近年、企業における働き方改革はますます加速しており、「無断欠勤OK」「出社義務なし」「残業厳禁」「評価は自己申告」という極めてユニークな働き方を導入して成果を上げている企業が注目を集めています。2024年6月に報じられたYahoo!ニュースの記事「無断欠勤OK 効率上がり利益増」は、こうした革新的な制度が必ずしも組織の秩序を乱すものではなく、むしろ社員のモチベーションとパフォーマンスの向上につながり、企業の利益にも貢献することを明らかにしています。
この記事では、実際に制度を導入した企業での実例や、施策が社員や会社にもたらした影響について具体的に紹介されています。従来の常識を打ち破る「無断欠勤OK」の制度は、どのようにして成立し、なぜうまく機能しているのでしょうか。本記事では、この革新的な働き方を取り入れた企業の背景や制度の詳細、そしてそれが生んだ驚くべき効果についてご紹介します。
働き方の常識を打ち破る「無断欠勤OK」
一般的に、日本の企業では「無断欠勤」は社会人としての責任を果たしていないと見なされ、厳しい処分の対象となることが多いです。しかし、東京都目黒区に本社を置くIT系企業「瓦（かわら）」では、なんと「無断欠勤」すらも許容される社内制度を設けています。
この企業では、社員が理由を問わず休んでも、事前連絡がなくても問題にされず、給与や査定に影響が出ることは基本的にありません。その意図について、同社の加藤健太社長は「一人ひとりが自由に働ける環境こそが、本当に仕事がはかどる環境だ」と語っています。さらに「社員は全員が信頼関係のもとに動いているため、いちいち連絡しなくても業務が進む」といった理念も持って運用されています。
もちろん、こうした制度の導入には、会社と社員の間に強い信頼関係と自己管理意識が必要です。しかし、権利と責任がしっかりセットになって制度が機能すれば、個人の裁量に任せた働き方が可能となり、むしろ生産性が向上するという好循環が生まれます。
出社義務もなし、完全リモートでもOK
この企業では、出社義務もなく、基本的にリモートワークを主軸としています。社員は自宅やカフェ、旅先からでも業務を行っており、誰がどこで仕事をしているかはほとんど把握できない状況とのことです。
それでも業務は滞らず、むしろ売上や利益は右肩上がりに成長を続けています。記事によると、この制度導入からわずか2年間で、売り上げは2.5倍、利益は4倍に跳ね上がったそうです。
この成果からも分かる通り、「働き方＝出社時間や勤務時間を厳密に管理するもの」という従来の固定観念が必ずしも正解とは限らないことがわかります。個人が一番能力を発揮できる場所とタイミングで働くことで、組織全体の力が底上げされているといえるでしょう。
自己申告型の評価制度でモチベーションアップ
さらにユニークなのは、社員の評価制度です。「瓦」では、評価は自己申告制を採用しています。社員が自らのパフォーマンスを測り、自ら次年度の給与を申告するという仕組みです。運営側はそれを基に査定を検討します。
社員が「自分の給料はこれだけもらうにふさわしい」と主張することには当然責任が伴います。そのため「その金額に見合うだけの仕事をしよう」という意識が自然と働き、働きぶりが前向きな方向に進むとのこと。
通常の評価制度では上司が査定を行うため、個人の努力が正しく評価されないケースやモチベーション低下の要因になることも少なくありません。これに対して自己申告制は、社員が自分の成果を見つめ直し、次の成長に繋げる絶好の機会ともなります。
残業なし、でも成果はしっかり
また、同社では「残業は原則禁止」というポリシーも特徴的です。仕事とは「定時内で終わらせてこそプロ」だという考え方に立ち、残業を前提に業務を組むことはありません。
そのため、「仕事は時間ではなく成果で評価される」という意識が全社に根づいています。いわば、効率重視のマネジメントスタイルです。それが企業全体の生産性を高めることに直結しているといえるでしょう。
こうしたスタイルは、無駄な会議や細かな業務フローを見直す契機にもなり、結果として社員自身の時間やエネルギーが節約され、プライベートの充実に繋がっています。
制度導入の背景：過去の経験と試行錯誤
社長の加藤氏がこうした制度を導入するに至った背景には、自身のかつての経験が深く関わっています。起業前は会社員として働く中で「なぜこんなに非効率なのか」「人に合わせる働き方ではなく、自分のペースで成果を出すにはどうすればよいのか」といった疑問を抱き続けたといいます。
その反動もあり、起業後は「社員一人ひとりが主役になれる職場」を目指して社内制度をゼロから構築しました。もちろん、試行錯誤も多く、最初から全てがうまくいったわけではありませんが、「信じて任せる」ことが社員に伝わったことで、責任感と誇りを持って業務に取り組む企業文化が根付いたとのことです。
結果として、社員離れが進みがちなこの業界においても、定着率が非常に高く、雰囲気も良好。離職率の低さが企業の信頼度や競争力にも繋がっているといえます。
「働き方」の多様性が未来を切り開く
「無断欠勤OK」「出社義務なし」「評価は自己申告」「残業禁止」。これらは一見すると、組織として統制がとれないのではと心配されがちな要素です。しかし、実際には多くの社員がこの環境を信頼し、自律的に行動し、高い成果を上げています。つまり、個人を尊重し、裁量を与えることで企業文化自体がポジティブなものへと転換されているのです。
このように、従来の日本的な働き方とは真逆とも言える働き方が、実際に機能し、成果を出している好例が存在することで、他の企業にも働き方の多様性を再考するきっかけとなるのではないでしょうか。
もちろんこの制度が全ての業種に適応できるわけではありません。しかし、働く環境に選択肢を与えること、自由をベースにした信頼関係の上に企業を運営していくことは、どんな業界にも応用できるヒントがあるように思われます。
これからの時代、私たちは「働くとは何か」という根本的な問いに正面から向き合いながら、新しい制度や価値観を受け入れ、より良い社会の構築を目指していくべきではないでしょうか。個人が自由に、そして誇りを持って働ける社会が実現できるよう、小さなチャレンジが積み重なっていくことを期待したいと思います。
