「頭の中に霧」――男性の更年期障害と向き合うために
「何となく体がだるい」「集中力が続かない」「仕事のパフォーマンスが落ちたように感じる」…40代後半から50代の男性に増えてくるこのような不調に、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。これらの症状は、もしかすると「男性の更年期障害」が原因かもしれません。
「更年期障害」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは女性の悩み。しかし、近年注目されているのが「男性の更年期障害(LOH症候群)」です。「加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism)」とも呼ばれ、主に加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下を原因として、身体的・精神的なさまざまな不調が現れます。
今回YAHOO!ニュースで取り上げられた「『頭の中に霧』男性の更年期障害」という記事では、実際にこの症状に悩む男性の声や、医師による解説を通じて、あまり知られていない男性の更年期障害の実態に迫っています。本記事では、その内容をもとに、男性の更年期障害とはどのようなものなのか、どんな症状があるのか、どのように対処すべきかを解説していきます。
「霧がかかったような頭」——男性が感じる不調の正体
記事に登場する50代の男性(仮名:山田さん)は、仕事中に集中力を維持できず、「頭に霧がかかったような状態」が続いていたと言います。当初は過労やストレスが原因だと思っていたそうですが、検査の結果、医師から告げられたのは「テストステロンの不足」、つまり男性更年期障害でした。
テストステロンは、男性の活力や性欲、筋肉量、意欲、集中力などに関与するホルモンです。20〜30代をピークに徐々に低下していくのが自然な流れではありますが、生活習慣やストレスなどの影響で急激に減少してしまう場合、心身にさまざまな不調が現れます。
「仕事で結果が出なくなった」「家族と会話をしても疲れてしまう」「漠然とした不安感に襲われる」など、生きづらさを抱える男性にとって、その正体がホルモンにあると分かるまでには時間がかかるのが現実です。
女性の更年期に比べて認知度が低く、診断にも難しさ
なぜ男性の更年期障害はあまり知られていないのでしょうか。その理由の一つは、女性の更年期障害が閉経という明確な節目に起こるのに対し、男性更年期は発症のタイミングや症状に個人差が大きく、気付かれにくいという点が挙げられます。
また、「年齢のせいだから仕方がない」「疲れやストレスだから我慢しよう」といった、我慢強さや忍耐力を美徳とする傾向が、男性自身が症状を見逃す要因にもなっています。
さらに、診療科の選択にも迷いが生じます。更年期障害とわかっていれば治療につながるのですが、症状が多岐にわたるため、「内科か、精神科か、泌尿器科か」と自身で判断ができず、医療機関への受診が遅れることもあります。
男性更年期障害の主な症状
男性更年期障害の症状は、身体的なものと精神的なもの、そして性に関するものと大きく3つに分けられます。
■身体的症状
・慢性的な疲労感
・発汗(特に寝汗や突然の発汗)
・筋力の低下
・肥満や内臓脂肪の増加
・動悸、息切れ
■精神的症状
・うつっぽさや不安感
・集中力の低下
・意欲の減退
・イライラしやすい
・眠りが浅い、夜中に目が覚める
■性に関する症状
・性欲の減退
・勃起力の低下
これらの多くに共通するのが、「年齢のせい」と片付けてしまいやすい微細な変化であるということ。しかし、その裏にはテストステロンの低下が隠れているかもしれません。
どうやって診断し、どのように改善できるか?
男性更年期障害は、問診や血液検査でテストステロン値を調べることで比較的正確に診断できます。特に「フリーテストステロン」という指標が重要とされ、これが一定の基準を下回っていると診断されるケースが多いとされています。
治療法としては、まず生活習慣の改善が大切です。適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠が推奨されます。また、ストレスの軽減もテストステロンの維持には重要なポイントです。
必要に応じてホルモン補充療法が行われることもあります。これは専門医による慎重な判断のもとで、注射や塗り薬といった方法でテストステロンを補充するものです。
周囲の理解とサポートも不可欠
男性にとって「体の不調や心の揺らぎ」を話すのは、ハードルが高いと感じることもあるかもしれません。しかし、自分でも気付かないうちに抑うつ状態につながり、人間関係や仕事面に影響を及ぼすこともあります。
家族や職場の同僚が「最近ちょっと元気がないな」と感じたら、まずは話を聞いてみてください。男性更年期障害は、理解と支援により改善の道が開ける病気です。ひとりで悩まず、適切なサポートを受けることが大切です。
また、仕事や家族との関係を損なわないよう、早めに医療機関で相談することが推奨されます。男性更年期を診療している医師も増えてきており、近年では「男性更年期外来」や「泌尿器科」での相談が可能です。
まとめ:人生100年時代の「健康リスタート」
人生100年時代と言われる現代、50代や60代は「まだこれからの人生をつくる中盤戦」とも言えます。その中で「体力が落ちた」「気力が出ない」「いつも疲れている」…そんな違和感があるなら、それは単なる加齢とは限りません。
男性の更年期障害は、適切な診断と対処によって十分に改善が見込める症状です。もし自分自身が該当するかもしれないと思ったら、一度チェックリスト付きのセルフチェックをしてみるのも良いでしょう。また、大切なパートナーや身近な男性にそういった兆候が見られる場合も、さりげない気遣いの一言が新たな気づきと支援のきっかけになることもあります。
「頭の中の霧」は、決して永遠に続くものではありません。原因がわかれば、取り戻せる活力もあるのです。男性も女性と同様、自身の身体と向き合い、健やかな後半の人生を送るために、正しい知識と選択を持ちましょう。