2024年4月、福岡県久留米市で発生した痛ましい事故が社会に大きな衝撃を与えました。ニュースによると、自宅の風呂場で幼い兄弟が溺れ、そのうちの一人が亡くなるという悲劇が起こりました。ご家族の無念、そしてこのような事故を防ぐために、私たち一人ひとりができる対策について考えを深める必要があります。
この記事では、事故の概要と背景に加え、風呂場での子どもに関する安全管理の重要性、また私たちの生活の中で見落とされがちな危険について共に考えていきたいと思います。
幼い兄弟の悲劇:事故の概要
2024年4月3日午後7時20分ごろ、福岡県久留米市の自宅で、3歳と1歳の兄弟が浴槽内で溺れているのが見つかりました。母親が目を離した際に何らかの理由で兄弟が風呂に入り、しばらくしてから異変に気づいて119番通報を行ったと報じられています。救急隊によって病院に搬送されましたが、3歳の兄は搬送先の病院で死亡が確認されたとのことです。1歳の弟についても命に関わる状態で治療が続けられていると報道されています。
この事件で何よりも胸が痛むのは、子を失ったご家族の心情です。兄弟を同時に失いかねないという状況は、想像を絶する苦しみです。同じように子育てをする方々であれば、なおさら心を打たれる事故でしょう。
なぜ風呂場は危険なのか?
家庭の中にあるはずの「安全な場所」である風呂場が、なぜこのような非常に危険な場所になり得るのでしょうか。答えは「水による事故リスクの見落とし」にあります。よく知られているように、水深わずか数センチでも子どもにとっては命の危険につながることがあります。大人の目線では「お湯は浅いから大丈夫だろう」と思ってしまいがちですが、小さな子どもの身体はまだ十分に発達しておらず、自ら起き上がることも困難です。また、滑りやすく、パニックに陥ると思うように動けなくなることも多くあります。
中でも、1歳〜3歳の子どもは自分で歩き始める時期であり、興味や好奇心によって思わぬ行動に出ることもあります。風呂場のドアが閉まっていないことに気づき、自ら入ってしまうというケースも珍しくありません。
ほんの数分が命取りに
今回の事故でも語られているように、母親が「少し目を離した隙」にこの悲劇が起きています。実際に、風呂やプール等での溺水事故で多いのは、ほんの3〜5分という短時間の間に起こるといわれており、「ちょっと目を離したその間に」大きな悲劇が起きてしまうのです。
このことは決して保護者の過失を責めるために言っているのではありません。誰でも子育てをする中で、料理中だったり、上の子の世話をしていたり、あるいは電話が鳴ったりと、他の状況に対応しなければならないことがあるからです。完璧な監視というのは現実的には非常に困難な課題です。ただ、それでも「何かの拍子に起きてしまうかもしれない」という前提を持つことで、私たちは備えをすることができます。
では、どうすればこうした事故を未然に防げるのか、具体的な対策について以下にまとめてみました。
家庭でできる風呂場の安全対策
1. 風呂場のドアには必ずロックをかける
子どもが一人で風呂場に入れないように、ドアにはチャイルドロックや鍵を設置することが望まれます。最新の設備では、浴室の取っ手自体に子どもが開けにくい設計のものもあります。
2. 入浴後はすぐに浴槽の水を抜く
お風呂に水やお湯を溜めたままにしておくことは大変リスクが高いため、入浴が終わったら速やかに排水する習慣を持つことが重要です。また、追い焚き機能がある場合でも、溜め置きをしないことで事故のリスクは大きく減ります。
3. 家中の見えるところに「注意喚起シート」を設置
子どもの行動範囲が広がるのに連動して、事故のリスクも増大します。「風呂場要注意!水が原因で命の危険も」のようなポスターやシールを冷蔵庫や風呂場の外など、目につきやすいところに貼るのも効果的です。
4. 入浴時は必ず大人が同伴し、離れない
どれだけ短い時間でも、子どもだけでお風呂に入れることは避けましょう。もし途中でどうしても離れる必要がある場合、一緒にお風呂からあがるか、必ず他の大人に見てもらいましょう。
5. 見守りカメラの活用
もし可能であれば、風呂場付近に簡易見守りカメラを設置する、またはセンサーで浴室への侵入を知らせる防犯機器を導入するのも一つの手段です。
事故を「対岸の火事」にしない
このような事故のニュースを目にするたびに、多くの方が「かわいそう」「大変だったね」と感じるかもしれません。けれども一方で、「でもうちでは大丈夫」と、どこか他人事にしてしまいがちです。実際には、こうした事故はどの家庭にも起こりうること、そしてそのリスクは日常の中に潜んでいるのです。そのため、大切なのは「自分ごと」として受け止め、身の回りを一つひとつ見直していくことです。
子育ては、毎日の連続です。時には疲れて注意が行き届かないこともあるでしょう。でも、だからこそ私たちは「仕組み」と「習慣」でリスクを減らす努力をしていくことが必要です。
最後に:ご家族への思いと、私たちにできること
今回の事故で亡くなられたお子様、そしてそのご家族に心より哀悼の意を表します。このような出来事を繰り返さないよう、私たち一人一人が、家庭内での安全対策を改めて見つめ直し、大切な命と向き合っていくことが、何よりの追悼になると信じています。
いつも一緒にいるはずの家族との日常。それは当たり前ではなく、奇跡の連続であることを忘れずに。何よりも尊い命を守るための基本的な一歩を、今日から始めていきましょう。