近年、「リターンライダー」と呼ばれる中高年のバイク愛好家が増加しており、バイク業界に新たな活気をもたらしています。若い頃にバイクに夢中だった人々が、家庭や仕事が一段落したことを機に、再びバイクに跨るというこの現象は、日本全国で広まりを見せています。一方で、長年のブランクによる技術の低下や、体力・判断力の衰えが事故の原因となるケースも増えており、改めて「リターンライダー」としての心構えが求められています。
この記事では、リターンライダーが安全にバイクを楽しむために必要な準備や配慮、そして現代の交通事情に適応するためのポイントについて詳しく紹介します。
リターンライダーとは何か？
「リターンライダー」とは、若い頃にバイクに乗っていた経験があり、しばらくの間バイクから離れていた後に、再びオートバイライフに戻ってきた人を指す言葉です。その多くは、40代から60代の中高年層が中心で、経済的に余裕が出てきたことや、子育てや仕事が一段落したことで自分のための時間を持てるようになったという背景があります。
また、映画やドラマ、SNSなどでバイクの魅力を再認識した人や、同じ趣味を持つ仲間との再会によってもう一度バイクに乗りたいという気持ちが強まるケースもあります。かつてバイクに夢中になった世代が、再び風を感じる旅に出たいという想いを抱くのは自然なことです。
リターンライダーが直面する課題
強い思いを持って再びバイクに乗るとはいえ、長年のブランクは少なからず乗車技術や感覚への影響を与えます。バイクの操作には瞬時の判断力や反射神経、一定の体力・バランス感覚が求められるため、年齢的な衰えが安全運転に影響することもあります。
また、何十年もの間に交通事情も変化しています。交通量の増加、クルマとバイクの性能の進化、高齢ドライバーや自転車との共有道路、さらにはスマートフォンを使いながらの「ながら運転」など、かつてとは異なるリスクが多数存在します。こうした状況下で、過去の経験のみに頼ることは危険であり、現在の交通環境に対応した走行意識が必要です。
さらに、最新のバイクは以前のモデルに比べて性能が飛躍的に向上しているため、そのパワーや操作性に慣れるには時間がかかることも考慮しなければなりません。
リターンライダーにおすすめの心構え
1. 再び教習所で基本を見直す
長くバイクに乗っていなかった人ほど、初心に返ることが大切です。いきなり公道を走る前に、自動車学校のリターンライダー向け講習を受けることで、安全確認や曲がり方、ブレーキングなどの基本的な操作を再確認できます。最近では、中高年を対象にしたリターンライダー講習を用意している教習所も増えています。
2. 体力づくりと健康管理を意識
バイクの運転は見た目以上に体力を要します。重い車体を扱い続けるためには、ある程度の筋力やバランス感覚が必要です。定期的なストレッチや運動を取り入れて体調を整えることが、安全運転を支える基本です。また、目や耳の状態に応じたヘルメットや視力補助器具の使用も重要です。
3. バイク選びで無理をしない
初めから大型バイクに乗るのではなく、自分の身体能力や操作感に合った車種選びを行うことが事故防止につながります。軽量で取り回しのしやすい中型クラスから再スタートするのも一つの方法です。現代のバイクは、ABS（アンチロックブレーキシステム）やトラクションコントロールなど、安全機能が充実している車種も多く、自分にとって扱いやすい一台を選ぶことが大切です。
4. 最新の交通ルールにアップデートする
交通ルールや道路事情は年々変化しています。リターンライダー世代が免許を取得した当時とは、信号や道路標識の位置、交通安全の考え方そのものが異なる場合もあります。定期的に交通安全講習会や自治体が主催する勉強会に参加し、知識をアップデートすることをおすすめします。
5. 無理せず、ゆとりある走行を心がける
一度リタイアしたライダーであれば、「ツーリングの爽快感」や「自分のリズムで走る楽しさ」を知っているはずです。しかし、周囲の流れに無理に合わせたり、若い頃と同じ感覚で走行したりすることは事故の原因となり得ます。むしろ、心にゆとりを持ち、自分のペースで安全なツーリングを楽しむという余裕が長くバイクに乗り続けるための秘訣です。
家族や周囲の理解を得よう
リターンライダーとして再び二輪生活を楽しむにあたり、家族や周囲の理解を得ることも大切です。年齢的な不安や事故への心配から、バイクへの再挑戦に否定的な反応を示す人がいるかもしれません。しかし、安全な運転への対策や準備をしっかり整え、家族に誠実な説明を行うことで、共感と応援を得ることができるでしょう。
また、万一に備えて任意保険や障害保険への加入を検討することもおすすめです。十分な補償を確保することで、自分自身はもちろん、周囲の人々への安心感も高まります。
おわりに
バイクは、ただの移動手段にとどまらず、人生を豊かにしてくれる存在です。若き日に憧れた風景を再び訪れることや、歳を重ねた今だからこそ見える景色を感じることは、リターンライダーならではの特権です。その一方で、年齢や身体の変化、交通環境の進化をしっかりと受け止め、安全への配慮を最優先にすることが重要です。
大切なのは、無理をしないこと。そして、楽しみながら生涯現役のライダーとして安全にバイクライフを満喫することです。リターンライダーが増える今だからこそ、正しい心構えと準備で、新しいバイク人生をはじめましょう。安全第一で、再び風を感じる自由な旅を楽しんでください。
