近年、10代の若年層による脱毛施術の需要が急増しています。美容業界におけるトレンドの変化やSNSなどの影響も後押しし、脱毛はもはや大人だけのものではなくなってきました。今回の記事では、「10代の脱毛が増加 背景とリスク」をテーマに、その背景や要因、考慮すべきリスク、そして親世代や社会全体がどう対応すべきかについて、分かりやすく解説していきます。
■ 10代に広がる脱毛の現状
近年、10代の子どもたちの間で脱毛に対する関心が高まっています。かつてはムダ毛の処理といえば、カミソリや除毛クリームなどを使って自己処理することが一般的でしたが、最近では美容脱毛サロンや医療脱毛クリニックを利用するケースが珍しくありません。特に中学生から高校生の世代では、部活や体育の授業、更衣室での視線が気になって脱毛を希望する声が増えているといいます。
脱毛を希望する理由の多くは「見た目の清潔感」「異性の目が気になる」「自己処理が面倒」といったものですが、中にはいじめの対象としてムダ毛が取り上げられるなど、切実な悩みを抱えているケースもあります。また、親が脱毛を勧める場合もあり、家族ぐるみで美容を意識するあり方も一般的になってきています。
■ SNSがもたらす脱毛の加速化
SNSの発展が、脱毛事情にも大きな影響を与えています。若年層が頻繁に利用するTikTokやInstagramでは、美容系インフルエンサーによるおすすめ脱毛サロンの紹介、実際の施術の様子の共有、アフターケアについての解説などの情報が容易に手に入ります。10代の若者が、美容への興味と情報へのアクセスを得ることで、「自分もやってみたい」と考えるのは自然な流れといえるでしょう。
また、他人と比べやすいSNSの世界では、「ムダ毛＝恥ずかしいもの」「処理していないのは自己管理の欠如」といった価値観が形成されやすく、無意識のうちに美容的なプレッシャーがかかっている可能性もあります。美や衛生に対する意識が高まることそのものは悪いことではありませんが、それが自己評価や人間関係に悪影響を及ぼしてしまっては本末転倒です。
■ 未発達な肌へのリスク
美容脱毛や医療脱毛は、安全性の高い技術として確立されつつありますが、体の成長途中にある10代にとっては、いくつかのリスクも考慮する必要があります。特に医療脱毛では、レーザーによる強い刺激を肌に与えるため、肌がデリケートな若年層では炎症や色素沈着などのトラブルが起こりやすいとされています。
さらに、ホルモンバランスが安定していない10代の場合、仮に脱毛を行っても再び毛が生えてくる可能性もあり、十分な効果が得られにくいことも。これにより、施術の回数が増え、コストや肌の負担も大きくなるという課題が指摘されています。
脱毛に関しては「何歳からならOK」という明確な基準はありませんが、多くの医療機関や脱毛サロンでは、15歳以上で保護者の同意がある場合に限り施術を受けられるといった年齢制限を設けています。信頼できる機関でカウンセリングを受けること、肌の状態や成長段階を見極めることが何より大切です。
■ 保護者が果たすべき役割
10代の脱毛事情において、保護者の関与も非常に重要なポイントです。単なる美容の一環として見過ごすのではなく、子どもが脱毛を希望する理由や背景にある思いをしっかりと受け止め、理解しようとする姿勢が求められます。
「見た目を気にしすぎるのは良くない」と頭ごなしに否定するのではなく、必要性やリスク、安全性などを一緒に調べたり、カウンセリングに同行したりと、子どもの意思と向き合うことが大切です。また、費用の面でも親の援助が必要になるケースが多いため、現実的なプランを立てることも欠かせません。美容以外にも心身の健康に関するさまざまな問題が絡む可能性があるため、子どもが自分らしく健やかに育つための選択肢として脱毛をどう扱うべきか、十分に話し合いましょう。
■ 社会としてどう向き合うべきか
脱毛の低年齢化が進む中で、教育機関や医療業界、美容業界も対応を迫られています。例えば学校現場では、ムダ毛や容姿に関するいじめ・からかいが起こらないよう、心の教育や個人の尊重を徹底することが求められます。
また、美容業界においても、10代を対象とする際には、過度な宣伝や高額契約を目的とした勧誘を避け、誠実で正しい情報とサービス提供が行われることが大切です。無理な施術によって肌トラブルが起きたり、誤った情報によって不安やコンプレックスが助長されたりしないような仕組みづくりが求められます。
さらに、医療機関においても、未成年の施術を行う際は保護者との十分な話し合いと、多角的なリスク説明が必須です。若年層にとって安全かつ安心できる脱毛環境を整えるためには、業界全体での取り組みが不可欠です。
■ まとめ：脱毛は「自己表現の一つ」、でも慎重に
10代の脱毛増加は、単なる流行ではなく、若年層の美意識や自己表現、そして社会からの影響といった複数の要因が絡み合った現象です。自分を良く見せたい、他人との違いを気にせず過ごしたい——そうした思いは、大人となんら変わらない自然な感情です。
一方で、子どもたちはまだ自分の体について正確な知識を持っていないことが多く、情報の取捨選択が不十分なまま、SNSで見た情報を鵜呑みにしてしまう危険性もあります。子ども自身が自分の意思で納得したうえで施術を受けられるよう、大人が正しい情報を提供し、サポートを行うことが必要です。
脱毛は、今や年齢を問わず「自分らしさ」を表現する手段の一つになりつつあります。しかしながら、身体的にも心理的にも発展途上である10代の身に施す美容行為だからこそ、家族や周囲の理解と慎重な判断が求められます。
私たち大人が果たすべき役割は、若者たちの「なりたい自分」を支えることと同時に、必要な知識やリスクへの備えを共に考えられる存在であることではないでしょうか。脱毛というひとつの選択を通じて、若い世代の自己肯定感を育む一助になれば、それは大変意義のあることと言えるでしょう。
