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「“99点”に込められたエール――『THE SECOND 2024』に映る漫才と審査の美学」

先日、フジテレビ系列で放送されたお笑いコンテスト「THE SECOND~漫才トーナメント~2024」において、決勝戦での「1点減点」が大きな話題を呼びました。SNS上では「なぜ満点が出なかったのか」「あの1点にどんな意味があるのか」といった疑問や憶測が飛び交い、審査員の評価基準に対する関心も高まりました。今回は、「THE SECOND」で注目されたこの“1点”の意味について掘り下げ、その背景とコンテストの意義、そして視聴者・ファンの思いに焦点を当てて考察していきます。

■THE SECONDとは?
まず「THE SECOND」について簡単に紹介しておきましょう。この大会は、結成16年以上の中堅コンビを対象とした漫才トーナメントで、「M-1グランプリ」など若手中心の舞台とは一線を画す形で、長年芸を磨いてきた芸人たちに光をあてる場として位置づけられています。「芸歴16年以上」の漫才師を対象にしているため、参加者たちは経験豊富で、洗練された技と個性を武器に激しい戦いを繰り広げます。

2023年の第1回大会では、ギャロップが栄冠を手にし、2024年の第2回では、ザ・パンチが優勝を果たしました。その中でも、今回特に注目を集めたのが、決勝戦での審査結果です。

■決勝戦で現れた「99点」
今回、決勝の舞台に立ったのは、ザ・パンチとタモンズの2組。両者とも素晴らしいパフォーマンスを披露し、会場は笑いに包まれました。審査は9人の審査員によって行われ、持ち点はそれぞれ100点満点。その中で、8人がザ・パンチに満点の100点をつけましたが、1人だけが99点と評価したのです。

結果として、ザ・パンチは899点という高得点を叩き出して優勝。この「1点減点」が話題となり、SNSや掲示板を中心にさまざまな意見が飛び交いました。「なぜその審査員だけが99点だったのか?」「パフォーマンスのどこに減点する要素があったのか?」と、多くの人々が興味を持ったのです。

■なぜ「1点」が話題になるのか?
一見すると、1点の減点くらいで大騒ぎするのは不思議に思えるかもしれません。ですが、その「1点」には様々な意味や想いが込められている可能性があります。

満点である100点には、「あなたの漫才はこれ以上ないくらい素晴らしかった」という最大級の賛辞が込められます。一方で99点は、もちろん非常に高い評価であることに違いはないのですが、「あともう少しで完璧だった」というニュアンスが加わります。

つまり、その1点が「芸として本当に完璧だったかどうか」という、非常に微妙なラインを表現しているとも言えるのです。実際、審査員の一人であるお笑いコンビ・フットボールアワーの後藤輝基さんは、審査後のインタビューで「芸人へのリスペクトを込めてあえて99点にした」という趣旨の発言をしています。

単なる欠点があったというよりも、「芸はまだ進化する」「伸びしろは残っている」ことを示す意味での99点だったのです。

■「減点ではなく、期待」
このように捉えると、99点という評価は「減点」ではなく「未来への期待」と見ることもできます。ザ・パンチは、2003年から活躍しているコンビで、一時期テレビでの露出が減っていた時期もあります。しかし、今回の大会ではその実力を存分に発揮し、見事に返り咲きを果たしました。

そういった文脈の中での99点は、「まだあなたたちは進化できる」「この先もさらに高みを目指してほしい」というメッセージとも受け取れます。

経験豊富な芸人たちが集うこの大会で、満点を避け、あえて1点を「残す」。それは厳しいようでいて、実は温かくもある、熟練の芸人にこそ向けられるエールの形なのかもしれません。

■審査の難しさと美しさ
一方で、審査員たちにとって「点数をつけること」がどれだけ難しいかも伺えます。特に今回のようにどちらも高いレベルで接戦を繰り広げた場合、「100点」をつけるには、それにふさわしい確信が必要です。しかも「満点」を出してしまうことで、次の大会、あるいは他の出場者との比較にも影響が出かねません。

そう考えると、審査員の持つ責任の重さも相まって、「1点」を減らすかどうかは容易な判断ではなかったことでしょう。それだけに、今回の「99点」は、極めて慎重で誠実な審査であったことの証とも言えるのです。

また、このような議論が巻き起こること自体、THE SECONDという大会がいかに視聴者に注目され、愛されているかを表しています。点数だけでなく、そこに至る背景や思いに共感が集まる――それもまた、この大会の面白さの一つと言えるでしょう。

■視聴者・ファンのまなざし
SNSを眺めてみると、「ザ・パンチの漫才に泣いた」「点数つけるのが難しいほど素晴らしかった」など、視聴者の間でも高い評価がされていたことが分かります。こうした声は、芸人たちにとって何よりの励みになるはずです。

また、一方で審査員に対する理解と尊重の声も多く、「1点減点に深い意味を感じた」「100点を簡単には出さない姿勢がいい」といった意見もありました。これらの反応から、視聴者の間でも審査のあり方に対する真摯な理解が深まりつつあることがうかがえます。

■芸の道は続く
優勝という一つのゴールを迎えたザ・パンチですが、芸の道に終わりはありません。今回の「99点」は、彼らの今後の漫才人生を豊かにするヒントにもなり得ます。完成ではなく、進化の途中として認められたことは、彼らにとって新たな出発点ともなったはずです。

また、THE SECONDという大会自体も、今後さらに多くの芸人たちにとっての希望の舞台となっていくことでしょう。単なる競争ではなく、それぞれの物語が交錯する場として、多くの感動や笑いを届けてくれることに期待が高まります。

■まとめ
今回の「THE SECOND~漫才トーナメント~2024」で巻き起こった「1点減点」の議論には、芸に対する深い敬意や思いが込められていました。ただの数字の違いではなく、その裏には審査員の哲学、芸人の努力、そして視聴者の共感が交差していたのです。

満点でなくても、いや、満点でないからこそ語られるストーリーがあります。それが芸という世界の奥深さでもあり、私たちを惹きつける理由なのかもしれません。これからもTHE SECONDを通じて、多くの芸人たちの新たなステージを応援していきたいですね。