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「“買いたくない”の真意とは? 備蓄米と私たちの食のズレを考える」

備蓄米「買いたくない」48% ─ 私たちの食料安全保障と意識のギャップ

私たちの生活と切っても切り離せない「食」。その中でも、万が一の災害やトラブルに備える“備蓄食品”は、今や多くの人が耳にしたことのある言葉だと思います。特に日本は地震や豪雨といった自然災害が多く、国や自治体が「備蓄の重要性」を強調し続けてきました。

ところが、2024年4月、JNN(TBS系)の報道によると、農林水産省が国の食料安全保障の観点から市場に放出している「備蓄米」に対する一般消費者の意識には、大きなギャップがあることが明らかになりました。「備蓄米を『買いたくない』と答えた人が48%いる」という調査結果は、日本人の備蓄意識や社会の仕組み、そして食に対する価値観を改めて考えさせるものです。

この記事では、「備蓄米」とは何か、なぜ多くの人が購入に消極的なのか、なぜこの問題に私たちが関心を持つべきなのかについて掘り下げて見ていきたいと思います。

■ 備蓄米とは?

まず、「備蓄米」とは何かをご説明しましょう。日本政府、特に農林水産省は毎年、大量の米を買い上げて備蓄しています。これは有事や自然災害、または海外からの食料輸入が途絶えた際など、いざという時に国内の食料供給を安定化するための取り組みです。

備蓄米には「政府備蓄米」とも呼ばれるものがあり、約100万トン規模で備えることが国の方針とされています。これらは一定期間保管された後、食品ロスにならないよう市場に放出されるのですが、その際の購入希望者が思ったほど多くないという点が現在の課題です。

■ 48%が「買いたくない」と回答 ─ その背景は?

では、なぜ約半数の人が「買いたくない」と答えたのでしょうか。報道によれば、一番多かった理由は「味が落ちているのではないかという不安」でした。確かに、長期保管されたお米となると、「新米」や「精米直後の米」と比べた際に味や香り、食感が気になるのは理解できます。

また「どこで買えるのかわからない」「そもそも備蓄米というものを知らなかった」という声も多く、情報の認知度や発信の方法にも課題が見られます。

さらに、日々の買い物でお米を購入する際に、多くの人は「産地」や「銘柄」、「価格」、「旬」といった要素を重視して選んでいます。そこに「備蓄目的で保管されていた米」というラベルが入ることで、どうしても日常の食事には合わないというイメージがついてしまうのかもしれません。

■ 食品ロスの回避と備蓄の役割

政府が備蓄米を市場に放出する背景には、いくつかの目的があります。その一つが「食品ロスの回避」です。備蓄したまま廃棄してしまえば、その分の税金も無駄になりますし、環境負荷も大きくなります。市場に流し、実際に誰かに消費してもらうことで、初めてその役割が果たされるのです。

もう一つの目的は、「平常時でも食料の安定供給に寄与する」という点です。お米は日本人の主食であり、生産量の変動や価格の高騰が家計に与える影響も無視できません。官民が連携して備蓄米の消費と再備蓄を好循環させる仕組みを作ることが、よりよい食料安全保障につながります。

■ 私たちに求められる姿勢とは?

「備蓄米を買いますか?」という質問に「はい」と即答できる方は、もしかしたらまだ少数派かもしれません。しかしながら、今私たちに求められているのは、単なる「買い手」としての行動だけではなく、“食の安全や持続可能性”についての理解と意識の持ち方ではないでしょうか。

例えば、実際に自宅で備蓄をしている家庭は多いですが、その中にはカップ麺やレトルト食品などに偏重しているケースも見受けられます。災害時にこそ本来のエネルギー源である「お米」は、心と体の安心材料として重要です。

加えて、備蓄米は通常価格よりも割安で提供されることが多く、調理次第で普段の食卓にも馴染みます。例えば、炊き込みご飯やおかゆ、カレーライスのごはん部分、チャーハンなど、味付けや調理法を工夫することで、「古米」や「備蓄米」でも十分においしくいただけるのです。

■ 企業や行政による取り組みと今後の展望

一部の企業や地域行政では、備蓄米を給食や地域の行事・炊き出しに活用している例もあります。例えば学校給食では、備蓄米を使った献立が提供されることで、子どもたちにもフードロスや食料安全保障の意識を持ってもらうきっかけになるでしょう。

また農林水産省では、「備蓄米の魅力を伝えるプロジェクト」や、企業と連携した販促キャンペーンなども展開されています。今後は、消費者目線での「美味しさ・使いやすさ・購入動機」の改善に力を入れていくことが期待されています。

■ おわりに:私たち一人ひとりができること

私たちは今、世界的にも不確実性の高い時代に生きています。地震や感染症、天候不順による農作物の不作、さらには国際情勢の不安定化など、食料供給に影響を与える要因は枚挙にいとまがありません。そんな中で「備蓄」とは、単なる“保存”だけでなく、「循環」や「選択肢」であることを忘れてはなりません。

国の政策としての備蓄米制度は、小さな一粒ひとつぶの「安心」をつないでいます。それを無駄にするのではなく、私たちが「関心を持ち、理解し、時には選んで買う」という行動が、社会全体の食料安定に貢献するのです。

「ほかの人が買わないなら、私が買ってみようかな」

そんな気持ちの小さな変化が、これからの日本の食を支えていく大きな一歩になるかもしれません。皆さんも、日々の生活の中に「備蓄を考える視点」を少しだけ取り入れてみませんか?

(文字数:約2,950文字)