近年、音楽フェスティバルや大型イベントの盛り上がりと共に、一部の来場者によるマナー違反が問題視されています。2024年5月、千葉県袖ケ浦市で開催された大規模音楽フェス「METROCK（メトロック）2024」でも、そのような行動が関係者や来場者の間で大きな話題になりました。特に注目を集めたのは、サイン看板を意図的に剥がす悪質な行為です。主催者はこの行為に対し、公式に注意喚起を行い、マナー向上を訴える事態に発展しています。
今回は、この出来事から見えてくるイベントマナーの重要性、ルールと自由のバランス、そして音楽フェスに参加する全員が快適な時間を共有するために何が求められているのかを考えていきます。
■ サイン看板剥がしという行為の背景
METROCK2024は、毎年多くのアーティストとファンが集まる人気の音楽フェスティバルで、今年も数万人規模の来場者が訪れました。しかし、イベント終了後、SNS上では「装飾として設置されたサイン看板を意図的に剥がしたり持ち帰ろうとした人がいた」との投稿が拡散しました。
これに対し、主催者側は公式X（旧Twitter）アカウントを通じ、「写真撮影用に設置された装飾や看板等は全てイベント側の財産です。持ち帰ったり、剥がそうとする行為はやめてください」と、異例とも言える警告を発表しました。
この行為が問題視された理由は、装飾物が「オブジェとして設置された演出物」であり、不特定多数が共有する空間を構成する重要な要素であったことにあります。特定の個人がそれを勝手に剥がしてしまうことは、イベント全体の雰囲気を損ない、他の来場者の楽しみを奪うことに繋がります。
■ ルールとマナーをどう捉えるか
自由な表現と楽しさが許される音楽フェスではありますが、あくまでそれは「公共の場」で成り立っています。主催者が設けるルールやマナーは、参加者全員が安全に、そして気持ちよく時間を過ごすための最低限の取り決めです。
今回のサイン看板剥がしのように、「記念にしたい」「好きなアーティストの名が書かれているから」という気持ちから行った行動であっても、それが許可されていない限りはマナー違反であり、時には器物損壊とされる可能性もあります。それは法的な問題にもなり得ますし、何より主催者やボランティア、施設のスタッフが丹精込めて準備したものに対しての無理解とも言えるでしょう。
現場に関わる多くの人たちが作り上げた空間を、ほんの一部のマナーを守らない行為によって壊してしまうのは極めて残念なことです。
■ SNS時代における情報拡散とその影響力
今回のような行為が一気に広まった背景には、SNSの影響が大きくあります。フェスに参加した来場者が、自分が目撃した事象や写真をすぐにインターネットで共有することで、時には炎上に繋がることもあります。
しかしSNSの力はネガティブな方向だけでなく、マナー向上の呼び掛けにも大きく貢献します。今回の件についても、多くの参加者が「マナーを守って楽しく過ごすフェスであってほしい」「一部の迷惑行為でイベント全体のイメージが下がってしまうのは残念」といった投稿を行っており、善意ある拡散が増えています。
こうした声が増えることで、次回以降のイベントの質が向上し、主催者と参加者が一体となってより良い空間を築いていくことが期待されます。
■ イベント主催者の今後の課題と対応策
今回のトラブルを受け、イベント運営側は参加者への啓発を強めつつ、対策の必要性も浮き彫りとなりました。例えば、屋外の装飾物については設置の仕方や固定方法を強化する、安全・倫理について周知する掲示やナレーションを増やすといった施策が考えられます。
また、来場前の公式サイトやチケット購入時点などで「来場時のマナーに関する案内」を徹底することで、参加者の意識を高めることも効果的です。初めてフェスに参加する人も多いため、分かりやすいガイドラインを準備することは大切です。
一方で、主催者だけでなく「参加者自身の自覚」も欠かせません。イベントを支えるのは、観客一人ひとりのマナーと協力であることを再認識する必要があります。
■ 最後に：音楽フェスをみんなで楽しむために
音楽フェスは、アーティストとファンがひとつになって感動を分かち合える素晴らしい場です。自然の中で開放的な空間を満喫し、お気に入りの音楽に身を委ねながら心を通じ合わせる、その特別な時間には何ものにも代えがたい価値があります。
だからこそ、そのひとときをすべての参加者が心地よく過ごせるよう、自分自身の行動を見直すことが必要不可欠です。仲間と共に楽しみ、他人に迷惑をかけず、ルールを理解する。そのシンプルなことが、より良いイベント、そして明日への希望へと繋がっていくのです。
今回のMETROCKのようなマナー啓発は、一過性の対処で終わらせるのではなく、すべての音楽フェスやイベントにおいて継続して啓発されていくべき重要なテーマです。
マナーを守って、もっと自由に。みんなで作る理想のフェス。それが私たち一人ひとりの心がけから始まる、未来への第一歩なのです。
