音楽に懸ける情熱は枯れない──桑田佳祐「まだまだ辞められません」
日本の音楽界を代表するアーティストとして長年にわたり第一線で活躍を続けてきた桑田佳祐さん。彼の名を聞けば、誰しもが一度は耳にしたことのある楽曲を思い浮かべることでしょう。1980年代に始まり、日本の音楽シーンにおいてひときわ輝きを放ってきた「サザンオールスターズ」のフロントマンとして、またソロアーティストとしても、数々の名曲を世に送り出してきました。
そんな桑田佳祐さんが、このたび行われたインタビューで発した「まだまだ辞められません」という言葉には、多くの人々の共感と感動が詰まっていました。人生の大半を音楽とともに歩んできた彼の目には、今もなお音楽に対する尽きることのない情熱が宿っているのです。
60代後半を迎えてなお現役として活動を続けることは、並々ならぬ努力が必要ですが、桑田さんにとって音楽は“やってみたいこと”ではなく“やらずにはいられないこと”。その言葉が、彼が音楽に捧げる情熱と使命感を静かに物語っているようです。
音楽人生45年の足跡と現在地
1978年に「サザンオールスターズ」としてシングル『勝手にシンドバッド』でデビューして以来、幾度となくヒットチャートを賑わせてきた桑田さん。ソロとしても『白い恋人達』や『波乗りジョニー』といった多くの名曲を生み出し、世代を超えて親しまれてきました。
また、近年では東日本大震災の被災地支援や、新型コロナウイルスの感染拡大時に医療従事者を応援する目的で開催された無観客配信ライブなど、音楽を通じた社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。このように、桑田佳祐という存在は、単なる一アーティストにとどまらず、音楽を通して人々に希望と癒しを届ける“伝道者”として敬愛されています。
年齢を重ねてもなお新たな挑戦と創造をやめない彼の姿勢は、同世代のみならず若い音楽ファンにとっても大きな刺激と励ましとなっています。
「やめるつもりだったが…」楽曲の神が降りる瞬間
今回のインタビューで特に多くの人々の心に響いたのは、「やめようと思ったことは何度もあるけれど、そのたびに音楽の神様が降りてきて曲が浮かぶんです」という桑田さんの言葉でした。
ベテランの音楽家として、そのキャリアは誰もが認めるものですが、常に自身の限界や新たな可能性と向き合い続けている彼の姿勢は、決して慢心を感じさせるものではありません。むしろ、常に挑戦し続けるその姿が、ファンの心を惹きつけてやまないのです。
実際、近年の新曲を聴くたびに、「これが還暦を超えた人の書く曲なのか」と驚かされる人も多いでしょう。ポップスにジャズやロック、歌謡曲といった要素を自在に取り入れながら、時代に即した内容とメッセージを盛り込むそのスタイルは、まさに唯一無二です。
「辞める・続ける」ではなく「生きてる限り表現したい」
桑田佳祐さんの言う「まだまだ辞められない」という言葉は、単に音楽を続けるという意思表明ではないように思えます。それは、人生そのものが“表現し続けること”であり、活動を通して誰かが救われたり元気をもらえたりする限り、音楽とともに生きていたいという強い願いにも聞こえます。
彼はきっと、「続ける・辞める」というデジタルな選択肢の中で生きているのではなく、“今この瞬間、自分にできることをやる”というアナログな価値観で地道に歩み続けているのではないでしょうか。
そしてそのひとつひとつの選択が、気づけば人の心に残る名曲となり、長年にわたって人々の記憶に刻まれているのです。
世代を問わず心に届く桑田佳祐の音楽
桑田佳祐さんの歌詞やメロディは、一見するとシンプルですが、その中には日本語の美しさや人間の感情への深い理解が織り込まれています。そして、社会のあらゆる側面を柔らかく包みこむように描き出すその歌詞は、時にユーモラスでありながらも、聴く人の心にそっと寄り添います。
たとえば家族や恋人、友人との別れや再会、年月の流れの中で揺れる心情など、誰もが経験するであろうシーンを音楽で鮮やかに表現し、多くのリスナーに“自分にも思い当たる”“あのときの気持ちがよみがえった”という感覚をもたらしてくれるのです。
特に今のような不確実な時代において、桑田佳祐さんの音楽が持つ力はより一層強く感じられます。元気が出ないときに彼の歌を聴いて「また明日も頑張ろう」と思えた人は、きっと少なくないはずです。
音楽を愛し、人生を愛し、人を愛する表現者として
桑田佳祐さんの活動から伝わってくるのは、音楽に対する愛情、人生への感謝、そして人々への思いやりです。それは、小手先のテクニックや派手な演出では決して伝えられない、長年真摯に音楽と向き合ってきたからこそ宿る“本物の表現”だと言えるでしょう。
これからも年齢を重ねながら、変わらぬ情熱と誠実さをもって音楽を届けてくれるであろう桑田佳祐さん。その姿に元気づけられる人は、これからもずっと増え続けていくのではないでしょうか。
「まだまだ辞められません」。
このひと言に込められた思いは、音楽を通して今日を生きる多くの人々の心に、確かに届いています。そして、それは同じ時代を生きる私たちにとっての希望であり、音楽の力を信じるすべての人々への贈り物でもあるのです。
