2024年6月、政界を騒然とさせたニュースが再び注目を集めています。立憲民主党の衆議院議員・打越さく良氏が、自民党の安倍派所属の議員5名に対し、証人喚問を要求する動議を参議院法務委員会で提出したのです。政界の核心に迫る重大な局面において、果敢に声を上げた打越議員とは一体どのような人物なのでしょうか。その経歴とともに、今回の動議の背景や意義について掘り下げてみます。
■法と正義を貫く弁護士出身議員:打越さく良
1964年1月、新潟県長岡市に生まれた打越さく良氏は、東京大学教養学部卒という輝かしい学歴を持ち、長年にわたり弁護士として男女共同参画や人権擁護、家庭法務などに取り組んできました。特に、DV被害者の支援や性暴力問題に対する取り組みで広く知られ、女性の権利擁護に尽力してきた実績を持っています。
その専門的な知見と経験を政治の世界で活かすべく、2019年の参議院選挙にて立憲民主党から比例代表で出馬し初当選。新潟県選挙区を基盤に、市民の声を国政に届ける活動を続けています。基礎から法律を理解し、弁護士として数多くの理不尽や不正義と向き合ってきた彼女にとって、「説明責任」や「政治的中立性」は、何よりも重視すべきテーマなのです。
■証人喚問の要求はなぜ今なのか? 安倍派と政治資金規正法を巡って
今回、打越氏が要求した証人喚問の対象となっているのは、自民党・安倍派に所属していた5名の現職衆議院議員です。すでに報道でも繰り返し取り沙汰されている通り、彼らはかつて派閥で行われていた政治資金パーティーの収支に関する問題、いわゆる「パーティー券裏金問題」に関与していた疑いが指摘されています。
安倍派は日本の政界でも随一の規模と影響力を有した派閥であり、その立ち位置ゆえに政治資金にまつわる問題がこれまでも注目されてきました。しかし、2023年末から2024年にかけて特に噴出したのが、政治資金の不記載やキックバック問題。検察庁によって捜査も行われ、政治資金収支報告書上の虚偽記載での略式起訴という事態となりましたが、国会議員に対しての政治的・倫理的責任はまだ明確に問われているとは言いがたい状況です。
こうした実態を受け、国民からは「誰が、どれだけの金額を受け取ったのか」「問題の背景には何があるのか」など、政治の透明性に関する疑問が次第に高まっていきました。とりわけ、立憲民主党の岡田克也幹事長が「疑惑の解明なくして政治の信頼回復はあり得ない」と述べた通り、野党側は一貫して、関係者からの事実の説明と国会での証言が必要であると訴えてきたのです。
■「説明責任」は法の根幹に触れる問題
打越さく良氏が今回、声を上げたのは、単に政争の場として国会を利用しているからではありません。彼女が繰り返し主張しているのは、「政治の信頼を取り戻すために、疑惑の真相解明は不可欠である」ということです。
弁護士として数多くの被害者や社会的弱者に寄り添ってきた経歴からも、彼女が信条としているのは「制度の不正義を正す」という姿勢です。「政治家であれ誰であれ、不正を行ったら説明すべき」という彼女の主張は、法治国家における正義の原則に根ざしたもの。政治家が社会の手本とならなければ、法に従う国民との信頼関係は成り立たなくなります。
「なぜ証人喚問なのか?」という問いに対しても、彼女は現行法制度の問題点を丁寧に指摘しています。今回の略式起訴では簡易裁判所の審理により罰金刑で終結しており、詳細なやり取りや経緯について明らかになる機会は失われました。そのため、国会という場で公開のもと証言させる必要があるという論理なのです。
■支持を広げる人物像と市民とのつながり
また、打越さく良氏の政治姿勢は、市民の声を代弁する「共感型」のアプローチに特徴があります。「国会は国民が主役の舞台であるべき」との信念から、地域に密着した活動や、SNSを使った情報発信にも積極的です。一般市民や若者の声に耳を傾け、どんな小さな疑問でも誠実に回答する姿勢は、多くの支持を集めています。
かつて彼女が語った「説明しなくても許される空気が蔓延しているからこそ、私たちは“問う”ことを止めてはいけない」という言葉には、政治家一人一人の責任感を問いただす強い意志が込められています。
■証人喚問の行方と今後の注目点
今回の動議は自民党など与党側の反対多数で否決となりましたが、この議論が終わったわけではありません。与党内からも一部では「国政の信頼が失われている」「隠すより説明した方がプラスだ」という声が出ており、今後の情勢次第では再び証人喚問の議論が浮上する可能性も十分にあります。
また、打越氏ら立憲民主党はこれに留まらず、政治資金規正法の改正や派閥の在り方そのものを問い直すなど、構造的な変革に取り組む姿勢を見せています。政治に対する信頼が揺らぐ今だからこそ、何を信じ、誰に託すのかが問われているのです。
■まとめ:正義のために声を上げる議員の存在意義
打越さく良氏は、単なる政党の対立の中で行動しているわけではありません。法と正義の担い手として、説明責任のある政治を実現し、国民が再び政治を信頼できる社会を目指して戦っています。その背景には、地道な市民活動と実務経験、そして社会的な視点に裏打ちされた確かな信念があります。
今後、彼女のような議員がどれだけ増え、声を上げ続けることができるのか――それが、日本の民主主義の未来を左右する重要な鍵となるでしょう。政治に対する不信が広がる中で、私たち一人ひとりが守られるべきルールと責任の意味を、今一度考える時が来ているのかもしれません。