2024年6月、日本の政治に新たな転機が訪れた。旧ジャニーズ事務所(現:SMILE-UP.)をめぐる問題を深く追及してきた自民党の小泉進次郎衆院議員の発言が、政府内外で大きな波紋を呼んでいる。小泉議員は、今仕事のオファーを受けている「STARTO ENTERTAINMENT」のタレント起用について、疑問を呈した上で、政府や広告業界による説明責任や対応姿勢を正面から問いかけた。
この問題は一見、芸能界の話題に見えるかもしれないが、実際には日本の社会構造、政治とメディア、そして人権意識に深く根ざした課題を炙り出している。特に小泉進次郎という存在が発した問いには、政界の内部から改革を促す強い動機と覚悟が感じられ、その背景には彼自身の政治的歩みとビジョンが透けて見える。
小泉進次郎は1981年生まれ。2009年の衆議院選挙で初当選を果たして以来、「次世代のリーダー」として一貫して注目を浴びてきた。元首相・小泉純一郎を父に持ち、その洗練された話しぶりや明確な政策提言から、若き改革派として何度も脚光を浴びてきた人物だ。環境大臣を務めていた時期には、気候変動対策やプラスチックごみ問題に取り組み、持続可能な社会への方向性を打ち出したことでも知られる。
今回、小泉議員が焦点を当てているのは、旧ジャニーズ事務所による長年の性加害問題と、それに対する社会全体の対応、特に政府および大手広告代理店を含む産業界の姿勢だ。
旧ジャニーズ事務所では、創業者であるジャニー喜多川氏による数十年にわたる性加害が組織的に隠蔽されてきた疑惑が2023年以降、徐々に明らかになってきた。この過程で、メディアの沈黙や広告主の消極姿勢、政府の対応の鈍さが多くの批判を浴びた。小泉議員は、STARTO ENTERTAINMENTに所属するタレントが広告に起用される現在の状況を、「何が変わったのか分からない」と率直に述べ、再発防止と説明責任を重視すべきだと強調した。
この発言は、自由民主党が行った旧ジャニーズ問題に対する有志議連の活動の中でなされたものだ。同議連は、被害者への補償や芸能プロダクションのガバナンス強化、芸能界全体のコンプライアンス体制の透明化を求めて設立され、小泉議員の積極的な関与は、政界でも異色の存在として評価されている。
特に注目すべきは、小泉議員が「改革派」として体制の中からこの問題を訴え続けている点だ。これは、父である小泉純一郎元首相の「聖域なき構造改革」の精神を受け継ぎつつも、自らの言葉で社会課題に切り込む進次郎式の「新改革型」とも言える。旧態依然とした政治と経済、そしてメディアのネットワークに切り込み、過去の不透明な構造を改善する言動そのものが、次の時代のリーダー像を提示しているようだ。
さらに、小泉議員は「STARTO ENTERTAINMENTが旧体制からどれだけぶれていないのか。広告代理店も含めて何が変わったのか知りたい」と述べ、今後の展開次第では、政府として姿勢を示す必要があるとの考えを明確にした。政治家が芸能界の問題に口を出すことには慎重論もあるが、小泉議員はあくまで「公共の役割」としてのメディアや政府の責任にフォーカスしており、この視座の高さも彼の特徴だ。
もう一人、この議連内の声として注目されたのが、元文部科学副大臣の杉田水脈議員の「被害者の人生を壊し、社会に出られなくした責任を国が果たしていくべき」という主張だ。これに対しても、小泉議員は、人権と性被害の問題を「もっとヨーロッパ諸国と同様に重く受け止めるべきだ」と応じ、日本社会全体の価値観のアップデートを促した。
政治家として長年キャリアを積む中で、小泉議員がこうした発言を強調する背景には、「政治の再構築」という自らのビジョンに対する確固たる信念がある。彼にとって、この問題は自分の政治的基盤を再定義する試金石でもあるのだ。
事件として扱われている旧ジャニーズ問題はまだ解決の道半ばだが、この問題の本質は「透明性」と「説明責任」、そして「人権重視の社会」へ進むかどうかという、日本のあり方を問う重要な分岐点である。
小泉進次郎のように社会構造・政治・産業界の三位一体の“思考停止”を打ち破り、既存の枠組みを越えて物事の本質に迫る視点を持つ政治家は稀だ。彼の行動は、若い世代や政治不信を抱える有権者にとって、「政治が本当に社会を変える存在となれるのか」という希望の萌芽でもあるだろう。
小泉進次郎が示すように、政界はまだまだ変革を遂げる可能性を秘めている。そして、その先には、子どもたちが安心して夢を語り、失敗を恐れず自己実現ができる社会が待っていると、彼は信じている――。
この一連の動きに対して、今後政府と広告業界、また芸能事務所がどう向き合うのか。その一挙手一投足から、日本社会の“真の成熟”が問われている。