近年、親と子どもの関係性がかつてなくフラットになり、まるで友達のように接する「友達親子」が増えてきました。親子間の緊張感を和らげ、共に楽しい時間を共有できるこのスタイルは、一見理想的とも思われがちですが、実は育児や子どもの成長においてさまざまな注意点が指摘されています。今回は、医師の見解をもとに「友達親子」の持つリスクや、健全な親子関係を築くためのポイントについて考察します。
「友達親子」とは何か
「友達親子」とは、その名の通り、親と子どもがまるで友達のように接する関係です。親が子どもを対等な存在として尊重し、お互いに上下関係を感じさせず、楽しく会話をし、同じ趣味を共有したり、一緒に遊んだりすることが特徴です。このような関係性は、子どもが親に本音を打ち明けやすくなるなど、良い面も多くあります。
しかしながら、この「友達」の部分に重きを置きすぎると、親として果たすべき役割、つまり育児やしつけ、道徳心や社会性を教える責任が希薄になってしまう恐れもあるのです。
医師が指摘する「友達親子」のリスク
2024年4月の記事『「友達親子」の注意点 医師が語る』では、夜間に訪れる子どもの患者が増えている背景として、「親が制限を与えない」「子どもとの距離感が掴めていない」といった親子関係の課題が挙げられています。例えば、ゲームのやりすぎで夜更かしや体調不良を招いて病院に訪れる子どものケースでは、親の “子どもと同じ目線に立つ姿勢” が原因の一つとされています。
親が子どもと同じ感覚で接しすぎ、注意や制止をしない、あるいは本来大人がコントロールすべき範囲の判断を子どもに委ねてしまうことは、健康管理や生活リズムの乱れ、さらには将来的な自己管理の能力の欠如にもつながります。
特に小学生から中学生にかけては、自我が芽生え、思考力も発達し始める大切な時期。ここで親があまりにも対等な距離をとりすぎると、子どもにとって「どこまでが許されるのか」「何が正しいのか」という判断基準があいまいになり、自己中心的な考え方や社会性の育ちに影響を及ぼす可能性があると医師は警鐘を鳴らしています。
親子関係は「信頼」と「規律」のバランスで
親子関係には愛情と信頼が不可欠ですが、それと同時にある程度の規律も必要です。親が単なる“フレンド”ではなく、“ガイド役”や“保護者”としての立場を明確に持つことが、子どもにとっては安心感にもつながります。
医師によれば、子どもは「叱られることで自分が愛されていない」とは感じません。むしろ、親が自分の行動に対して真剣に向き合い、注意や助言をしてくれることで「自分を見守ってくれている」と感じ、信頼を持つのです。
そのためには、親自身も適切な自己管理を行い、生活習慣の手本となることが求められます。子どもに「早く寝なさい」と言いつつ、親が夜更かしをしていては説得力がありません。育児においては、言葉よりも日々の行動そのものが最も強い教育手段となるのです。
家庭によって異なる正解
「親と子」というテーマにひとつの正解はありません。家庭環境や親の性格、子どもの気質により、適切な距離感や接し方は千差万別です。そこで重要なのは、「子どもにとって良い影響を与えているか」を常に客観的な視点で見直す姿勢です。
どうしても親としての判断が難しいときは、学校の先生や医師、カウンセラーなど第三者の意見を聞くことで、解決への糸口が見えることもあります。現代はSNSなどを通じて育児に関する情報が氾濫しており、周囲の家庭と自分の家庭を比べて不安になることもあるかもしれませんが、他人と比べることに意味はありません。大切なのは、目の前の自分の子どもをよく観察し、少しでもよりよい育児を目指していく志しです。
親子関係は変化するものである
また、多くの人が忘れがちなのが「親子関係は成長とともに変化していく」ということ。小さい頃は親がすべてを管理したとしても、子どもが大きくなれば自立を促す必要があります。一方で、あまり早くから“対等”になることを目指してしまえば、親としての役割が果たせない可能性も出てきます。
子どもは親の言動を敏感に感じ取り、そこから多くの価値観を学びます。適切なタイミングでの距離感や伝え方が、その後の子どもの人間関係や価値観形成の土台になるといっても過言ではありません。
まとめ：「友達親子」の理想と現実を見直そう
「友達親子」という関係は、親子の距離を縮め、深い信頼関係を築くうえでとても魅力的な考え方です。しかし、医師が指摘するように「親は親」であり、「友達でもありたい」という気持ちが行きすぎてしまえば、育児の役割を手放し、子どもに必要な指導や支援が届かなくなる恐れがあります。
親が子どもと楽しく関わることは大切ですが、時には厳しさや指導も必要。愛情と規律のバランスをとることで、子どもの心と身体の健やかな成長を支えることができます。
最後に、親子関係は完璧でなくて良いものです。大切なのは「試行錯誤しながら、より良い関係を築こうとし続けること」。それこそが、子どもにとって最大の愛情表現となるのではないでしょうか。
