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東出昌大、“山暮らし”が照らす新たな生き方──俳優から“山の人”へ

2024年6月、国内外で話題を集める報道の中心に立っているのは、俳優・東出昌大さんの“山暮らし”です。舞台やドラマを中心に活躍してきた彼の最新の動向が、映画界や芸能界のみならず、環境意識や地方生活など社会全体に思わぬ影響を与えつつあります。

俳優・東出昌大さんは、1988年2月1日生まれ。埼玉県で育ち、19歳で男性ファッション誌『MEN’S NON-NO』の専属モデルとして芸能界に入りました。その端正な顔立ちと185cmの長身が注目され、モデルとしてキャリアを順調に築いた後、2012年に映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優として注目を浴びることになります。同作では主要キャストの一人として出演し、高い評価を受けました。

その後の活躍は目覚ましく、『あまちゃん』や『ごちそうさん』といったNHKの朝ドラへの出演を果たし、2015年には女優の杏さんと結婚したことで公私にわたり注目の的となりました。2人の間には3人の子どもにも恵まれ、絵に描いたような幸せな家庭を築いているかに見えましたが、2020年には週刊誌での報道をきっかけに離婚という大きな転機が訪れます。

この一連の出来事により、俳優としてのイメージが一時的に損なわれ、メディア露出も減少傾向にありました。しかし、それに屈せず東出さんは新たな人生を模索し始めます。その象徴が、現在話題を集めている“狩猟と山暮らし”というライフスタイルです。

彼が現在拠点とするのは、山梨県内の人里離れた山中。携帯電話の電波もほとんど届かないという環境で、自らの手で小屋を建て、薪を割り、水を汲み、自然と共に生活をしています。食料は狩猟によってまかない、山の恵みを自ら解体して調理。車は持たず、電気も最低限のソーラーパネルを活用するという、まさに“自給自足”に近い生活。贅沢とは無縁の毎日ですが、彼の表情は画面越しでも清々しく、生き生きとした眼差しを見せています。

この暮らしぶりが密着取材などを通じて明らかになると、SNSでは「本物のサバイバーだ」「東出さんの生き方、すごく憧れる」といった声が相次ぎました。かつては東京を中心に華やかな舞台に立ち続けていた彼が選んだ“逆光の道”は、多くの人の心に響いているのです。

山での生活は、単なる「逃避」ではありません。彼は改めて自分自身と向き合い、自然の中で「生きるとは何か」を再定義しているように見えます。取材の中で東出さんはこう語っています——「都会は刺激的で便利だけれど、どんどん自分の“感覚”が鈍くなっていく。ここでは自然の音と匂いがすべてを教えてくれる」。このような言葉には、彼が都市生活と芸能界での経験を経てたどり着いた、独特の“哲学”が感じられます。

また、注目すべきは彼の活動が環境問題や地方創生にも繋がり得る点です。里山の保全、鹿や猪といった野生動物の被害対策、過疎地での地域活動——彼の実践は決して一人よがりなものではなく、地域と社会に対するアプローチのひとつでもあります。

そんな中、東出さんが主演を務める映画『Winny』では、ネットワーク技術と社会との関係性を巡る重たいテーマに真摯に向き合い、その演技が再評価を受けました。静と動、表と裏、そのすべてを内包した演技に、ファンだけでなく映画評論家からも称賛の声が上がっており、「山男」となった現在でも、表現者としての灯は消えていないことを強く印象づけています。

山での生活と芸能界での表現活動。その一見すると両極にあるような二つの道を、彼は決して排他的に捉えていません。現代社会における多様な生き方、選択肢の一つとして、彼の姿は多くの人々にとって希望やインスピレーションを与えています。

それは、都市生活に漠然とした疑問を感じている人にとって、あるいは環境問題やサステナビリティに関心を持つ若者にとって、「こんな生き方もあるんだ」と気づかされる突破口なのです。

今後、彼がどのように俳優業と“山暮らし”を両立し、どのように社会との関わりを深化させていくのか注目です。もしかすると、“自然の声を聞く俳優”として、従来のスター像とは異なる、新しい芸能人像を築いていくのかもしれません。

自分らしく生きること。その意味を胸に、東出昌大という一人の表現者、そして“山の人”が歩む次の道に、私たちも耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。