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天下一品 首都圏大量閉店の真相──消えた名物ラーメン店から読む外食業界のいま

2024年に入り、多くのラーメンファンの間で驚きとともに語られたニュースが「天下一品 首都圏で大量閉店」でした。こってりとした濃厚なスープで知られる天下一品は、長年にわたり日本全国に熱狂的なファンを持ち、特に「中毒性がある」と表現されるその味は、一度ハマったら抜け出せなくなる人も少なくありません。その天下一品が、なぜ首都圏で複数の店舗を閉店するという決断に至ったのか。今回はその背景を探るとともに、時代の変化の中で外食産業が直面している課題について考えていきます。

■封じられた看板が物語る終幕

今回の閉店に際し、ネット上では「いつの間にか看板が消えていた」「通い慣れた店が突然姿を消した」といった声が多数投稿され、驚きと戸惑いの声が広がりました。東京都内を中心に、神奈川、千葉、埼玉といった首都圏エリアの店舗が次々と閉店。一部の店舗では、店頭の看板が真っ黒に覆われ、まるで急な幕引きのような様相を呈していました。

天下一品は本来、個人経営のフランチャイズ形態が中心でありながら、近年では直営店舗も少しずつ拡大していました。しかし、今回閉店した店舗の多くは「直営店」や「直営に近い運営形態」の店舗で、その一部を運営していた「株式会社天下一品トレーディング」という関連会社が店舗運営から撤退する形で順次閉店していったとのことです。

■背景にある運営体制の見直し

では、なぜこのタイミングで店舗の大量閉店が行われたのでしょうか?

その答えのひとつが、運営体制の見直しです。天下一品は、創業者である木村勉氏の理念のもと、1971年に京都で創業して以来、「こってりスープ」という独自のスタイルで支持を受けてきました。FC(フランチャイズ)店に対しても品質管理や味の再現度に厳格な基準を設け、全国どこで食べても“天下一品のこってり”が味わえるよう努力してきた企業です。

ただし、こうした徹底した味の管理やブランド維持のためには、店舗ごとの運営効率、スタッフの質、立地の選定、そして利益率など、多方面にわたる要素が確実に試されています。特に首都圏のように賃料が高く、スタッフの確保も困難な地域では、コンスタントに利益を出し続けることがますます難しくなるという問題がありました。

今回の閉店は、そうした戦略的な再構築の一環として、「経営資源をより拡張性のあるエリアへ集中する」「効率的な店舗運営を目指す」という意図があると見られています。

■人手不足と地代高騰が直撃

外食産業、とくに人手に頼る業種では、近年深刻な人材不足が課題となっています。宴会需要の減少、労働時間規制、そして最低賃金の上昇により、従業員の確保や育成はますます困難になっています。

さらに、首都圏の店舗運営においては「立地の影響」も大きくのしかかります。特に天下一品のように、一等地や繁華街の近くに出店している場合、地代やテナント料が非常に高額になります。これに加え、食材価格の高騰や、光熱費の上昇など、外食産業にとっては厳しい状況が続いていたのです。

そんな中で、利益とブランドの維持を両立させるには、どうしても店舗数の見直しが必要になる局面が訪れました。その結果、採算が合わないと判断された複数の店舗を整理するという決断に至ったと見られます。

■ファンの声と、新たな展開への期待

今回の閉店劇を受けて、SNS上では「お世話になったあの店が無くなるのは悲しい」「こってりスープが恋しくなる」といった声が多く寄せられています。特に学生時代や社会人初期に「深夜まで営業していて助かった」「いつも同じ味で安心した」と語る人が多く、その存在が多くの人にとって「生活の一部」になっていたことが伺えます。

また、首都圏に住む天下一品ファンの中には、「他の地域に足を延ばしてもあの味を求めたい」ということで、近郊の店舗まで定期的に通うことを検討している人もいるようです。

一方で、天下一品本部としては「これを機に、より質の高いサービスと店舗運営に注力していく方針」であるとコメントしており、今後のブランド再構築や、新たな戦略展開にも注目が集まっています。

■「こってり文化」を次世代へ

天下一品の特長である「こってりスープ」は、他に類を見ない独自性を持っています。鶏ガラをベースに、野菜など複数の素材を長時間炊きあげて作られるこのスープは、まるでポタージュのような濃厚な味わいが特徴です。

この味を維持しながら、次の時代のライフスタイルや嗜好に合わせた展開を行うことが、今後のブランド価値をさらに高める鍵となるでしょう。最近では、ヘルシー志向に合わせた「あっさりラーメン」の取り扱い、またECサイトでの冷凍ラーメンの販売拡大など、さまざまなチャレンジも始まっています。

実店舗が減少したとしても、ブランドとしての魅力が広がれば、ファンは変わらずその味を求めていくはずです。

■さいごに

「天下一品 首都圏で大量閉店」というニュースは、多くのファンにとって寂しさを感じるものでしたが、決して衰退を意味するものではありません。むしろ、今後の成長に向けたステップであり、これまで培ってきた人気と信頼を未来へつなげるための「進化の時」と捉えることができます。

私たち消費者としても、新しいスタイルで展開される天下一品の今後を応援し、またその味をいつまでも楽しめるよう、店舗を訪れて応援するもよし、ECでの購入を試してみるもよし。それぞれの形で「天下一品愛」を持ち続けていきたいものです。

変わることの中に、変わらない味。これこそが天下一品の魅力なのかもしれません。