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パラアーチェリー連盟の解散が突きつける現実──障がい者スポーツ支援の再構築が今、問われている

日本パラアーチェリー連盟、解散へ 障がい者スポーツを支える土台の立て直しが急務

2024年6月、日本のパラスポーツ界に大きな衝撃が走りました。日本パラアーチェリー連盟(JPAA)が年内限りでの解散を決定したのです。日本障がい者アーチェリー競技の中核を担ってきた連盟の解散は、多くの関係者、そして選手たちにとって深刻な事態であり、今後の競技存続や発展の可能性に不安を抱かせる出来事となっています。

今回は、日本パラアーチェリー連盟の解散決定についての背景や影響、そして今後求められる取り組みについて解説するとともに、私たちが障がい者スポーツをどのように支えていけるのかを考えていきます。

連盟の解散に至った背景

報道によると、日本パラアーチェリー連盟の解散決定は財政的な困難と組織運営上の問題が背景にあります。特に、独立した法人格を持たず、日本アーチェリー連盟内に事務局を置く形での活動が長年続いてきた中で、実質的な運営に支障をきたす課題が多く重なり、継続が困難と判断されたようです。

このような課題には、会計基準の明確化やガバナンス(組織統治)に関する体制の不備、継続的な資金調達の困難などが挙げられます。また、人材不足も深刻で、実際の業務を担うスタッフや役員の確保や後継者の育成が困難であったことも、決定に至る一因とされています。

さらに、東京2020パラリンピック以降、全国的にもパラスポーツへの注目が集まる一方で、競技団体の内部体制や支援体制の整備が追いついていなかったという現実も、今回の解散へとつながった要因といえるでしょう。

選手たちに与える影響

日本パラアーチェリー連盟の解散が選手たちに与える影響は計り知れません。特に、代表選考や国際大会への派遣、競技会の開催など、連盟の担っていた機能が不在となることで、選手が競技活動を続けていく上で多大な不安と困難が生じます。

パラアーチェリーは、身体的ハンディキャップを持つ選手が、集中力や精神力を武器に競い合う奥深い競技で、日本にも多くの実力派選手が存在します。複数回のパラリンピックに出場してきたベテランアスリートもいれば、次代を担う若い選手たちも台頭しており、連盟の存在はそうした選手たちの支えであり目標でもありました。

連盟の解散により、彼らの活動基盤が失われるという事実は、競技力の維持やモチベーションの低下と直結する恐れがあります。また、国際大会においては参加資格の管理や登録業務、さらにはパラリンピック出場に必要な制度上の手続きなどが求められるため、新たな運営体制の構築が急がれます。

新たな枠組みの模索

現在、日本身体障がい者アーチェリー連盟(JDAA)が日本パラスポーツ協会側と協議を進めている段階にあります。連盟解散後は、JDAAがその機能を一部継承した形で、競技運営を担っていく構想が浮上しており、多くの関係者が早期の代替機関の設立や再編成を模索しています。

ただし、新体制への移行には、十分な準備と責任ある組織体制の構築が求められます。選手の情報管理、コーチの育成、競技会の運営、スポンサーや行政との連携等、競技団体として果たすべき役割は多岐にわたるため、それらを担える新たな団体には高い運営能力が求められるのです。

また、各地域でパラアーチェリーに取り組むクラブや指導者たちにとっても、信頼できる新組織の存在は不可欠です。全国規模での競技普及とともに、選手が安定して活動を続けられる基盤を整える必要があります。

パラスポーツ全体への影響

今回の件は、パラアーチェリーという一競技だけにとどまらず、パラスポーツ全体にとっても示唆に富む出来事といえます。障がい者スポーツは、健常者スポーツと比べてまだまだ資金面・運営面での課題が多く、競技団体の運営が不安定なケースも少なくありません。

障がい者スポーツが社会的な注目を集め、共生社会の象徴としての役割を果たすためには、その運営を支える団体や人材、資金の確保が不可欠です。選手が安心して競技に取り組める環境を整えるには、行政、企業、地域社会、そして市民一人ひとりの理解と支援がより一層求められます。

また、障がい者スポーツの価値や魅力をより多くの人に伝え、観戦者やファンを増やしていくことも、大切な支援のひとつです。大会を観に行く、選手のSNSをフォローする、クラウドファンディングに参加するなど、私たち一人ひとりにできる小さな支援が、選手たちの未来を支える大きな力になります。

今、私たちにできること

連盟が解散するという現実は残念ではありますが、これは新たなスタートでもあります。より良い組織運営体制、持続可能な支援の枠組み、そして選手一人ひとりが輝けるステージを再構築する好機でもあるのです。

パラアーチェリー、あるいはパラスポーツに対して私たちができることは何か。その答えは一つではありません。しかし「関心を持つこと」「知ること」「発信すること」、そして「支えること」は、すべての人が今すぐにでも始められるアクションです。選手たちが競技を続けられるよう、次代の競技者を育てる土台を作るためにも、多くの人々の参加と協力が必要です。

障がい者スポーツは決して特別な存在ではなく、私たちの暮らしの一部として成り立っています。共に支え、共に感動を分かち合う競技スポーツの一つとして、今後も発展していくことを心から願います。

おわりに

日本パラアーチェリー連盟の解散という決定は、競技者にとって厳しい現実であると同時に、より良い未来へとつなげるための「問い」でもあります。その問いに応えるべく、多くの人々が手を取り合い、支え合える社会の構築を共に目指していきましょう。

これからも多くのアスリートが、自らの理想を胸に世界の舞台で矢を放ち続けられるような環境づくりを支援していくことを、私たち一人ひとりが自分事としてとらえていくことの大切さを、今回の決定があらためて教えてくれています。