「天下一品 首都圏で閉店ラッシュ」：濃厚こってりラーメンの名店に何が起きているのか？
濃厚スープがクセになる唯一無二のラーメン店として全国に根強いファンを持つ「天下一品」。その中でも特に都市部を中心に人気を博している首都圏の店舗が、近年相次いで閉店しているというニュースが報じられました。ラーメン業界の中でも異彩を放ち、高いブランド力と個性で長年愛されてきた天下一品に何が起きているのでしょうか。
この記事では、天下一品の首都圏店舗で何が起きているのか、そしてその背景にある複数の要因について詳しく掘り下げていきます。あわせて、私たちファンは今後どのようにこの事態に向き合えばいいのかについても考えてみましょう。
こってりスープで名を馳せた「天下一品」とは？
まずは、天下一品（通称「天一」）について改めてご紹介しましょう。1971年に京都で創業して以来、50年以上にわたりラーメンファンに愛されてきた老舗です。その代名詞ともいえる「こってりスープ」は、鶏をベースに野菜などを長時間煮込み、独特のドロっとした濃厚な仕上がりになっています。一般的なラーメンのスープとは一線を画す”あのスープ”を、一度でも味わったことのある方なら、その記憶は強く焼き付いているはずです。
まさに「中毒性」とも言われるその味わいが、多くのファンを惹きつけ、中には「天一ジャンキー」と自称する人も少なくありません。「10月1日は天下一品の日」として毎年記念キャンペーンが行われるなど、その人気とファン層の厚さを物語っています。
首都圏で広がる「閉店ラッシュ」という異変
しかし、そんな天下一品に異変が生じています。最近になって、東京都内はじめ神奈川、千葉、埼玉など首都圏エリアにおいて、繁華街を中心に天下一品の店舗が次々と閉店しているというのです。
報道によると、2024年に入ってからだけでも、都内中心部の人気店が複数閉店し、今後もさらに閉店が続く可能性があるとのこと。これまで“変わらぬ場所で、変わらぬ味を”提供してきた天下一品にとって、これは尋常ではない事態と言えます。
特にSNS上では、天一ファンたちが「いつも行っていたあの店が閉まっていた」「深夜にあのスープが恋しくなったのに…」とショックを受ける声が相次いでいます。リピーターが多く、常連客との絆が強いだけに、突然の閉店は多くの人の生活の一部にまで影響しているといえるでしょう。
なぜ閉店が相次ぐのか？背景にある課題とは
では、なぜ天下一品の首都圏店舗でこのような閉店ラッシュが起きているのでしょうか？その背景には、いくつかの要因が複雑に関係していると見られています。
1. 人手不足と人件費の高騰
外食産業において深刻化しているのが、人手不足の問題です。特に首都圏では、スタッフの確保が難しい上に人件費が高騰しており、小規模チェーンでは採算が取りづらくなっているのが現状です。
天下一品では、丁寧に仕込まれたスープや調理工程に一定の技術や時間を要するため、未経験者だけでまかなうのは困難であり、結果として運営コストが他の業態と比べて高くなる傾向があります。
2. 家賃やテナント料の高騰
首都圏の一等地や繁華街では、店舗の維持にかかるコスト、特に家賃が非常に高額です。この数年間でテナント料が上昇し続けていることも、閉店の一因と考えられます。
固定費を抑えられなければ、当然ながら収益構造は厳しくなり、赤字店舗を撤退させる判断をせざるを得なくなるという現実があります。
3. コロナ禍における営業時間の制限・客足の変化
コロナ禍の影響も回避できませんでした。特に天下一品は、深夜帯の営業が強みの一つでもあり、「締めのラーメン」として利用されるケースが多く見られました。しかし、感染拡大時の営業時間短縮要請により、収益が激減。さらにその影響が長引く中で客足が戻らず、以前のような売上を確保するのが難しくなっています。
4. 消費者の嗜好の変化・競争の激化
近年、ラーメン業界自体が多様化し、サッパリ系・特化系（つけ麺、まぜそば、ヴィーガンラーメンなど）など、多種多様なラーメン店が登場しています。食の選択肢が広がったことで、天下一品のような”どろ系こってりラーメン”の味が苦手という人や、もっと健康志向なラーメンを求めるユーザーが増えつつある点も見過ごせません。
今後、私たちはどう関わっていくべきか
天下一品のこのような状況に、残念な思いを抱く人は多いことでしょう。しかし、嘆くだけではなく、私たち消費者側ができることもあるはずです。
たとえば、近隣の天下一品を応援するために定期的に訪れる、テイクアウトや通販を利用する、SNSで応援の声を届ける…など、小さな行動が大きな支えになることもあります。実際、天下一品では通信販売にも力を入れており、「おうちで天一」の需要も高まっています。
また、今後は人手を最小限に抑えた効率的な運営体制を模索したり、新業態や業務提携による新たな展開が期待されるかもしれません。天一ブランドは、まだまだ多くの可能性を秘めているのです。
天一の味は、私たちの中にも生き続けている
天下一品の「こってり」は、味だけじゃなく、思い出や感情も詰まった一杯です。学生時代に仲間と深夜に食べたあのラーメン、大切な人との思い出、仕事帰りのご褒美として立ち寄ったあの居心地の良いカウンター席。そうした1つ1つの瞬間が、「天下一品」という名店の価値を形づくっているのではないでしょうか。
閉店してしまった店舗の分まで、これからも残る店舗やリニューアルされた店舗を、私たち1人1人が自分の中で大切に味わいながら支えていく。それが、一ファンとしてできることの1つかもしれません。
まとめ
「天下一品 首都圏で閉店ラッシュ」というニュースは、多くのファンにとって決して他人事ではありませんでした。一方で、この事態をきっかけに私たちが”食”とどう向き合うか、また、地域や時代の変化の中で何を残し、どう応援していくのかを考える良い契機にもなります。
いつの日か「あのとき閉店が続いたけど、今も変わらない味がある」と言える未来のために、いま目の前の一杯を大切に味わいたいものです。天一のスープは、これからも私たちの心に流れ続けるはずです。
