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世界はまだ笑ってる──ピコ太郎が海外で愛され続ける本当の理由

「ピコ太郎」海外で人気が持続する理由とは? 〜“PPAP”誕生から数年後のいま〜

2016年、突如として世界中を席巻した一つの動画がありました。それが「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」です。たった1分にも満たないこの動画は、日本のお笑い芸人・古坂大魔王が扮するキャラクター「ピコ太郎」によって投稿され、音楽や言葉の壁を超えて瞬く間にバイラルヒットとなりました。そして2024年の今、「あのブームは一過性だったのでは?」と思う人が少なくない中で、実はピコ太郎は海外で依然として人気を保ち続けています。

なぜピコ太郎は海外で根強い人気を誇っているのでしょうか? この記事ではその理由を紐解きながら、彼が築いてきた国境を越えた笑いの力に迫ります。

■ ピコ太郎ブームの原点:「PPAP」の衝撃

まずは、「PPAP」がいかにして世界中に広まったのかを整理してみましょう。

2016年9月、古坂大魔王がYouTubeに投稿した動画「PPAP」は、SNSを通じて爆発的に拡散されました。サビの「I have a pen, I have an apple」から「Apple pen」という奇妙ながら耳に残るフレーズは、言語の壁を越えて広がり、アメリカの人気番組「The Tonight Show」のホスト、ジミー・ファロンも絶賛するなど、海外メディアでも度々取り上げられました。

YouTubeの力だけでなく、SNSのリツイートやシェア、さらには世界中の子どもたちがダンスを真似するなど、その広がり方はSNS時代ならでは。UNESCOの国際教育イベントにも招かれるなど、社会的にもインパクトを持つ存在となりました。

■ 海外での評価:子ども向けエンタメとしての地位

ピコ太郎の人気が海外で持続している大きな理由の一つに、「子ども向けエンターテイメントとして認識されていること」が挙げられます。

例えば、ドイツやインドネシアなどでは、学校やイベントでピコ太郎の楽曲を取り入れるケースもありました。彼のコンテンツは音楽的にはとてもシンプルで、リズミカルながらもキャッチー。そして何よりも難解な言葉を用いず「聞いてすぐ真似できる」ことが世界中の子どもたちから親しまれる要因です。

また、「ピコ太郎」というキャラクターそのものが陽気で親しみやすいため、大人も子どもも安心して楽しむことができる点もポイントです。日本では「一発屋」という印象が先行することもありますが、海外では「純粋に面白い」「覚えやすい」「踊りやすい」という軸で評価されているのです。

■ 外務省とのコラボなど、国を超えた文化交流の担い手に

ピコ太郎の活動は、単なるバラエティタレントの枠を超えています。

2020年には新型コロナウイルス感染拡大の中で「PPAP」の手洗いバージョン「PPAP-2020」を公開。これは手洗いの啓発動画として世界保健機関(WHO)のサイトでも紹介され、国際的に高い評価を受けました。

また日本政府の外務省とも連携して、「ポップカルチャーを通じた外交の親善大使」としての役割も果たしています。日本文化、とくにJポップやアニメだけにとどまらない形で、日本の「ユーモア」や「人情味」を海外に届ける一助となっているのです。

これらの活動は、一過性の流行とは異なり、文化的な価値を積み重ねる形で世界中の人々の記憶に残るものとなっています。

■ タレント性と戦略の融合:古坂大魔王の巧みなプロデュース力

ピコ太郎といえば、その奇抜な衣装から独特な動きまでが印象的ですが、それらすべては古坂大魔王の企画力に支えられています。彼は芸人としてだけでなく、ミュージシャン・プロデューサーとしての経歴もあり、自身のコンテンツをどう見せれば海外でウケるのかを熟知しています。

日本のお笑い文化は、独特な言葉遊びや空気感に依存することが多いため、海外展開が難しいジャンルとされています。しかしピコ太郎の場合は、言語依存を排除し、ビートに乗ったシンプルなフレーズとユニークな世界観で突き抜けました。その結果、海外でも理解されやすく、模倣もしやすい形になっています。

加えて、SNSを中心とした発信を欠かさず、常に時代の流れを取り入れつつ自分のスタイルを維持する姿勢も、長く注目され続ける理由の一つと言えるでしょう。

■ 文化をつなぐ“笑い”の力

ピコ太郎の活躍に共通するのは、“笑い”を通じて人々の心をつなげていることです。国や言語、宗教や文化が違っていても、人は楽しいことに笑い、それをシェアするという共通の価値観を持っています。ピコ太郎は、そのシンプルな曲調と愉快な表現で、まさにその“共通点”を引き出しているのです。

例えば、世界中でPPAPを模倣した動画が投稿された現象は、まさに「共感」の証であり、「自分もやってみたい」と思わせる力がありました。それは、笑いを通じて心のハードルを下げ、距離を縮めている証拠でもあります。

■ まとめ:ピコ太郎はただの一発屋ではなかった

「PPAP」というたった1分弱の動画から始まったピコ太郎の物語ですが、そこには古坂大魔王という表現者の戦略と情熱が詰まっています。そして今でもピコ太郎が海外で愛されている理由は、その多国籍で包括的な魅力にあると言えるでしょう。

もちろん、日本国内では「一発屋」という見方をされることもあるかもしれません。しかし、視点をグローバルに広げてみれば、彼は今も現役で世界を笑顔にしているエンターテイナーです。日本発のオリジナルキャラクターが、どのようにして世界で根付き、文化交流のきっかけとなったのか。それは、私たちが創造する可能性に対する一つの答えを示しているのかもしれません。

ピコ太郎のように「笑い」や「ユニークさ」で世界へ挑戦する存在が、これからも多く生まれてくることを願いながら、私たちもその魅力を再発見し、応援していきたいものです。