2024年6月現在、国際取引や個人輸入に携わる人々の間で注目が集まっているのが、財務省が進める「少額輸入品の免税制度見直し」に関する動きです。現在、少額の海外からの個人輸入品には一定の金額まで関税や消費税が掛からないという免税措置が存在していますが、これが今後見直される可能性があるとの報道がなされました。
本記事では、この制度の成り立ちや現状、そして見直しが検討されている背景、および私たちの暮らしや経済に与える可能性のある影響についてわかりやすく解説します。
少額輸入品の免税制度とは?
かねてより、海外のオンラインサイトなどを利用して個人で商品を輸入するケースが増えています。特にグローバルEC(電子商取引)の発展により、個人が直接海外から商品を購入するハードルは大幅に下がりました。
このような個人輸入に関しては、国内の関税や消費税の徴収の効率性を考慮し、一定金額以下の輸入品については免税とする制度が設けられています。現在、日本ではおおよそ16,666円以下の物品(商品の価格が米ドルで一定金額以下)については関税や消費税が課されない仕組みです。これにより、個人が少量の商品をスムーズに輸入・利用できる利点があり、多くの消費者にとってメリットとなっています。
なぜ見直しが検討されているのか?
この免税制度の見直しをめぐる背景には、いくつかの重要な要因があります。
第一に、越境ECの急速な拡大があります。中国をはじめとする海外の大手ECプラットフォームを通じて、日本国内のユーザーが商品を安価に、そして手軽に購入する機会が急拡大しています。これにより、商品が大量に個人宛として輸入されており、その多くが現行制度により免税となっているケースがよく見られます。
第二に、それにより国内事業者との競争環境に不均衡が生じていることへの懸念です。例えば、国内の小売業者やEC事業者は当然ながら、販売に際して消費税を顧客から徴収し、納税する義務があります。一方で、海外サイトから直接輸入された商品については少額であれば免税となるため、価格面での競争で国内事業者が不利になるという状況がかねてより指摘されてきました。
また、税収面においても、越境ECの増加が国家の財政に与える影響が無視できない水準まで膨らんでいるとされます。関税・消費税が本来であれば課税されていたであろう商品が免税となることで、国の税収機会が失われているという指摘もあります。
これらの現状を踏まえ、財務省はこの免税制度のあり方について見直しの方向で調整を進めていると報じられました。
具体的な見直しの内容は?
記事によると、財務省は今後、少額輸入品の免税対象となる金額の引き下げや、税金徴収体制の整備などについて本格的な検討に入る方針とのことです。例えば、現行の「1万6666円」というラインをより低く設定することにより、より多くの輸入品に税負担を課すことが可能となります。
また、徴税の実効性を確保するための仕組みづくりも検討されています。海外のEC事業者や物流業者を通じて税金の徴収がスムーズに行えるような仕組みづくりも模索される可能性が高く、国際的な連携の必要性も高まっています。
私たち消費者への影響は?
では、この制度が見直されることで私たち一般消費者にどのような影響が及ぶのでしょうか?
まず明らかに変わる点は、海外から少額の商品を購入する際の「コスト」が増える可能性があるということです。これまで免税対象だった商品が、税制見直し後には消費税や関税の対象となることで、手元に届く価格が上がることになります。5000円前後のアクセサリーや衣料品、日用品などを個人で買っていた方にとっては、価格上昇の影響を受けるケースが増えるでしょう。
一方で、これまで不公平とされていた国内事業者との価格競争の面では一定の是正が期待されます。国内販売業者にもより公平な競争環境が整えられ、地域経済・国内産業の健全な発展にもつながる可能性があります。
また、見方を変えれば、今までよりも「質の良い商品」や「正規ルートで販売されている商品」を安心して購入するという意識が高まるきっかけにもなるかもしれません。輸入品に伴うトラブル(偽物、品質不良、返品不可など)が少なくなることで、消費者保護の観点からも意義のある見直しといえるかもしれません。
グローバルな動きと課題
実はこのような制度の見直しは、日本だけでなく海外でも進んでいる流れです。EUでは2021年に「22ユーロ以下の免税を廃止」する制度改革が行われ、越境ECによる税の不公平を是正する動きが本格化しています。また、アメリカでも海外からの小口輸入に対する課税強化の議論が活発化しています。
ただし、実際の制度変更にあたっては多くの課題も想定されます。海外のEC事業者との情報連携や税徴収手続きの効率化、物流現場での対応体制の整備など、実務的な課題が山積しています。消費者への過度な負担となることなく、適正な課税を実現するためには、段階的かつ協調的な対応が求められます。
まとめ:制度見直しの意味を考える
今回の財務省による「少額輸入品免税制度の見直し」の検討は、ただの税制度改革にとどまらず、私たちの経済活動や消費行動にも大きな影響を与える可能性があります。グローバル化が進む中で、制度の見直しは避けて通れない流れかもしれません。
しかし大切なことは、「誰かが得をして誰かが損をする」という単純な構図で捉えるのではなく、「公平な課税環境とは何か」「持続可能な経済のために何が必要か」という視点から考えることです。
今後の議論の行方に注目し、自分にとってもどのような影響があり得るのかを意識しながら、賢く柔軟に対応していくことが求められます。私たち一人ひとりの生活にも少なからず関係のあるこの制度改正。今後の情報に注視し、自分なりの理解と準備を進めていきたいところです。