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中居正広、「金スマ」卒業へ――国民的司会者が歩む新たな人生のステージ

日本のエンターテインメント業界には、いつの時代もその存在で強い輝きを放つ人物たちがいる。中でも、俳優・タレントとして長年にわたり第一線で活躍し続けてきた中居正広は、その中心に君臨する一人である。彼は国民的グループ「SMAP」の中心メンバーとしてだけでなく、ソロタレントとしてもテレビ・ラジオを席巻し、幾多の司会業でも独自の存在感を発揮してきた。

その中居正広が、自身の体調と向き合い、ついに長年続けてきた生放送の看板番組「中居正広の金スマ(正式には『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』)」のMCから今月限りで降板することを発表した。ニュースは多くのファンと関係者に衝撃をもって受け止められ、改めて彼のこれまでの歩みと、これからの人生に思いを馳せるきっかけとなっている。

1972年、神奈川県藤沢市に生まれた中居正広は、少年時代からジャニーズに憧れ、1986年に14歳でジャニーズ事務所に入所した。芸能界デビュー後、1988年に「SMAP」としての活動を開始し、慎吾ママこと香取慎吾、稲垣吾郎、草彅剛、木村拓哉らとともに日本中のテレビ界を席巻する存在となった。

SMAPは、アイドルの枠を超えて、バラエティ・映画・ドラマ・音楽と多方面で活躍する「マルチタレントグループ」のさきがけでもあり、国民的グループとしてその名を刻んだ。そして、中居はMCとしての才能を爆発的に開花させた。独特の間の取り方、冷静かつ鋭いツッコミ、そして相手に配慮した進行スタイルーその全てが多くの視聴者に支持され、たちまちお茶の間の“信頼の司会者”としての地位を築いていった。

中でも「中居正広の金スマ」は、2001年から続く長寿番組であり、中居のキャリアにおいても重要な転機となった番組である。さまざまな人生のドラマや社会問題を背景に、芸能人や一般人の“再生”や“挑戦”に焦点をあてるこの番組は、彼の人間味ある進行と語り口によって、多くの人の共感を呼んできた。時にはユーモアを交え、時には共演者の心にそっと寄り添い、時には自らの感情を素直に見せる中居の姿は、まさに”国民のナビゲーター”のような存在だった。

そんな彼が、2022年に体調不良を理由に一時的に活動を休止したとき、多くのファンが驚きと共に心配の声を上げた。その後の報道で自身が体調と真摯に向き合いながら仕事を続けていたことが明らかになると、逆に彼への尊敬と感謝の声がさらに広まった。大病を公表せず、淡々と治療に励み復帰を果たした彼の姿勢には、多くの人が胸を打たれたのである。

今回の「金スマ」降板の理由も、まさにその「体調への配慮」と「今後の生活をより大切に考える」ためであることが明らかにされている。番組内で中居は「こういうことをお話しするのは本当に勇気がいるけど、正直に言うとやっぱりずっと体のことが気にかかっていた」と語った。決して”引退”ではなく、自らのペースで活動の質を保つための英断―それが今回の決断に他ならない。

番組は、6月いっぱいで中居が卒業した後も継続されることが決定しており、後任には現在のレギュラーである安住紳一郎アナウンサーが引き継ぐ方針だという。安住アナもまた、視聴者からの信頼厚い名司会者の一人であり、長年中居とコンビを組んできた実績があるため、番組の形も穏やかにシフトしながら継続されることになるとみられている。

中居自身は、今後について「自分のペースで無理なく活動を続けていくつもり」と語っている。大病を患ったこと、そして年齢とともに変化する体調や暮らしにリアルに向き合い、自らの「働き方改革」ともいえる選択をした中居。20代、30代のように全力で走り抜けるのではなく、50代にさしかかる彼が、自分自身を大切にしながら新たなステージへと進んでいく姿は、多くの同世代、さらには次世代の働く人々にとっても一つの指針となるだろう。

一方で、彼が今後手がけたいと明かしているのが「エンタメの裏方」としての仕事であるという。すでに株式会社のんびりなかい(彼の個人事務所)を立ち上げており、若手の育成や番組制作にも関心を寄せている様子が伺える。表舞台から一歩離れたところから、次世代のタレントやコンテンツを支えていくーそんな姿もまた、中居らしい“職人芸”の延長なのかもしれない。

国民的アイドルから、卓越したMCへ、そして“人生を語る人”へ。中居正広は、栄光のキャリアを重ねながらも、相手への思いやりと自分自身への誠実さを忘れない。不必要に華美な言葉や感情を煽るのではなく、現実を受けとめ、ファンに丁寧に向き合う姿勢。それは、模範であると同時に、芸能界や大衆文化の中で稀有な存在でもある。

「金スマ」のスタジオを去ったあとも、中居正広は決して終わらない。彼の物語は、新たなページへ進み続けていく。そして多くのファンは、どんな形であれ、その歩みを見守り、応援していくに違いない。これからの中居正広に、さらなるエールを送るとともに、「お疲れさまでした」と心からの拍手を贈りたい。