大阪府守口市に、まるで “カジノ” を思わせるような異色の介護施設が登場しました。その名も「プレジール守口」。これまでの介護施設の常識を覆すような空間づくりとサービス内容が、いま大きな注目を集めています。単なる話題づくりにとどまらず、高齢者の「生きがい」と「楽しみ」を追求したこの施設の取り組みは、介護のあるべき姿や可能性について、私たちに多くの気づきを与えてくれます。
今回は、その型破りな介護施設「プレジール守口」の魅力に迫りつつ、高齢化が進む現代社会における介護の新たな在り方について考えてみたいと思います。
カジノのような非日常空間
「プレジール守口」の最大の特徴は、なんといってもその空間設計です。施設内に一歩足を踏み入れると、まるでラスベガスのカジノを連想させるような賑やかな装飾と照明が広がります。天井にはシャンデリア、壁一面には色とりどりのLEDライト、そしてブラックジャックやスロットマシンを模したゲーム機が並んでいます。まさに、“非日常” を体験できる空間です。
こうした非日常的な演出は、高齢者が日々の生活に刺激を感じ、前向きな気持ちで過ごせるようにという思いから生まれました。介護と聞くと、静かで落ち着いた環境、淡い色調の内装を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、「楽しさ」を重視するこの施設は、あえてその逆を目指したのです。
「人生を楽しむ」介護施設の新しいカタチ
この施設を運営するのは、住宅型有料老人ホームや訪問介護などを手がける「プレジールグループ」。代表の中林織枝さんは、「介護施設だからといって、暗く、無機質で静かな場所でなければならないという固定観念にとらわれる必要はない」と語っています。
施設名の「プレジール」は、フランス語で「楽しみ」という意味。高齢者にも人生を楽しんでほしい、という理念が施設のすみずみまで行き渡っています。
例えば、カジノ風の空間には、ブラックジャックやルーレットなどを模したレクリエーションゲームが用意されており、利用者同士の交流が自然と生まれます。また、飲食スペースもまるでレストランのような雰囲気で、メニューにも工夫が凝らされており、季節の食材を取り入れた料理が提供されます。
見守りと安全性の確保も万全
もちろん、施設の目を引く外観や内装だけが評価されているわけではありません。遊び心あふれる空間でありながらも、介護施設としての基本性能——つまり、安全性や見守り体制は、しっかりと確保されています。
入居者一人ひとりに合ったサービス提供はもちろん、緊急時に対応できるスタッフ体制や最新の見守りセンサー、夜間でも安心できる防災設備も整備済みです。また、定期的な健康チェックや認知症ケアなど、医療や福祉の観点からも十分なバックアップ体制があるため、家族も安心して入居を任せることができます。
レクリエーションでやる気と笑顔を
介護施設での生活において重要なのが、“やる気”を引き出す工夫です。加齢とともに体力が衰え、活動量が減る中で、いかに利用者が前向きな気持ちで毎日を過ごせるかが、介護の質を大きく左右します。
プレジール守口では、日替わりで多様なレクリエーションが提供されており、音楽療法、絵画教室、園芸、手芸など、入居者の興味に合わせて参加できます。中でも人気を博しているのが「カジノレク」。昔、旅行先でカジノを楽しんだという経験を話しながら、懐かしさとともに目を輝かせる入居者の姿が印象的です。
“昔を思い出す”ことは、記憶力や表現力を刺激し、認知症予防にも効果があるとされています。ただゲームをするだけでなく、思い出を共有し、仲間と笑い合うことで、高齢者の心に潤いを与えてくれるのです。
家族や地域とつながる施設
また、「プレジール守口」では、入居者の家族や地域住民とのつながりも重視しています。施設内で行われるイベントには家族の参加も歓迎されており、夏祭りや誕生日会、文化祭など、地域に開かれた介護施設として、多世代交流の場にもなっています。
これにより、入居者が「社会とつながっている」「まだまだ役割がある」と感じられることが、心身の健康維持に役立っているのです。
変化する介護の価値観
超高齢化社会に突入した日本では、今後ますます介護施設の役割が重要になってきます。ただし、そこに求められるのは「安全で清潔な施設」というだけではありません。「自分らしい生活を続けたい」「第二の人生を楽しみたい」と望んでいる高齢者は少なくありません。
「プレジール守口」のような施設が率先して新たな取り組みを行うことで、介護施設に対するイメージが変わりつつあります。従来の画一的な介護から脱却し、個々の価値観や生活スタイルを尊重する――そんな時代に突入しているのです。
おわりに
大阪・守口に誕生したカジノ風介護施設「プレジール守口」は、単なる奇抜なアイデアではなく、利用者の生き方そのものに寄り添う思いやりの象徴だと感じました。高齢になっても笑顔で、充実した毎日を送ることは、誰もが願うことです。
介護という言葉に縛られず、人と人とのつながりと楽しさを大切にするこの施設の取り組みは、今後の介護のかたちに大きなヒントを与えてくれるのではないでしょうか。これからますます多様化する高齢者のニーズに応えるためにも、「楽しさ」や「生きがい」を提供する介護の在り方がさらに広がっていくことを期待しています。