新型コロナウイルス感染症が世界中を襲ってから数年が経ちましたが、その影響はいまだに終わっていません。感染拡大防止のための日々の対策やワクチンの普及はもちろん、社会全体の生活や価値観に大きな変化をもたらしました。しかし、新型コロナウイルスの脅威は感染したときだけにとどまらないという現実があります。多くの人がウイルスの感染から回復したと思われた後も、体や心に深刻な影響を残す「コロナ後遺症」に悩まされています。
2024年5月、Yahoo!ニュースに掲載された『忘れないで コロナ後遺症闘う19歳』というタイトルの記事では、一人の若者の壮絶な闘いが紹介されました。19歳という人生のスタートを切ったばかりの少女が、新型コロナウイルス感染後に発症した後遺症と向き合い、その苦しみと希望を静かに語っています。今回は、その記事を元に、コロナ後遺症という目に見えにくい苦しみと、それに向き合う若者の姿に焦点を当て、私たちが何を感じ、何を理解し、どう寄り添えるかを考えてみたいと思います。
■見えない苦しみ、「コロナ後遺症」と闘う日々
記事の主人公である19歳の女性は、高校生の頃に新型コロナウイルスに感染しました。一時的な症状の後、回復したと思われた彼女には、その後も様々な体の不調が襲いかかります。頭痛、倦怠感、めまい、思考力の低下、心拍数の異常——彼女が訴える症状のひとつひとつは、医療的には正確に測れない「不定愁訴」と呼ばれるものが多く、明確な治療法が確立されていないことが特徴です。
そして何よりも辛いのは、「見た目にわからない」ことです。外から見れば元気に見えるため、周囲の理解を得にくく、「気のせいじゃないの」「若いんだからすぐ治るよ」といった軽視的な言葉に心を痛めることも少なくありません。それでも彼女は、自分の苦しみを知ってもらうことで少しでも同じ境遇や症状に苦しむ他の人に希望を与えたいと考え、メディアを通じて発信することを決意します。
■「普通の生活」に戻れないもどかしさ
新型コロナ感染前、彼女は多くの若者と同じように進学の夢や部活動、友人との時間を楽しんでいました。しかし、感染後は通学すらままならず、将来への希望が見えなくなるほどの日々が続きます。自律神経のバランスが崩れ、少し動いただけで息切れがしたり、頭が真っ白になってしまう——そんな症状は、学生生活や友人との時間を大きく制限していきました。
特に辛いのは、「自分だけが取り残されていく」という感覚です。周囲の友人たちが進学し、就職し、夢を叶えていく中で、自分だけが過去のまま立ち止まっているように感じてしまう。これは若者にとって想像以上のストレスであり、精神的にも追いつめられやすい状況です。
■「声を上げる」ことの大切さ
記事の中で、彼女は「誰かに知ってほしい」「ひとりじゃないと感じてほしい」と語っています。現在、SNSなどではコロナ後遺症に苦しむ人々が、互いに症状を語り合い、情報交換をする場が少しずつ増えてきました。このような「つながり」は、これまで孤独だった患者たちにとって非常に大きな心の支えになります。
また、後遺症という医学的にもまだ研究が進んでいない現象について、実際に体験した人の「生の声」は、今後の研究や政策において非常に貴重な情報となります。私たちがその声に耳を傾け、偏見や無理解ではなく共感と支援の気持ちを持つことが、社会全体の認識やサポート体制の改善にもつながるのです。
■後遺症に苦しむ人々への理解と配慮を
コロナ後遺症は、誰にとっても「他人事」ではありません。感染の重症度に関わらず、後遺症が出る場合があるという事実が、現在では多くの医療機関からも報告されています。若者だから大丈夫、元気そうだから平気——そういったイメージは、当事者たちの苦しみに無自覚な圧力を与えてしまうこともあります。
今、必要なのは、「見えない障害」に対する社会的な理解と、具体的なサポート体制です。学校や職場では柔軟な対応が求められ、医療現場では後遺症に対応できる専門体制の整備も進められていくことが望まれます。そして何より、私たち一人ひとりが隣にいる誰かの「声にならない声」に気づき、理解と共感をもって接することが大切です。
■希望を持って前へ——19歳の彼女の未来
この記事の最後には、彼女が少しずつ社会との関わりを取り戻しつつある様子も伝えられています。まだ日常とは言えないかもしれませんが、支援者や家族、同じ境遇にいる仲間とのつながりを通じて、新しい「生き方」を見出そうとしている姿に、深い感銘を受けました。
病気や障がいと闘う時、人は他人の理解や支えがあって、はじめて未来への一歩を踏み出せるのだと思います。私たちはその背中を押す存在になれるかもしれないし、同じように背中を押してもらう日がくるかもしれません。
「忘れないで コロナ後遺症闘う19歳」というタイトルは、私たちへの問いかけでもあります。忘れてはいけない、いまこの瞬間も闘っている人がいるということを。そして、自分自身や大切な人が同じ状況に置かれても「理解ある社会」であってほしいと強く願います。
新型コロナの流行そのものが落ち着きつつある今だからこそ、私たちはこの病気がもたらした「後」の問題についても真剣に向き合うべき時かもしれません。彼女のような若者の声が、希望として多くの人に届くことを願ってやみません。