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家庭訪問は本当に必要?変わりゆく時代に問われる“つながり”のかたち

新時代の家庭訪問を考える 〜 小中「家庭訪問」いる?いらない?

新学期が始まり、全国各地の学校では教員と保護者のコミュニケーションの場である「家庭訪問」の時期を迎えています。しかし、最近では「家庭訪問は必要なのか?」という声が徐々に増えてきており、教育現場や保護者の間で賛否両論が巻き起こっています。

そこで今回は、「家庭訪問いる?いらない?」という視点から、家庭訪問の意義や現在の課題、そして今後のあり方について、多くの方が共感できる形で考えてみたいと思います。

家庭訪問とは何か?

そもそも家庭訪問とは、担任の教員が生徒の自宅を訪れ、保護者と直接対話することで家庭環境を理解し、より適切な対応や支援を行うことを目的とした活動です。多くの学校では年に1回、4月から5月頃に実施されることが一般的で、訪問は10分から15分程度におさめられることが多いようです。

かつては、「家庭環境を見ること」が大きな意義として位置づけられていましたが、近年は教員の働き方改革や多様な家庭状況への配慮から、必要性を改めて問う動きが出てきています。

家庭訪問が必要だと感じる理由

家庭訪問を支持する声には、いくつかの大切な理由があります。

1. 子どもの生活環境を知る機会になる

一人ひとりの子どもたちにはそれぞれ異なる生活環境があり、学校では把握しにくい部分も多くあります。実際に家庭を訪れることで、たとえば「落ち着ける環境があるか」「家での学習環境はどうか」「家族との関係性はどうか」など、日常の学校生活では見えてこない面が垣間見えることもあります。

2. 教員と保護者が信頼関係を築くための一歩

学校での懇談会や保護者会とは異なり、家庭訪問はよりプライベートな場での対話が可能です。短時間ながらも、保護者と教師が顔を合わせ、お互いを知ることは今後のやり取りにおいて大きな安心感につながります。

3. 子どもへの安心感や特別感

「先生が自分の家に来てくれた」という体験が、子どもにとっては特別な記憶となることもあります。また、それが自己肯定感や学校への安心感につながるという点を評価する声もあります。

家庭訪問に否定的な意見も多数

一方で、「家庭訪問はいらない」とする意見にも納得できる点が多くあります。

1. 教員の多忙化

現在、多くの教員がすでに長時間労働を強いられている状況にあります。教科指導、部活動、学校行事の準備、保護者対応など、日常業務で手いっぱいな中、さらに家庭訪問の時間を捻出するのは大きな負担です。

中には、半日かけて何件も移動して訪問をしなければならず、精神的・体力的にも厳しいという声もあります。

2. 保護者にも負担がかかる

家庭訪問の日には「家を掃除しなければ」「何を着て応対すれば良いのだろう」といった、少なからぬプレッシャーを感じる保護者も多くいます。特に共働き世帯では、平日に時間を空けることが難しく、「訪問日が負担」だとする意見も少なくありません。

3. 意味のある対話がしにくい

いざ訪問しても、限られた時間の中で本質的な話ができないこともあります。むしろ学校という場でじっくり時間を設けた個人懇談の方が、落ち着いて話ができると感じる保護者も多くいます。

ネット上では「電話やオンラインで十分ではないか」という声も多く見られ、特にコロナ禍以降は非対面のコミュニケーションの利便性が再評価されてきました。

柔軟な対応が求められる現代の家庭訪問

こうした意見を踏まえ、最近では家庭訪問の形が少しずつ変化しています。

一例として、「玄関先での簡単な顔合わせ」や「学校の敷地内での面談」「オンラインでの家庭訪問」など、家庭訪問の目的は維持しつつも、無理のない形で実施する学校も増えてきています。

また、希望制を導入することで、必要なご家庭のみに実施するという方式も注目されています。これにより、教員・保護者双方にとって、無理なく意義のある対話の機会を確保できるのではないかと考えられます。

保護者・教師ともに必要な「対話の場」

家庭訪問ではなくとも、子どもを共に育てるうえで重要なのは、保護者と教師との「対話の場」です。「学校任せ」「家庭任せ」ではなく、双方が歩み寄り、お互いの立場や考え方を理解することが大切です。

そのためには家庭訪問か否かに関わらず、定期的な面談や電話連絡、日々の連絡帳など、様々な方法を駆使して「信頼関係を築くこと」が何よりの目的といえるでしょう。

今後の社会構造の変化や働き方の多様化を考えれば、従来通りすべての家庭を訪問する手法は変化せざるを得ないかもしれません。しかし、「信頼を築くための方法は一つではない」という発想で、柔軟に対応していくことが求められています。

おわりに:現代にふさわしい家庭訪問の在り方を

「家庭訪問いる?いらない?」という問いに、明確な正解はありません。家庭ごとの事情も様々であり、地域によっても文化や考え方が異なります。

だからこそ、私たちが意識しておきたいのは、「何のために家庭訪問を行うのか」という目的を再確認すること。そして、その目的を叶えるために本当に必要な方法とは何かを、立場を超えて一緒に考えていくことです。

教師にとっても、保護者にとっても、そして何よりも子どもにとって有意義な関係性を築くための一手段として、家庭訪問の未来を考え直す良い機会と捉えてみてはいかがでしょうか。

時代が変わっても、人と人とのつながりの大切さは変わりません。教育現場と保護者が手を取り合い、それぞれの立場に立った柔軟なあり方を模索しながら、子どもたちのよりよい成長を支えていきたいものです。