近年、物価や生活費の高騰が続く中で、特にひとり親家庭の経済的な困窮が浮き彫りになっています。2024年3月に実施された全国調査により、ひとり親家庭の約88%が「十分な量の米を買えていない」と感じている現状が明らかになりました。この衝撃的な結果は、私たちの身近にある「食」の問題、そしてそれが引き起こす生活困難が深刻化していることを示しています。
本記事では、「ひとり親米買えぬ経験88% 調査」の結果をもとに、ひとり親家庭が直面している現実、背景にある社会的要因、そして私たち一人ひとりができる支援のあり方について考えていきたいと思います。
■ 米すら満足に買えない現実
今回の調査は、労働組合「日本労働弁護団」の協力の下で実施されたものです。回答者は全国の母子・父子家庭の保護者など約1,900人におよびました。その中で、88.3%が「経済的な事情により米を十分に購入できなかった経験がある」と回答しています。
「米」は日本の食卓において最も基本的な主食であり、生活の中心となる食材です。そんな米でさえ十分に手に入れられないという状況は、その家庭の経済状況が非常に困難なレベルにあることを示しています。調査では「白米を節約しておかゆにした」「子どもには十分食べさせ、自分はほとんど食べなかった」といった具体的な声も上がっており、親の自己犠牲的な努力だけでは乗り越えられない深刻な貧困が存在しているのです。
■ なぜ米も買えない状態に?
では、なぜひとり親家庭では「米すら買えない状態」にまで追い込まれてしまっているのでしょうか。その理由としては、以下のような複数の要因が考えられます。
1. 物価の高騰
ここ数年にわたり続いている食品・電気・ガスなどの生活必需品の価格上昇は、特に収入の限られた家庭に大きな打撃を与えています。米も例外ではなく、以前に比べて価格は上がっており、定収入の中からやりくりするのが難しくなっているのです。
2. 収入の低さと雇用の不安定性
ひとり親家庭は、二人分の世帯収入がないため、必然的に収入が限られます。さらに、非正規雇用やパートタイムで働く方が多く、収入の安定性にも欠けることから、生活が不安定になりがちです。
3. 公的支援の不十分さ
生活保護や児童扶養手当といった支援制度はあるものの、その給付額だけでは実際の生活費をまかなうのは難しいとされ、制度の柔軟性や実効性が課題となっています。特に地方では支援が行き届きにくいという現実もあります。
■ 子どもたちへの影響
米が買えないという状況は、単に食生活が苦しいというだけでなく、子どもたちの健全な成長や教育にも大きな影響を及ぼします。栄養が偏れば体調を崩しやすくなり、集中力や学力に影響が出る可能性もあります。
また、「家に帰れば親が空腹でも平気なふりをしている」といった様子を目にした子どもが、ストレスや不安を抱えることも少なくありません。家庭の経済状況が子どもの将来の選択肢を狭めてしまう可能性もあり、貧困の連鎖を生み出してしまうという深刻なリスクがあります。
■ 社会全体で支える必要性
こうした状況を一部の家庭の「自己責任」と捉えるのではなく、社会全体で支えていく必要があります。まずは制度面での支援拡充が急務です。たとえば、低所得世帯に対する食品の現物支給や、子どものための無料給食制度の拡充、さらには住居費補助など、多角的な支援が求められています。
また、民間レベルでも「子ども食堂」や「フードバンク」といった取り組みが広がっています。こうした地域の連携は、行政の支援が届ききれない部分を補完する重要な取り組みです。
■ 私たちにできることは?
私たち一人ひとりにもできることがあります。例えば、
・地域の子ども食堂を支援する
・フードドライブ(家庭で余った食品の寄付)に参加する
・寄付を通じて支援団体を応援する
・SNSで問題意識を発信する
といった行動は、小さく見えても確かな力になります。「自分には関係ない」ではなく、「自分のできる形で、少しでも助けられたら」と思える気持ちが、社会をより良い方向へ進めてくれる原動力になるでしょう。
■ 最後に
「米を買えない」という言葉は、多くの人にとってショックを与える現実です。しかし、これは他人事ではありません。すぐ隣に、そうした生活をしている家庭があるかもしれないのです。特に、未来を担う子どもたちが食の不安を感じながら育っているということは、日本社会全体にとって大きな課題です。
今こそ私たちは、「誰もが当たり前に食べられる社会」、「親が安心して子育てできる社会」の実現に向けて、声をあげ、行動を起こすべき時なのかもしれません。経済的な理由で、基本的な食生活すら十分に営めない—そんな社会は、決して持続可能とは言えないはずです。
一人でも多くの人がこの問題に関心を持ち、「支え合いの輪」に加わっていくこと。それが、子どもたちの未来を守り、もっと希望あふれる社会を築いていく第一歩となるのではないでしょうか。