東京都心をぐるりと一周する山手線。その路線には、最新鋭の都市鉄道の象徴とも言える高架橋や地下区間が多く、交通インフラの進化を感じさせます。そんな山手線に、「踏切」がいまだに一つだけ残っているという事実をご存知でしょうか？その場所は多くの人に知られていないかもしれませんが、鉄道ファンをはじめ、地域住民や通行人にとっては注目のスポットとなっています。
今回は「意外？ 山手線に1つだけ残る踏切」というテーマに基づき、その唯一の踏切がなぜ残っているのか、そしてそこに込められた都心の風景や人々の記憶に焦点を当ててご紹介します。
山手線唯一の踏切、その名は「第二中里踏切」
2024年現在、山手線には正式に一つだけ踏切が存在します。その踏切は、東京都北区にある「第二中里踏切」です。場所は山手線の駒込駅と田端駅の間に位置しており、沿線をよく利用する方でも知らないという人が少なくない、まさに“知る人ぞ知る”都内の鉄道風景の一つです。
名称に「第二」と付いているのは、かつて周辺に複数の踏切が存在していた名残で、第一や第三といった踏切も過去には存在していたことを示唆しています。現在残るのはこの第二中里踏切のみで、山手線で唯一の“地上を横断できるポイント”として存在価値を保ち続けています。
なぜ踏切が残っているのか？
高架化や地下化の進んだ山手線の中で、どうしてこの踏切だけが取り残されているのでしょうか。
第一の理由として挙げられるのが、地形の問題です。駒込～田端間は小高い丘陵地帯を通っており、線路と周辺の地盤との高低差が少ない区間でもあります。これにより高架化や地下化を行うには多大な費用と工期が必要となり、周辺住民への影響も大きくなるため、優先度の低いインフラ整備となっているのが現状です。
加えて、この踏切自体がごく短い区間を横断するものであり、通行する歩行者・自転車も限定的です。そのため、交通渋滞や安全性といった理由で緊急に改善すべき問題というわけではなく、現状のままでも大きな支障がないというのが実情のようです。
また、この踏切の近くには同じく鉄道好きに人気の東北・上越新幹線の高架橋が並走しており、鉄道インフラが密集する地域として知られています。こうした特殊なロケーションも、この踏切が今も残されている理由の一端を担っているのかもしれません。
風情とノスタルジーの残る場所として
この第二中里踏切を訪れると、どこか懐かしさを感じる雰囲気に包まれます。都心で日常的に踏切の音や警報機の姿を目にする機会は少なくなっており、それゆえにこの場所は今となってはとても貴重な存在です。
特に通過する列車を間近で見ることができるこのスポットは、鉄道ファンにとっても撮影や観察の絶好のポイントとなっています。また、人々が行き交い、電車が目の前を通過していくという風景は、都市の原風景のようにも感じられ、多くの人にとって心のどこかに残る記憶の一部となっています。
「昔はここに踏切があってね」と語りかけたくなるような情景が、ここにはあります。
山手線の進化と、変わらない日常
東京という都市は常に変化し続けています。駅の再開発や新路線の開業、街の顔が年々変わる中で、山手線もまた技術と利便性の最先端を行く路線としてアップデートされています。2015年に開業した「JR東日本の新駅・高輪ゲートウェイ駅」や、最新型車両E235系の導入など、その歩みは止まることがありません。
それでも、この第二中里踏切が変わらずそこにあることは、多くの人にとって安心感や温かさを与える存在でもあります。便利さやスピードを追い求める中でも、変わらないものがあるという事実は、都市生活においてとても貴重なものなのです。
これからも踏切は残り続けるのか？
将来的にこの第二中里踏切もなくなる可能性はありますが、現在のところ明確な廃止計画は発表されていません。しかし、鉄道網の効率化や安全対策の観点から、いずれは廃止される運命にある可能性が高いでしょう。
それゆえ、今のうちにこの貴重な踏切を一度訪れてみるというのも、都市の今と過去を感じる良い機会かもしれません。地図で調べて足を運び、さらに近くの田端や駒込の下町情緒あふれる街並みを散策するのもおすすめです。
まとめ：変わりゆく都市に残された静かな名所
山手線唯一の踏切「第二中里踏切」は、最新の都市インフラに囲まれながらも、静かに存在感を放つ特異な風景です。過去と現在が交錯するその場所には、都市に生きる私たちの「記憶」や「感情」が確かに重なっているといえるでしょう。
もし通勤や通学、あるいは休日の散歩コースの途中でこの場所を訪れる機会があれば、ぜひ足を止めて見てください。電車の音、踏切の遮断機の動作、そしてその場を通る人々の姿――。それは確かに、東京のどこかで今も息づく「わたしたちの日常」の一幕なのです。
