2024年6月、元農林水産大臣である野村哲郎氏が、コメ流通政策に関する発言を行い注目を集めました。特に、小泉進次郎元環境大臣が主導した政策に対して苦言を呈したことで、農業政策、とくに日本のコメ政策のあり方について改めて関心が集まっています。
この記事では、野村氏の発言の背景にある日本のコメ政策の歴史や課題、そして今後求められる方向性について、できるだけ多くの読者の方に理解しやすい形で解説します。
■ コメ政策を巡る野村哲郎元農相の発言とは?
野村元農相は、2024年6月、国会内での取材において、日本のコメ政策のあり方に関連して小泉進次郎氏の過去の政策判断に言及しました。具体的には、小泉氏が農林水産省の大臣秘書官だった2002年ごろ、政府による備蓄米や流通米のあり方に介入し、これが現在の供給過多や価格低迷につながったとする内容でした。
野村氏は「当時、小泉進次郎氏が若くして影響力を持っていたことは知っているが、彼の関与した政策が今のコメの価格低迷にも影響している可能性がある」と語りました。
これは、特定の個人を責めるものというよりも、20年以上にわたるコメ流通政策の結果として、今の複雑な問題が生まれてしまったという認識の現れであると言えるでしょう。
■ 日本のコメ政策の変遷とその背景
日本のコメ政策は戦後から一貫して国民の食料確保と農業の安定を目的に強く保護されてきました。戦後しばらくは配給制に近い形で供給が管理され、1970年代までは政府が米の流通と価格を厳しくコントロールしていました。
しかし、1995年には食糧法が施行され、米の流通自由化が段階的に進められました。これにより、米の需要と供給は市場の動きにより左右されることとなり、農家にとっては自由度と同時にリスクも増したのです。
また、食生活の多様化により国民1人あたりの米の消費量は年々減少しており、これが需要に対して供給が多い「米余り」の構図を生み出しました。
■ 現在の課題:価格低迷と作り手の減少
野村氏が言及した「米の価格低迷」は、まさにこの米余りの結果です。需要が減る一方で、供給量を減らす作付け調整が十分に機能しなければ、価格は自然と下がります。農家にとっては採算が取れなくなり、コメ作りをやめる決断をする人も増えてきました。
実際、コメ農家の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっており、このままでは日本の稲作文化そのものが衰退する可能性も指摘されています。
■ コメ政策は誰のためか?求められるバランス
野村氏の発言は、過去の政策への反省とともに、これからの方向性を示唆するものでもあります。コメ政策は単に農業者だけのためのものではなく、消費者も含めた国民全体に影響を与えるものです。
生産者には経済的に持続可能な仕組みが必要である一方で、消費者には安定供給と適正価格での提供が求められます。このバランスをどう保つのかが、現在の政策に問われている重要な点です。
■ 今後必要とされる政策とは?
現在のように需要を上回る供給が続くと、価格が下落し、これが米作りへの意欲や農業の継続性を奪います。したがって、政策としては以下のような複数のアプローチが必要とされています。
1. 作付け調整の強化
無制限に供給するのではなく、需要とのバランスを見て生産量をコントロールする仕組みが必要です。過去には減反政策と呼ばれる制度がありましたが、これを現代的な形で見直すことも検討されているようです。
2. 需要創出・新しい消費の提案
学校給食や外食産業、海外輸出など、新たな需要の掘り起こしも重要です。特に日本ブランドのコメは、アジア諸国で人気があるため、輸出拡大が一つの突破口となる可能性があります。
3. 若手農業者への支援
高齢化が進む農業界では、次の世代にバトンを渡すための支援が急務です。たとえば、農地の集約やスマート農業技術の導入支援、資金面でのバックアップなどがあります。
4. 流通の効率化と価格の安定化
流通経路の見直しや、中間業者を挟まない新しい販売モデル(オンライン直販など)の可能性も模索されています。これにより、生産者の手取りを増やし、かつ消費者にも適正な価格で届けることが可能になるでしょう。
■ 誰もが関わる「食」の未来を考える
私たちの日々の食卓になくてはならないお米。野村氏の発言は、過去の政策への一つの視点でありながら、今後のコメ政策の方向性を再考する良い機会でもあります。
農政は専門的で難しいと感じる方も多いと思いますが、食は誰にとっても身近なテーマです。今、日本の農業が抱える課題の本質を見つめ直すことで、より持続可能で安心な食の未来を築くことができるのではないでしょうか。
野村氏の苦言が提起したテーマは、一部の政治家や専門家だけで解決すべき話ではありません。消費者である私たち一人ひとりが「お米をどう選び、どう食べるか」「農業や農家をどう支えるか」という観点からも考えていくべき時代に突入しています。
■ まとめ
今回の野村哲郎元農相の発言は、一見すると個人への批判のようにも映るかもしれませんが、実のところは長年にわたる政策の結果と、その再検証への呼びかけです。
お米という日本の文化と生活に密接に関わる作物は、気候変動や人口動態の変化、そしてグローバルな市場環境の中で、大きな転換期を迎えています。今後必要なのは、「作る人・売る人・食べる人」すべてが一体となって支えるコメ政策です。
私たちの食卓にこれからも美味しいお米が並び続けるために、これを機に一緒に「お米のある未来」について考えてみませんか?