2024年の通常国会は、まもなく会期末を迎える段階に入り、政府与党が重点法案として掲げてきた「年金制度改正関連法案」の提出が目前に迫っています。少子高齢化が進む日本において、年金制度の持続可能性は長年にわたり国民的な関心事でした。老後の生活を安心して送るためには、若年世代から高齢者世代まで幅広く納得のいく制度設計が求められます。
今回は、政府が国会終盤での成立を目指している年金法案の概要と、その背景にある課題、そして今後の展望について、分かりやすくお伝えします。
年金制度とは何か?
まず、年金制度について簡単に確認しておきましょう。日本の年金制度は、公的年金である「基礎年金(国民年金)」と「厚生年金保険」の2本立てとなっています。20歳以上60歳未満のすべての国民に加入義務がある基礎年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金が組み合わされて、老後の所得保障がなされています。
しかし、超高齢社会となった日本では、労働人口の減少や少子化の進行により、現行制度をこのまま維持するのは困難との試算も出されています。これに対応するために、制度の柔軟性と持続性を高める改革が求められてきました。
今回の年金法案の概要
2024年に提出が予定されている年金法案は、いくつかの重要な見直しを含んでいます。現時点で政府から発表されているポイントは次の通りです。
1. 被用者保険の適用拡大:
現在、厚生年金の適用対象は一定の条件を満たすパートタイム労働者などに限られていますが、今後はその対象をより一層拡大する方向で検討が進められています。これにより、多様な働き方をする人たちが将来にわたって年金を受け取れるよう準備し、老後の格差是正に向けた取り組みが期待されています。
2. 年金額の調整ルールの見直し:
いわゆる「マクロ経済スライド」と呼ばれる、物価や賃金の変動に応じて年金支給額を調整する仕組みに変更が加えられる可能性があります。これは、制度の持続性を高める反面、給付水準が下がることへの配慮も必要となるため、国民の理解を得ることが重要です。
3. 任意加入制度の柔軟化:
60歳以降も働き続ける人が増えている現状を踏まえ、任意加入できる年齢の上限の引き上げや、納付期間の柔軟化が検討されています。これにより、老後に向けた準備期間が延び、より安定した年金受給が可能になる見込みです。
改革が急がれる背景
今回の法改正の背景には、日本社会の急速な高齢化があります。総務省によれば、現在の高齢化率(65歳以上の人口割合)は29%を超え、今後も上昇傾向にあります。一方で、現役世代の働き手が減少しており、「現役世代で高齢者を支える」これまでの年金制度の根本構造が揺らぎつつあります。
また、非正規雇用の増加や、多様な就業形態の広がりにより、年金制度の恩恵を十分に受けられない人も少なくない状況です。「誰一人取り残さない」社会保障制度を目指すには、制度の見直しと共に、国民一人ひとりが安心して生活設計を立てられるような仕組みが必要です。
国会審議の行方
今回の法案は、政府与党が「最重要法案」と位置づけており、国会終盤の成立を目指しています。夏の国政選挙も視野に入りつつ、与野党の論戦が活発化していますが、今後の審議においては政党間の対立だけでなく、科学的なデータと生活実感に基づいた議論が求められるところです。
厚生労働省は、今後の年金制度改革にあたっては「安心・持続可能・わかりやすさ」の3本柱を重視した対応を掲げています。つまり、国民にとって将来を安心して託せる制度とすること、制度自体が財政的に持続可能であること、またその仕組みが理解しやすく、使いやすくあることが求められています。
国民の関心と参加がカギに
年金制度の改革は、すべての人に直接関わる重要なテーマです。特に若い世代にとっては、「自分たちは本当に年金をもらえるのか」という将来不安がつきまとっていると言われており、制度をいかに納得感のあるものにできるかが大きなカギを握ります。
そのためにも、今後の国会審議に対する国民の関心と参加が重要です。メディア報道に耳を傾けたり、政府発表を確認することはもちろん、自ら必要な情報を収集し、制度理解を深めていくことが求められます。
まとめ
2024年通常国会も終盤に入り、政府提出予定の「年金制度改正関連法案」が焦点の一つとして注目されています。被用者保険の拡大や支給額調整の見直しなど、将来を見据えた制度づくりは急務であり、国民一人ひとりの生活に深く関わるものです。
年金制度は「老後の生活の柱」です。だからこそ、今議論されている制度改正が自分にどのように関係するのか、未来にどんな影響を与えるのかを、自分ごととして捉える姿勢が不可欠です。
安心して歳を重ねられる社会のために——。これからの年金制度改革の動向に、引き続き注目していきましょう。