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ニセコ発・リゾートバブル崩壊の軌跡:中国系破たんが突きつけた地域開発の真実

北海道・ニセコに広がる「バブル」の行方〜中国系投資企業の破たんが及ぼす影響とは〜

北海道・ニセコと聞くと、多くの人が美しい雪景色と世界的に有名なパウダースノー、さらにインターナショナルなリゾート地としての魅力を思い浮かべるかもしれません。かつてはローカルなスキーリゾートだったニセコが、近年、世界中の富裕層、特にアジア圏の投資家たちから注目を集め、高級リゾート地として生まれ変わった背景には、多額の海外資本の流入がありました。

その中でも、中国系資本の参入はニセコにおける不動産開発や宿泊施設の建設に大きな影響を及ぼしてきました。しかし2024年6月、こうした投資ブームのひとつの節目となるニュースが報じられました。「中国系破たん ニセコバブルの行方」と題されたニュースでは、中国・不動産大手の関連企業が経営破たんし、ニセコでの大型開発が頓挫したことが伝えられています。この事態はニセコの将来にどのような影響を与え、また私たちが考えるリゾート開発や地域の活性化にどのような示唆を与えるのでしょうか。

ニセコにあふれた「バブル」の正体

日本国内で観光地やリゾート地における「外国資本によるバブル」がたびたび話題に上がるようになったのは、ここ10年ほどのことです。訪日外国人旅行者の増加、円安、そして不動産市場のグローバル化によって、多くの地方都市が富裕層の別荘地として脚光を浴び始めました。その中でもニセコは特別な存在でした。

特に外国人スキーヤーに支持されるパウダースノー、雄大な自然、アクセスの良さ(新千歳空港から車で2時間程度)といった条件が揃っていたニセコは、2000年代半ば以降、オーストラリア人を中心に投資が加速。その後、香港、シンガポール、台湾、そして中国本土の富裕層が関心を寄せ、リゾート開発や高級コンドミニアム、ホテル建設が次々と進められました。

中国系投資企業の破たんによる影響

今回ニュースで報じられた破たんは、中国の不動産大手「中国恒大集団」や「カントリーガーデン」といった企業の経営危機を背景に、その関連投資会社がニセコで手掛けていた大規模開発計画が資金難によって中断あるいは中止の危機に陥ったというものです。全国的にニュースでも取り上げられることが多くなっている中国不動産市場の不安定さが、海を越えて日本にも影響を及ぼし始めている証といえます。

この企業の破たんにより、すでに建設が始まっていたホテル棟が放置状態となっており、地元自治体や観光業者など関係機関にも不安が広がっています。これまで外国資本が地域経済を押し上げてくれる期待があっただけに、開発の頓挫が及ぼす余波は決して小さくありません。

持続可能なリゾート地とは何かを問う時代へ

アジアをはじめとする海外からの投資によって地域が活性化し、新たな雇用やインフラの整備につながる一方で、バブル的な投資というのは常にリスクを伴います。資金の流入が早く、そして退くのも早い。リゾート地としての開発が必ずしも地域全体の利益に直結するとは限らないという現実が、今回の破たんによって改めて浮き彫りになりました。

専門家の中には「開発のスピードに比べて、定住者や人々の暮らしの視点が置き去りにされていたのではないか」という声も上がっています。ニセコは確かに世界的なスキーリゾートとして名を知られるようになったものの、地域全体でみれば人口減少や高齢化といった課題も抱えており、観光産業のみに依存したまちづくりには限界があるともいわれています。

今後の鍵は「地域との共創」

では、このような状況からどのような方向性が望ましいのでしょうか。ひとつのヒントは「地域との共創」という考え方にあるのかもしれません。持続可能な開発とは、単に外部からの資本を受け入れることだけでなく、地域の住民たちの暮らしや文化、自然とのバランスを見ながら計画されるべきものです。

近年では、ニセコ周辺でも「地産地消」や「エコツーリズム」などに取り組む新しい事業者たちが増えてきており、観光客数の増加ばかりを目指すのではなく、質の高い滞在や交流が生まれる場を目指す流れもあります。こうした小さくとも丁寧な取り組みこそが、長期的に見て地域の価値を高めていく鍵となるでしょう。

また、今後は投資家側にも、より責任ある開発や運営体制が求められる時代になっていくとも考えられます。景気に左右されない持続可能な観光地をつくるためには、投資家・事業者・地域住民・行政がしっかりと対話を重ね、地域の実情に即したプレーヤーが中心となる必要があります。

観光地や地域経済の未来を見据えて

私たちは、観光地としての華やかな側面だけでなく、その裏にある経済の仕組みや社会的な構造にも十分に目を向ける必要があります。ニセコのように世界から注目される地域であっても、一つの大きな波が引けば空き家や未完の建物、雇用不安といった現実が立ちはだかることになります。

こうした体験から学ぶべきは、短期的な利益にとらわれず、地域としての個性や持続可能性を大切にする視点です。日本各地には、ニセコのように世界に伍する魅力を持つ地域資源が数多く存在します。それらを守り育てながら、どう活かしていくのか。それこそが、私たちの地域開発や観光戦略の未来を左右するカギになるのではないでしょうか。

今回の中国系企業の破たんは、一企業の経営判断の問題にとどまらず、地方経済や観光地開発、そしてグローバル資本との付き合い方全体を見直す貴重な契機となると考えます。ニセコがこれからどのように姿を変えていくのか。その過程を見守るとともに、私たち自身も地域とともに何ができるのかを考えていく時が来ているのかもしれません。