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「繰り返される休職の連鎖を断つ──復職はゴールではなく“新しい働き方”のスタート」

働く人々にとって、「休職」と「復職」は大きな転機となり得ます。特に近年、心の不調や慢性的なストレスから長期休養を余儀なくされる従業員が増える中で、ようやく復職した社員が再び休職を繰り返してしまうケースが少なくありません。このような「復帰→休職」を繰り返す現象は、なぜ多発しているのでしょうか。今回の記事では、その背景にある問題点と、繰り返さないためにどのような対策が求められるのかについて、専門家の見解を交えながら分かりやすく解説します。

■ 増える「メンタルヘルス不調」による休職

多くの企業で、精神的な理由により長期で職場を離れるケースが増加しています。原因はさまざまですが、働き方の急激な変化、多様な人間関係のストレス、成果主義のプレッシャーなど、現代社会特有の要因が絡み合っています。特にコロナ禍以降、テレワークや孤立感の高まり、仕事とプライベートの境界が曖昧になることによって、メンタルヘルスに深刻な影響を受ける人が増えているとも言われています。

厚生労働省の調査によると、過去1年間にメンタルヘルスの不調で休職あるいは退職を経験した社員は年々増加傾向にあり、その傾向は大企業に限らず、中小企業や個人事業主にも広まっています。

■ 復職しても、また休職へ…なぜ繰り返すのか?

せっかく職場への復帰を果たしても、再び体調が不安定になり、短期間で休職に戻るというケースが少なくありません。その理由として、以下のような問題が指摘されています。

1. 復職プログラムの不足
復職前に医師の診断書が提出され、問題ないと判断された場合でも、職場側が万全の復職プログラムを準備していないことが多々あります。リハビリ勤務や段階的な業務フェーズが用意されていない場合、急にフル稼働の職場へ戻ることになり、かえって再発につながってしまうのです。

2. 周囲の理解と配慮の不足
復職した社員をサポートする職場の体制が整っていないと、「本当にしっかり戻ってきたのか?」といった無意識の圧力を感じることがあります。本人にとっては、職場復帰がただでさえ勇気の要る挑戦であるにも関わらず、人間関係に新たなストレスが生じてしまうこともあります。

3. 根本的な原因の未解決
精神的な不調の背景には、仕事の質や量、人間関係、働き方などさまざまな要因が関係しています。復職時までにこれらの根本的な原因が見直されていなければ、結局同じ環境下で再び心身のバランスを崩しやすくなります。

■ 本人だけでない、企業にも求められる長期的な視点

「復職できたから、もう大丈夫」と考えるのは時期尚早です。本当の回復とは、元の働き方に戻すことではなく、「同じことを繰り返さずに長く健康的に働ける環境づくり」にあります。それには、本人の強い意思や自己管理能力ももちろん重要ですが、企業側の体制づくりと継続的なサポートも不可欠です。

最近では、復職支援プログラムとして「リワーク」と呼ばれる取り組みが注目されています。これは産業医や心理士、職場上司など複数の立場の専門家が協働し、復職者のゆるやかな社会参加と定着をサポートする仕組みです。たとえば、復職前に数週間のリハビリ勤務期間を設けたり、当初は出勤日数を制限して徐々に慣らしていくなど、段階的な復帰が進められます。

■ 社内文化としての「心の健康」と向き合う姿勢を

今や、企業にとって従業員のメンタルヘルスは重要な経営課題の一つです。長く働いてもらうためには、健康で働ける職場環境づくりが不可欠となっています。それは単に制度を整えるだけでなく、職場の風通しを良くし、上司部下の信頼関係を築き、何か不調があればすぐに相談できるような「心理的安全性」が確保されたチームづくりが求められています。

また、同僚の立場としても、休職から復職した人を「特別な事情を抱えた人」として見るのではなく、一緒に頑張る仲間として、お互いを支え合える関係を築いていくことが大切です。ちょっとした声掛けや仕事の配慮ひとつが、再休職を防ぐ大きな力になることもあります。

■ まとめ:復職をゴールではなく「スタート」に

休職からの復帰は大きな節目です。ただし、そこがゴールではなく、新しい働き方の「スタート」であるという視点を持つことが、再発を防ぐ鍵になります。復職者自身が無理をせず、自分に合ったペースで働ける環境を整えると同時に、職場全体がそれを受け入れる柔軟さと理解を持ち続けることが重要です。

この記事で紹介されたように、再休職を防ぐには、個人と職場の両方に変化と努力が必要です。一人ひとりがその大切さを認識し、共に健康に働く社会づくりに取り組んでいけるよう、今後ますますの理解と支援が求められています。