近年、「じいじ」「ばあば」という呼び方が家庭内で定着し始めています。かつては「おじいちゃん」「おばあちゃん」という呼称が一般的でしたが、今やテレビや絵本、さらには育児雑誌などでも「じいじ」「ばあば」が推奨されるケースが増え、親しまれた呼び名として広く受け入れられつつあります。本記事では、この呼び方がなぜ普及したのか、その背景や世代間での受け止め方、そして家族関係における呼称の持つ意味など、さまざまな角度から「じいじ・ばあば呼び」について考察します。
「じいじ・ばあば」普及の背景
「じいじ」「ばあば」といった呼び名が注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。第一に、言葉のやさしさと発音のしやすさが挙げられます。幼い子どもが舌足らずでも言いやすいこの呼称は、自然と家庭で使われるようになり、次第に定着していきました。
加えて、テレビ番組や絵本の影響も大きいでしょう。NHKの子ども向け番組でも「じいじ」「ばあば」という呼び方が頻繁に登場し、視聴者の間でも親しみを持って使われるようになりました。また、インターネット上の育児ブログやSNSでも、子育て中の親たちが「じいじ」「ばあば」と表現することが多く、世間への浸透が一層進んだようです。
ライフスタイルの変化と世代の意識
さらに近年のライフスタイルと価値観の変化も、この呼称の普及に寄与しています。かつての「おじいちゃん」「おばあちゃん」といえば、年齢的にも外見的にも高齢者をイメージさせるものでした。しかし近年、祖父母になっても現役で働いていたり、趣味に打ち込んでいたりと、年齢を感じさせないアクティブな層が増えています。
このような背景のもとで、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれることに抵抗を感じる祖父母世代が増えていることも事実です。一方で「じいじ」「ばあば」は、かわいらしくカジュアルな印象を持たせる呼び名であり、若々しさを保ちたいという気持ちとも折り合いがつけやすくなっています。
また、少子化が進む中で、祖父母と孫の関係性がより密接になっている点も重要です。共働きの家庭が増え、祖父母による育児協力の機会が格段に増えた現代では、子どもにとって祖父母が非常に身近な存在となっています。頻繁に顔を合わせる中で、堅苦しい呼び方よりも愛着が湧き、距離感の近さを感じられる「じいじ」「ばあば」という呼び方が自然と増えていったのでしょう。
受け入れ方は人それぞれ
一方で、「じいじ」「ばあば」という呼び方に対しては賛否両論あるのも事実です。特に高齢者施設などで業務上の呼称として用いられるケースでは、「幼稚に感じる」「子ども扱いされているようで抵抗がある」といった意見もあります。呼称はあくまで個人の価値観に根ざすものであり、万人に共通する正解があるわけではありません。
例えば、「じいじ・ばあば」が家庭内の愛称として好まれる一方で、公共の場では正式な呼称である「祖父」「祖母」あるいは「おじいちゃん」「おばあちゃん」が望まれることもあります。このように、呼び名にはTPO(時・場所・場合)に応じた使い分けが求められると言えるでしょう。
また、祖父母世代の中にも「もっと別の呼び方があってもいいのでは?」と考える人も出てきており、「グランマ」「グランパ」といった欧米風の呼称を用いる家庭もあるようです。自分たちらしい呼ばれ方を自ら選ぶという、自立した世代ならではのこだわりが、ここにも表れているのです。
呼び名がもたらす温かいつながり
呼び方ひとつで、家族の関係性がより親密になるというのは興味深いことです。かわいらしい語感を持つ「じいじ」「ばあば」は、孫と祖父母の距離をぐっと近づけ、愛情をより感じられる効果があります。子どもが懐くことで祖父母の育児参加も進み、家庭全体に温かな雰囲気が生まれることも期待できます。
一方で、呼び名がもたらす影響には配慮も必要です。育児や介護といったシーンでは、対等な人間としての尊重が大切です。呼び名が関係性に干渉してしまわないよう、相手の気持ちに寄り添いながらより良い呼称を選んでいくべきでしょう。
最後に
「じいじ」「ばあば」という呼び方は、今の時代の家族関係を映し出す象徴でもあります。やさしさと親しみを込めたこの呼称は、世代を超えて愛されつつありますが、その一方で多様な価値観が存在することを私たちは忘れてはなりません。呼び名の選択は、単なる言葉の問題ではなく、人と人との関係を築く第一歩です。
家族のかたちは一つではありません。だからこそ、言葉にも多様性があってよいと思います。誰もが気持ちよく呼び、呼ばれることができるよう、互いの思いに耳を傾けながら、時には話し合い、納得のいく呼び方を見つけていけたら素敵ですね。
「じいじ」「ばあば」と呼ばれて、つい頬が緩む——そんな光景が、これからもたくさんの家庭で見られることを願ってやみません。