近年、デジタル詐欺が急増する中で、新たな詐欺対策として注目を集めているのが「説得を拒否されても追尾 詐欺防ぐ」という新たな取り組みです。これは、詐欺被害を未然に防ぐために、消費者が詐欺師からの説得を一度拒んだとしても、それだけで対策を終わらせるのではなく、再びアプローチして詐欺の芽を摘み取ろうとする対策です。この記事では、この取り組みの背景や仕組み、実際の効果、そして私たちが日常生活でどのように活かせるかについて、詳しく紹介していきます。
高齢者を狙う詐欺の現状
まず、詐欺被害の現状について触れておきましょう。近年、特殊詐欺、いわゆるオレオレ詐欺や還付金詐欺などの被害は依然として多く、とりわけ高齢者がその標的になっています。たとえば、家族を装って電話をかけ「事故を起こした」「お金が必要だ」といった内容で現金を騙し取るケースや、役所や銀行職員を装って「保険料が返金される」と言ってATMへ誘導し、お金を振り込ませる手口などは後を絶ちません。
警察や自治体、金融機関はもちろん、家電メーカーや通信会社、さらには配送業者までもが協力し、啓発活動を行っていますが、それでも詐欺被害の根絶には至っていないのが現状です。
「一度断れば安心」は大きな誤解
こうした詐欺の多くは、加害者側からの巧妙な会話術と心理的誘導により成立します。特に高齢者の中には、面識のあるような口調で話しかけられると疑いを持たず、信頼してしまう人が少なくありません。
そこで注目されているのが、今回紹介する「説得を拒否されても追尾(フォローアップ)」する取り組みです。これは、被害者本人が初回の電話や接触で不審に思い、「結構です」「やめてください」と断った場合でも、その一言で詐欺を回避できたと楽観的に考えず、再度対象者と接触し、被害の可能性をさらに減らそうとする新たなアプローチです。
この取り組みの中核をなすのは、警察や地域の見守り隊だけでなく、地域住民の協力でもあります。隣人や親族が「もしかしたら…」と感じたときに、直接話しかけたり、第三者の目を入れて対応したりするなど、地域ぐるみで詐欺被害の防止に取り組む姿勢が求められています。
実際の取り組みと成果
たとえば、ある自治体では、地域包括支援センターと連携し、高齢者への定期的な訪問を強化しました。訪問時には、最近誰かから不審な電話が来たか、個人情報を教えてしまったことはないかなどをヒアリング。初回の対応で異常が見られなくても、一度でも「おかしいな」と思った場合は、日を改めて再び訪問するなど、継続的な見守りを実施しています。
警視庁によれば、このようなフォローアップ型の取り組みを行っている地域では、詐欺被害の抑制効果がはっきりと表れているとのことです。過去に詐欺未遂があった家族に対しても、その後に継続的なフォローがあったことで、最終的に詐欺被害を完全に防げた事例も報告されています。
この施策の優れている点は、「一度断ったから大丈夫」といった過信を排除し、「本当に大丈夫か?」を確認する二重・三重のチェック機能が備わっている点にあります。
家族や地域でできること
このような取り組みは、行政主導で行われることが多いですが、実際には私たち一人ひとりが積極的に関与することが大切です。たとえば、遠方に住む親や祖父母と定期的に連絡をとり、「最近変な電話がなかった?」と声をかけるだけでも、詐欺被害の防止につながります。
また、近隣住民とのコミュニケーションも大切です。日常的に顔を合わせる関係であれば、小さな変化にも気づきやすくなります。「普段と違って様子がおかしい」「知らない人を家に招き入れていた」などの兆候があれば、早期発見に繋がるかもしれません。
さらに、金融機関やコンビニの店員など、日常的に高齢者と接する機会の多い職種の方々にも、このような見守りの視点を持ってもらうことで、地域全体が一体となって詐欺を防ぐ体制が整っていきます。
詐欺対策は「その場」だけでは終わらない
「説得を拒否すること=断ったから安心」と思いがちですが、詐欺師は一筋縄ではいきません。一度失敗しても別の方法や人物を使って再度接触を試みたり、時間を置いて再び電話をかけてくることもあります。「この人は話が通じない」と判断されたあとでも、別のシナリオを用意しているのです。
だからこそ、今回注目されている「追尾型の対策」が必要になります。初回の拒否では終わらせず、その後の動向も見守り、必要に応じて再アプローチする。この粘り強い対応こそが、詐欺被害を未然に防ぐためには欠かせない視点です。
おわりに
詐欺はますます巧妙化しており、私たちが「これくらいは大丈夫」と思っている隙を狙ってきます。しかし、今回のように「一度断っても安心しない」姿勢を社会全体で共有し、被害者となりうる人々に対して継続的なサポートを行っていくことで、詐欺の根絶に大きく近づくはずです。
家族の見守り、地域の協力、そして行政との連携。小さな行動が詐欺を防ぐ大きな力になります。私たち一人ひとりがその一員としての自覚を持ち、詐欺に「備える社会」を一緒につくっていきましょう。