陽の光を浴びることで、体内時計を整えましょう。
2. 軽い運動を習慣にする
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、ストレス発散や気分のリフレッシュに効果的です。また、運動によって脳内のセロトニンが増えることで、気分が前向きになりやすくなります。
3. 誰かに話す
ひとりで抱え込まず、家族や友人、職場の同僚など、信頼できる人に話してみましょう。「自分はこう感じている」と口に出すだけでも、ずいぶんと気持ちが軽くなることがあります。必要であれば、専門機関やカウンセリングサービスの利用も検討してください。
4. 完璧を目指さない
「ちゃんとしなければ」と思うあまり、自分に厳しくなっていませんか? この時期にはむしろ、「できなくて当然」と少し肩の力を抜いて、自分を責めないことが大切です。完璧を求めると、かえって自分を追い込んでしまい、状況を悪化させかねません。
■ 周囲の人の気づきも大切
六月病は本人が自覚しづらいこともあります。しかし、近くにいる家族や友人、同僚が「最近元気がないな」と感じたら、気軽に声をかけてあげましょう。「大丈夫?」という一言が、相手にとって大きな救いになることもあります。
また、無理に元気づけたり、アドバイスをしようとせず、まずは話を聴いてあげる姿勢が何より大切です。相手の気持ちを否定しないよう心がけましょう。
■ 無理せず、自分を守ることを優先に
私たちは日々、目の前の仕事や家事、付き合いに追われがちです。しかし、何より大切なのは、あなた自身が健やかでいることです。忙しさから心の疲れを見過ごしてしまうこともありますが、「ちょっと疲れたな」「何となく気が重いな」と感じたら、それはあなたの心が発するSOSかもしれません。
6月という時期は、1年の折り返し地点でもあり、立ち止まって自分自身を振り返る良い機会でもあります。無理をせず、「休む」という選択肢を持つことも、前に進むために欠かせない大切な一歩です。
もし、「六月病かもしれない……」と感じたなら、それは弱さではなく、心が健やかでいようとする大事なサインです。自身を慈しみ、肌に触れる風や雨の音、日々の小さな幸せに目を向けながら、少しずつ自分のペースで歩いていきましょう。