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「こども支援NISA構想が浮上──未来世代への“投資”という新しい支援のかたち」

「こども支援NISA」新制度案浮上——将来世代のための資産形成支援の可能性とは

2024年4月、政府・与党内に新たな資産形成支援策「こども支援NISA」(仮称)の構想が浮上し、注目を集めています。この新制度は、既に多くの国民に浸透しつつある少額投資非課税制度「NISA」をモデルとしながらも、対象を「こども」に絞り、将来世代の資産形成を早い段階から応援するという新しい試みです。

発端は、こども家庭庁が2023年12月に公表した「こども未来戦略」推進方針の一環で、20兆円規模の「こども未来戦略基金」の創設構想に続く、具体的な支援策のひとつとして提示されました。解決が急がれる少子化問題や将来的な教育・生活コストの増大を見据え、いま何ができるか。政府関係者や専門家、そして多くの保護者から注目されているこの「こども支援NISA」の仕組みと、その背景にある狙い、そして今後の課題について、わかりやすく解説します。

こども支援NISAの概要と狙い

2024年からは既存のNISA制度が大幅に拡充・新制度としてリニューアルされましたが、「こども支援NISA」はその枠組みとは別に、新たな制度として創設が検討されています。構想段階ではあるものの、子育て世帯がこどもの将来の教育資金や生活資金を備えられるよう、投資による資産形成を後押しする目的で設計される見込みです。

現段階では、具体的な制度枠組みや非課税枠の規模、利用可能な年齢や投資対象などは示されていませんが、官邸サイドや与党内では、「児童手当」や「教育国債」と並ぶ選択肢として、こどもの資産形成にもつながる形で支援を行いたい意向がうかがえます。子育てに関わる費用を“投資”という視点からも支えることで、親世代の負担軽減はもちろん、こども自身の金融リテラシー向上にも貢献する制度になり得ます。

資産形成を通じた「未来への投資」

最近では「人生100年時代」ともいわれ、将来的な生活設計を早い段階から始めることの重要性が高まっています。とりわけ住宅・教育・老後などのライフイベントにかかるお金をどう準備していくかは多くの国民にとっての関心事です。特に子育て世代においては、保育費、学費、塾代といった教育費は長期間にわたり家計に重くのしかかります。

「こども支援NISA」は、そうした教育費や独立のための資金を“積み立てと運用”というスタンスで支援しようという意図があり、純粋な支給型の「児童手当」とは異なるアプローチをとっています。加えて、投資信託などを用いることで複利効果が見込め、長期・積立・分散を基本とする運用が教育資金という特殊な用途にも適した形となることが期待されます。

また、こどもの名義で口座を作り、保護者が代理で資金を拠出・運用することで、こども自身が成長するにつれてお金について学び、経済の仕組みに触れる良い機会ともなり得ます。これは金融教育の側面でも、非常に大きな可能性を秘めた制度といえるでしょう。

他国の事例:ジュニアISAとの違いは?

かつて日本にも「ジュニアNISA」という制度が存在しました。これは未成年者(0〜19歳)を対象にしたNISA制度で、保護者が代理で口座管理・運用を行い、年間80万円までの投資に対して非課税という特徴がありました。しかし利用者は限定的で、2023年末をもって新規開設は終了しています。

今回検討されている「こども支援NISA」は、このジュニアNISAを発展的に見直した制度ともいえそうですが、決定的な違いは“政府側の拠出”が検討されている点です。現行のNISAは原則として利用者自身が資金を出し、運用を行うものですが、こども支援NISAにおいては、「国が基礎的な額を拠出する案」も含めて議論されています。

たとえば、こども手当に上乗せするかたちで一定額が子のNISA口座に自動で積み立てられ、18歳になる頃にはある程度の資産が形成されている状態を目指すといった構想もあります。これは子育て格差の是正にもつながりうる取り組みであり、特に所得の少ない家庭の支援としても期待されています。

制度化に向けた課題や懸念点

ただし制度化に向けては、さまざまな課題も浮かび上がっています。まずは制度設計の細部をどのように詰めるかという点です。拠出額の水準や資産の引き出し時期・目的、投資対象商品の範囲など、制度の公平性と柔軟性をどのように両立させるかが鍵となります。

また、運用リスクの説明や管理責任の所在など、未成年に関わる資産運用であるがゆえの慎重な制度設計が求められます。こどもの将来のために「投資」という選択肢を用いる以上、できる限り安全で信頼性の高い仕組みであることが求められます。

さらにこの制度が本格的に運用されるためには、利用者側の理解と金融リテラシーの向上も不可欠です。制度そのものの啓発活動とともに、学校における金融教育との連携など、長期的視点での国民全体への金融知識の普及が問われることになるでしょう。

「こどもを社会全体で育てる」発想を制度へと

今回の構想は、単なる一制度の創設ではなく、「こどもは社会全体で育てる」「こどもの未来は国家の未来である」という理念に基づく取り組みでもあります。少子化が加速する中で、安心して子どもを育てられる社会の実現が強く求められており、その中での持続可能な仕組みとして「こども支援NISA」は注目されているのです。

もちろんこの制度ひとつで少子化を解決することはできません。しかし、国が将来世代のために資産形成と支援を本気で考える姿勢を示すことで、多くの家庭が前向きに子どもの未来と向き合えるようになるかもしれません。

今後、政府と与党内での議論が進み、制度の具体化と予算措置がなされるかどうか。実現すれば、こどもの未来に新たな「投資」の選択肢が加わることになります。この記事を通じて、読者の皆様にもこの「こども支援NISA」について関心を持っていただき、自身や家族の将来設計に活かすヒントとしていただければと思います。

こどもたちの未来のためにいま何ができるか——制度の行く末とともに、社会全体で考えていく必要があるテーマです。