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沈黙を破り語られた想い──園子温監督、告発から2年越しの記者会見

2022年に複数の女性から性加害の告発を受けた映画監督・園子温(その・しおん)さんが、2024年5月7日、都内で記者会見を開きました。報道によれば、園氏が公の場で今回の件について語るのは、告発以来初めてのことです。本記事では、その会見の内容を丁寧にたどりながら、園氏が語った思いと今後への意欲についてご紹介します。

■ 告発から2年、沈黙を破った思い

2022年に報じられた一連の告発によって、園子温監督は表舞台から姿を消すこととなりました。数人の女性が、園監督から不適切な言動を受けたと公に訴え、業界内外から大きな注目が集まりました。

それから約2年の月日を経て、園監督はこのたびついに記者会見に臨みました。沈黙を破った理由について「今は違う形にでも映画に関わっていきたい」と語り、これから先の活動を模索していく姿勢を見せました。

会見では緊張した面持ちの中にも、真摯に語ろうとする園氏の姿勢が見て取れました。まずは被害を受けたとされる女性たちに対して「傷つけてしまった方には本当に申し訳なく思っています」と謝罪の言葉を述べました。

■ 裁判所での判断と経緯

園氏によると、自身の言動を巡り民事訴訟が複数起こされており、そのうち一部は和解が成立、また一部については司法によって慰謝料等の支払いが命じられたものもあるとしています。一方で、自ら提起した名誉毀損の訴訟については、原稿の一部が真実と認められなかったことも判明しました。

このような複雑な経緯について、園監督は「自分の未熟さや至らなさが引き起こしたこと」とした上で、「自分自身に向き合う時間が必要だった」と語りました。

今回の会見では、自身への告発内容や過去の言動について全面的な否定をするのではなく、「相手がそう受け取ったのであれば、それを真摯に受け止めなければならない」との認識を示しました。自身と向き合う苦しい時間を経て、人として、映画人としてステップを進めたいという想いが伝わってきました。

■ 映画監督としての再起を願って

園監督は1961年生まれ。『愛のむきだし』(2008)、『冷たい熱帯魚』(2010)などで国内外の高評価を得てきた映画監督です。とりわけ猥雑でシュール、時に過激とも評される独自の世界観で知られ、園子温の名前は日本映画のみならず国際映画界でもその存在感を示してきました。

会見では、「これからまた映画を撮っていきたい気持ちはあるか」という記者の質問に対し、園監督は「映画に対して何の未練もなければ、会見を開くことはしなかったと思います」と率直な心情を述べました。

さらに「少しでも自分と関わってくれる人が増えていけば…」と再起への希望を語りました。今すぐに撮影を開始したり、大きなプロジェクトを始動するといった具体的な計画は明かされませんでしたが、「過去を見つめ直し、新しく前に進みたい」という意志がはっきりと感じられました。

■ 人は過ちから何を学ぶのか

昨今、著名人による不適切な言動が続々と表面化する中、多くの人が「過去の過ち」と「再起のチャンス」について考える機会を持っています。園子温監督のケースも、そうした現代社会の現象の一部と言えるでしょう。

告発を受け、社会的評価が大きく揺らいだ園監督。しかし、だからこそ彼がどうその過去と向き合い、次の道を選ぶのかという姿勢には、多くの人の注目が集まっています。

会見の最後、園監督は「人の心に何かを届けるのが映画。だからこそ、その映画をつくる者としての資格を真剣に問い直した」と語りました。この言葉には、過去への反省と未来への願いの両方が込められているように思えます。

■ 社会全体が求める「再出発」の在り方

社会全体で、過ちを犯した人がどのように再出発することを許されるのか。その在り方は、今まさに問われています。

今回の園監督の会見は、罪を不問とすることでもなく、一方的に断罪することでもなく、対話と反省に基づいた「再出発」のモデルケースとなる可能性があります。もちろんその過程には厳しい視線や試練が伴うでしょう。しかし人は時に間違いを犯し、そこから何を学ぶかによって次への歩み方が変わるはずです。

私たち一人ひとりが、過ちや失敗をどう受け止めるか、そして他者の再起にどのように向き合うかを考えることは、より成熟した社会を築く上で欠かせない視点です。

■ 映画を愛する一人として

園子温監督が描いてきた映画には、多くのファンが存在し、共感を覚えた人々も少なくありません。しかし一方で、監督個人の行動が作品に投影され、受け取られ方が変わるという現実もあります。

今回の会見は、「映画監督・園子温」が再び創作の場に立てるかどうかを問う、最初の一歩でした。彼の今後の選択と行動は、もう一度社会から信頼を得られるか否かを左右します。

映画を愛するすべての人にとって、クリエイターが正しい姿勢で創作を続けることは大切な希望であり、未来へつながる力です。

「もう一度映画を撮りたい」という園氏の想いが、単なる願望で終わらず、現実へと前進するには、彼自身の誠実な努力と、私たち社会全体の冷静なまなざしが必要です。

今後どのような作品で再び人々を魅了するのか。園子温監督の一歩一歩に、これからも注目していきたいと思います。