現代社会における新たな課題「正社員の孤独」──とくに20代が直面するリアルな現実
現代の職場環境では、かつてないほど多様化と柔軟化が進んでいます。リモートワーク、フレックスタイム、副業の解禁など、働く人々のライフスタイルに合わせた選択肢が広がる中で、表面上は「自由で快適な」働き方が広がっているように見えます。しかし、その一方で、私たちは見過ごすことのできない重大な問題にも直面しています。それが、正社員として働く人々が感じている「孤独感」です。
中でも注目すべきは、若年層の孤独感。最近、ニュースサイトYahoo!ニュースが取り上げた調査によると、正社員として働く人の中でも、とくに20代が最も「孤独感」を感じているという結果が明らかになりました。この調査結果は、単なる世代別の感情の違いにとどまらず、現代社会の構造や働き方、そしてメンタルヘルスへの向き合い方に、本質的な課題を突きつけているのではないでしょうか。
この記事では、なぜ20代の正社員が孤独を感じるのか、その背景とともに、企業として・社会としてどのようにこの課題に向き合っていくべきかを考えます。
調査結果が示す「働く孤独」
記事によると、調査を行ったのは一般社団法人「チームワーキング協会」で、全国の20歳～59歳の正社員2,500人を対象に「職場での孤独感」に関するアンケートを実施したものです。その結果、全体の58.8％が「職場で孤独を感じる」と答え、その中で最も孤独を感じているのが20代であることが明らかになりました。
20代の約65.9％が「孤独を感じたことがある」と回答しており、この数値は30代（60.1％）、40代（56.8％）、50代（51.7％）と比較しても高い割合となっています。言い換えれば、若年層の方がより強く、より頻繁に孤独感を抱えているという現実が浮き彫りになったのです。
なぜ20代は孤独を感じやすいのか？
ではなぜ、20代の正社員がこれほど高い確率で孤独感を抱いているのでしょうか？これにはいくつかの背景が考えられます。
1. 社会人としての経験が浅い
多くの20代は、学校生活を終えて社会人としてまだ間もない段階にあります。人間関係の形成や、仕事におけるコミュニケーションの取り方に慣れていないため、自身の立ち位置がつかみにくく、職場での居場所やつながりを感じにくいのです。
2. 上司や先輩とのジェネレーションギャップ
年齢の離れた上司や先輩とどう関係を築けば良いか分からず、会話が続かなかったり、共通の話題が少なかったりすることは多くあります。また、世代間での価値観や働き方に対する考え方の違いも、壁を感じる原因となっています。
3. リモートワークによる「見えない関係性」
新型コロナウイルスの影響を受けて、若手の新入社員が入社直後からリモート環境で働くケースも増えました。これにより、物理的・心理的な距離が生まれ、上司や同僚と顔を合わせる機会が減ったことで、さらに孤独感が深まっていると考えられます。
4. 成果主義の浸透によるプレッシャー
近年の日本企業では、年功序列から実力主義・成果主義へのシフトが進んでいます。この変化によって、若手社員においても成果を求められる環境が常態化しつつありますが、評価軸が明確でなかったり、周囲と競争させられることで、自分の努力が正当に評価されているかという不安や、協力よりも個人の責任が重視される傾向が孤独感を高めている可能性もあります。
孤独が引き起こす影響とは？
職場における孤独感は、単なる一時的な感情にとどまりません。長期間にわたり孤独を感じ続けることで、メンタルヘルスに影響を及ぼすリスクが高まります。うつ傾向や不安障害、燃え尽き症候群（バーンアウト）などの精神的な不調につながることもあり、実際に健康や業務パフォーマンスに影響を与えてしまうことがあります。
さらに、職場に対しての帰属意識が低下することで、離職率の上昇にもつながる恐れがあります。若年層における早期離職の背景には、こうした精神的な孤独感が深く関わっていると考えられています。
企業と社会に求められる対応
このような状況を変えていくためには、企業や組織単位での取り組みが不可欠です。
1. オープンなコミュニケーションの促進
定期的な1on1ミーティングやチームミーティングを導入し、業務以外の話題でも気軽に話ができる環境づくりが求められます。心理的安全性が担保されることで、若い社員も安心して自分の考えを表現できるようになります。
2. メンター制度やオンボーディングプログラムの充実
入社後の数ヶ月は、特に孤独感を感じやすい時期です。この期間にメンターが精神的・実務的な支援を行うことで、20代の社員が安心して職場に馴染めるようになります。
3. ハイブリッド勤務におけるつながりの工夫
リモートワークが普及した現在、オンライン上でも人と人とのコミュニケーションをどう取るかが問われています。定期的なオンラインイベントやカジュアルな雑談タイムなど、バーチャルな場でも交流が生まれる工夫が大切です。
4. 孤独対策のためのダイバーシティ＆インクルージョン推進
多様な人材が互いに受け入れられ、尊重される職場づくりは孤独の解消につながります。意見を出しやすく、批判されにくい文化をつくることは、すべての社員にとって働きやすい環境につながります。
個人としてできること
企業や社会の支援が重要である一方、個人としても「孤独」に対して受け身になるだけでなく、小さなアクションを起こすことは可能です。例えば、同僚にランチのお誘いをしてみたり、業務後に軽く話せる時間を設けたりと、「自分からつながる」工夫も大切です。
また、心身に不調を感じた際には、無理に我慢せず、上司や人事、外部の専門機関に相談することも、自分を守るためにとても大切です。
おわりに
「職場での孤独感」は、目には見えづらい問題であるにもかかわらず、働く人々の心に深く根ざしています。特に20代の若者たちが感じている孤独は、単なる気持ちの問題ではなく、社会構造や働き方の変化の影響を受けた複層的な課題と言えます。
だからこそ、企業、社会、個人が一体となり、誰一人孤独を感じることなく安心して力を発揮できる職場環境をつくることが求められています。それは、働きがいのある職場を実現するだけでなく、持続可能で温かな社会の実現にもつながるのではないでしょうか。
私たち一人ひとりが、誰かの孤独に気づき、寄り添うことから、少しずつ未来が変わっていくことを願ってやみません。
