北海道の人気リゾート地「ニセコ」に広がる不安の影——「バブル崩壊」の足音が聞こえているという声が、近年増えてきました。ニセコといえば、雪質の良さや四季折々の自然の美しさが海外でも評価され、ここ10年ほどで一大リゾート地として成長を遂げてきました。しかし、地元住民や専門家の間では、「ニセコバブル」が終焉を迎えるのではないかとの懸念が広がっています。
なぜ「ニセコバブル」と呼ばれる現象が起き、そして今、そのバブルが弾けるかもしれないと騒がれているのでしょうか。その背景と、地域に与える影響についてもう少し詳しく見ていきましょう。
ニセコバブルとは何か?
「ニセコバブル」とは、主に2000年代中頃から加速したニセコ地域への海外からの不動産投資が引き起こした急激な経済成長のことを指します。オーストラリアや香港、シンガポールなどからの富裕層がニセコの土地や物件を買い占め、高級リゾート施設やコンドミニアムが次々と建設されました。一部報道では、わずか数年で不動産価格が数倍になるケースもあったとも伝えられています。
その要因としては、世界に誇るパウダースノーと豊かな自然、そして整備されたインフラや観光施設などが挙げられます。また、海外富裕層にとっての「隠れた楽園」としての地位が確立され、冬季には多くの外国人観光客が訪れるようになりました。
なぜ崩壊の前兆といわれるのか?
しかし、その急成長には陰りが見え始めています。まず、最大の特徴であった外国人観光客が、世界的なパンデミックの影響で激減しました。もちろん、現在はある程度回復傾向にはあるものの、以前の勢いまでは戻っていないのが現実です。
さらに、大型開発計画が次々と進行していた中で、需要と供給のバランスが崩れ始めているとも言われています。リゾート用の高級コンドミニアムやホテルが相次いで完成しており、一部では空室率が高く、購入希望者の減少も指摘されています。
加えて、建設コストや物価の上昇といった外的要因も、事業の採算性を圧迫しています。実際、ニセコエリアで計画されていた大型ホテルの建設プロジェクトが中止されるなどの事例も出てきており、「あれほど活況だった開発ラッシュが止まっている」と感じる地元住民も少なくありません。
地元の声とその影響
今回の動きを巡り、地元住民や自治体関係者からは様々な声が上がっています。「一時は地価が跳ね上がって、町全体が潤ったのは事実。でも今は、外国人客の数も戻らず、空き家や空き施設が目立ってきている」と話すのは、ニセコ町内でペンションを経営する男性です。
また、住宅価格の高騰により、地元住民が住居を確保することが難しくなっているという問題も顕在化しています。若い世代の定住が進まず、町としての持続可能性にも不安が膨らんでいます。近年、観光振興だけでなく、地域の暮らしを支えるための施策が求められるようになっています。
ニセコの今後と向き合うべき課題
ニセコが直面する課題は、単なるバブルの崩壊にとどまりません。グローバル化に翻弄されたリゾート地の縮図とも言える現象であり、観光依存型の地域経済が持つリスクと、持続性の両立という視点が問われています。
そうした中、自治体や民間企業では、自然資源を生かしたサステナブルな観光開発や、「ローカルファースト」の考えに基づく地域再生の取り組みも始まっています。食や文化、地域住民とのふれあいといった「体験型観光」への転換も模索されており、土地開発プラスαの「価値創出」こそが次のニセコを支えるカギになるかもしれません。
また、海外資本ばかりでなく、国内投資や地域住民による主体的なまちづくりをどう進めていくか、新たな観光モデルが問われています。
まとめ:本当にバブルが崩壊するのか?
現時点で「ニセコバブル」が完全に崩壊したと言い切るには早計ですが、勢いを失ってきていることは否めません。グローバルな経済情勢や円安・円高といった為替変動、観光需要の動向を注視する必要があります。
しかし、危機は新たな成長のタネでもあります。ニセコがこれから先、どんな方向性で地域づくりを進めるか、そこに本当の意味での「持続可能なリゾート」のヒントが隠されているように思います。
地元住民、観光業者、投資家、そして行政が一体となって、短期的な利益追求ではなく、長期的な視野での地域戦略が求められているのです。ニセコが再び輝きを取り戻すために、今こそ足元を見直す時期なのかもしれません。