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「基礎年金底上げ」が変える日本の老後 2兆円の財源はどこから?

日本の将来を支える「基礎年金底上げ案」 〜2兆円の財源をどのように確保するのか〜

2024年6月、厚生労働省が検討している「基礎年金底上げ案」が大きな話題を集めています。この案の目的は、老後の生活を支える基礎年金を将来的に拡充し、誰もが一定の生活水準を維持できるような社会保障制度を築いていくことです。しかし、その実現には年間約2兆円の財源が必要とされ、今後の制度設計において大きな焦点となっています。

本記事では、この「基礎年金底上げ案」の背景、目的、内容、そして課題である財源確保策について詳しくご紹介します。

なぜ基礎年金の底上げが必要なのか?

日本は世界でも有数の高齢化社会です。総人口が減少傾向にある一方で、高齢者人口は増加を続けています。特に年金だけでは生活が困難であるという声が多く、高齢者の貧困問題は長年の課題とされています。厚労省の調査によれば、単身高齢者の約3割が相対的貧困状態にあるとされています。

いまのままでは、60歳以降の生活に不安を抱く人が増え続ける一方です。受給額が低いことによって、生活保護を受けざるを得ない高齢者も少なくありません。こうした状況を改善するため、政府は基礎年金の支給額そのものを底上げすることで、最低限の生活保障をより確実なものにしようとしています。

基礎年金とは?

日本の公的年金制度は、「2階建て構造」と表現されます。1階の部分が「基礎年金(国民年金)」、2階が「厚生年金」です。すべての国民が加入するのが基礎年金であり、フリーランスや自営業者も対象になります。

2024年現在、基礎年金の支給額は満額で月額約6万8000円程度。しかし、これは単身で暮らすには明らかに不十分で、多くの高齢者が貯蓄や他の収入源に頼らざるを得ません。この基礎年金を底上げすることで、生活の安定を図る狙いがあります。

底上げ案の内容

報道によると、今回検討されている案では、基礎年金の支給額を一律で底上げする方法、または一部の低所得者層に対して優先的に増額を行う方法など、複数の方針が議論されています。現時点では具体的な支給額の増加分や実施時期はまだ調整中であるものの、年間2兆円規模の追加財源が必要となるとの見通しです。

このような抜本的な改革は、確かに多くの人の生活を支える大きな力となる一方、持続可能な制度とするには緻密な制度設計と財源確保が必要不可欠です。

2兆円という巨額財源、その捻出方法は?

厚労省や与党内では現在、複数の財源確保策が議論されています。

1. 消費税の引き上げ
もっとも議論を呼んでいるのが、消費税の税率引き上げによる財源確保案です。例えば1%の増税でおおよそ2兆円の税収増となるため、今回の底上げ案に必要な額とおおむね一致します。ただし、消費税の引き上げは国民への負担が直接的であるため、慎重な議論が求められています。

2. 社会保険料の引き上げ
もうひとつの案は、年金保険料の引き上げです。被保険者である現役世代が負担する形になりますが、少子高齢化によって働き手が減る中、負担の増加は現役世代への圧力となるため課題も多いです。

3. 高齢者の負担増
一部で検討されているのが、「出す人(財源)と受け取る人(年金)」のバランス見直しです。すでに年金を受給している高齢者にも、一定の負担を求める制度変更が検討されることもありますが、高齢者の生活には直結するため、社会的な合意形成が不可欠です。

4. 資産課税や富裕層への課税強化
海外では富裕層に対する課税強化によって社会保障費を扱う国もありますが、日本では導入のハードルが高いとされています。ただし今後の議論次第では、一定のライン以上の所得や資産を持つ層に対しての制度変更も検討される可能性はあります。

国民的な議論と社会的合意が鍵に

この案をめぐっては、制度の持続可能性と世代間の公平性が常に問われます。つまり、年金制度の改革は単に一方的な支給増にとどまらず、現役世代・高齢世代・将来世代のすべてがバランス良く負担と恩恵を分かち合える社会を目指す必要があるのです。

政府としても、幅広い議論を国民レベルで行いながら、できるだけ多くの人々が納得し得る制度に仕上げていく責任があります。そのためには、制度の透明性を高め、財源の使途を明確にするなど、言葉だけでなく実際の行動として信頼性を築いていくことが不可欠です。

すべての人に「安心できる老後」を

老後の生活への不安から貯蓄に偏り、現役世代の消費が鈍ることは、経済全体にも影響を与えます。一方、ある程度の年金が保障されていれば、安心して消費や投資行動が取れるようになるでしょう。基礎年金の底上げは、個人の問題にとどまらず、社会全体の活性化にもつながる可能性を秘めています。

もちろん現時点では、詳細な制度設計や財源の在り方など、多くの課題が残されています。しかし、全世代がより良く生きるための制度改革であるならば、国民の幅広い議論によって積極的に後押しすることが大切です。

まとめ

基礎年金底上げ案は、今後の高齢社会の中で誰もが安心して老後を迎えるための重要な一歩です。一方で、それを支えるためには2兆円という大きな財源が不可欠であり、今後の制度設計には慎重な議論と工夫が求められます。

社会全体で支え合い、公平で持続可能な年金制度を築くために——私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、理解し、議論に参加していくことが、日本の未来を形作っていく第一歩となるのではないでしょうか。

今後の制度設計の動向にも、引き続き注目していきたいと思います。