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“もったいない”を美味しさに変える――知られざる「古古古米」の可能性

近年、食の多様化や消費者の志向の変化により、食品の需要にも様々な傾向が生まれています。そんな中、農業や食にまつわる課題の一つとして注目されているのが「古古古米(こここまい)」の存在です。これは、収穫から3年以上経過したお米のことで、通常の市場ではあまり出回らず、多くの場合は飼料や工業用に利用される、いわゆる“売れ残り”のお米です。

この記事では、古古古米とはどのようなお米なのか、またその味や利用状況、そしてなぜ申し込みが少ないのかといった点について詳しくご紹介します。私たち消費者にとって、普段あまり意識することのない“時間が経ったお米”に注目することで、食の選択肢やフードロス問題を改めて考えるきっかけになるかもしれません。

古古古米とは? ― 3年を経過したお米

まず「古古古米」とは何か、という点についてです。一般的に、お米は収穫からの年数によって分類されます。「新米」はその年に収穫されたお米、「古米」は前年のもの、「古古米」は2年前、そして「古古古米」は3年以上前に収穫されたお米を指します。日本人にとってお米は主食とも言える存在であり、特に新米の風味や粘りを重視する傾向が強いため、年数の経ったお米ほど市場価値が下がる傾向があります。

なぜ古古古米の在庫が生まれるのか

では、なぜ古古古米が生まれてしまうのでしょうか。主な理由としては、国内における米の需要と供給のバランスの歪みが挙げられます。農林水産省の農業政策の一環として、食料安全保障の観点からある程度の備蓄米が保管されています。これは、自然災害や国際情勢によって米が不足した場合に対処するための制度です。

ただし、備蓄されたお米にも消費期限があります。そのため、政府はこれらの古い米を一定期間ごとに放出・販売を行っており、その一環として福祉施設や学校、自衛隊、防災関係機関、そして一般の団体などに向けて販売が行われています。

味や品質はどうなのか?

「古古古米」と聞くと、「味が悪いのでは?」「食べても大丈夫なの?」と心配になる人も多いかもしれません。確かに、お米は時間が経つと風味、香り、水分量が次第に失われていきます。新米と比べると、ツヤや粘りが少なく、ぱさついた印象になると言われています。

しかし、しっかりとした保存環境で保管された古古古米は、決して食べられないわけではありません。米の劣化の主な原因は、高温多湿や光に晒されることですが、政府の備蓄米は厳重な管理のもとで保管されているため、炊飯後の味も想像以上に悪くないとの声もあります。

実際に食べてみたという人の口コミによれば、「やや特有の香りを感じるが、炊き方や料理の工夫によっては十分に美味しく食べられる」といった意見も多く見られます。炊く際に油やこんにゃく、雑穀などを混ぜたり、チャーハンやリゾットなどにアレンジすることで、むしろ風味豊かに仕上がるという工夫も紹介されています。

消費が進まない背景と課題

では、なぜこの古古古米が一般にはあまり消費されていないのでしょうか? 農林水産省が2024年に公表した報告によれば、備蓄用の古古古米約1万トンに対して、購入申し込みが入ったのはわずか1700トン分だったとのこと。需要が低迷する理由は主に以下の3点に集約されます。

①風味や食感に対する不安
新米信仰が強い日本においては、味や食感がやや劣る古いお米に対して、品質面での不信感を抱く人が多いのは否めません。実際に食べ比べると味の違いが分かる人もいれば、そうでもないという人もいますが、「古い=美味しくない」という先入観が一定の敬遠につながっています。

②活用先が限られている
古古古米は主に業務用として販売されており、家庭で少量を試せるような販売形式では扱われていないケースも多いです。そのため、一般消費者が試すにはハードルが高いのが現状です。

③そもそもの周知不足
古古古米の存在自体をあまり知られていないという課題もあります。「備蓄米が販売されている」という事実を知る機会が少なく、知っていたとしても購入方法が分からない、手続きが煩雑といった理由から、申し込みに至らないケースが多いようです。

可能性を秘めた「もったいない米」

消費されずに廃棄されたり、飼料に回されてしまう古古古米ですが、実際には一定の品質を保ちつつ、さまざまな料理に応用可能なお米です。そうした点を踏まえると、これはまさに「もったいない米」とも言えるでしょう。フードロスが世界的な課題となっている今、こうした「まだ食べられる食品」をいかに有効活用するかは、今後ますます重視されていく問題です。

古古古米の可能性を広げるためには、私たち消費者が「食の多様性」を受け入れ、試してみる心構えが必要です。料理方法を工夫することや、必要な分だけ適量を購入することで、食卓にプラスの価値を生み出すことも可能です。

最後に ― 古古古米を知ることから始めよう

食費の高騰が続く中、「少しでも節約を」「でも美味しいものを食べたい」というのが、多くの家庭の本音ではないでしょうか。そうした中、古古古米のように、条件さえ工夫すれば利用可能な資源があることを知ることは、とても意義のあることだといえます。

古古古米は決して「安かろう悪かろう」ではなく、保存状態が良ければ安全かつ栄養的にも問題なく食べられる食材です。今後は、政府だけでなく民間企業との連携や、使いやすい小口販売の導入、料理レシピの提案などによって、消費者にとってより身近な存在になることが期待されています。

まずは「知ること」、そして「試してみること」。古古古米は、私たちの食生活と地球環境の両面にとって、持続可能な未来を築くためのヒントを与えてくれる存在なのかもしれません。