かつては人生最大の晴れ舞台とされ、高額な出費も当たり前とされてきた結婚式。しかし、今、そのあり方が大きく変わろうとしています。背景には、少子化や晩婚化、そして新型コロナウイルス感染症による社会構造の変化があり、ブライダル業界は大きな苦境に立たされています。中でも注目を集めているのが「7万円台」の結婚式。これまでの常識を覆すこの新たなスタイルは、業界の再生に向けた一つの希望となっているようです。本記事では、ブライダル業界の現状と「手頃な結婚式」がもたらす可能性についてご紹介します。
結婚式の「常識」が変わる時代へ
一昔前まで、結婚式と言えば招待客数十名から百名を越える規模で行われ、式場のレンタル費用、衣装代、料理、写真、引き出物など、さまざまなサービスがパッケージ化されており、総額は数百万円にのぼるのが通例でした。新郎新婦はもちろん、その家族も「一生に一度だから」という思いで慎重に準備をし、多くの時間と資金を投じて思い出として形にしてきました。
しかしながら、若年層の価値観が「モノ」から「コト」へとシフトしている中、加えて社会全体で経済的な不安定さが広がってきたこともあり、「無理をしてまで高額な結婚式を挙げたくない」と考えるカップルが増えています。特に、コロナ禍で生活様式が大きく変化し、リモートの普及や縮小された人間関係の中で「大人数で集まる式」の必要性自体が見直されるようになりました。
このような背景の中で誕生したのが、リーズナブルな価格帯での結婚式プランです。その象徴的な存在が「7万円台の結婚式」。驚くほど低価格に抑えられたそのサービスは、一体どのような仕組みで成立しているのでしょうか。
「7万円台結婚式」が実現できる理由
従来のブライダル業界では、式場や関連企業が提供するフルサービスが主流でした。それに対し、近年登場した格安結婚式プランでは、「必要なサービスに絞る」「時間を短縮する」「スキルのある少数精鋭のスタッフで対応する」など、徹底した効率化を図ることでコストダウンを実現しています。
また、大規模な会場の代わりにフォトスタジオや小規模なスペースを活用し、披露宴を持たない「挙式のみ」のスタイルや、二人だけの「フォトウェディング」形式も人気を集めています。衣装やヘアメイクも必要最低限にとどめ、オンラインで指示を出すことで人件費削減にもつながっています。
さらには、日常の延長線上で形式に捉われないスタイルを求めるカップルには、個性を発揮できる柔軟なプラン構成が喜ばれているようです。こうしたサービスの需要は、都市部だけではなく地方にも広がっており、これまで結婚式を諦めていた層にも新たな選択肢として浸透しています。
業界の「再起」をかけた新戦略
苦境に立たされてきたブライダル業界にとっても、「低価格帯の挙式プラン」は重要な打開策となっています。なぜなら、従来のスタイルから脱却し、より多様で柔軟なサービスを提供することで、これまで取り込めていなかった新たな層を顧客として迎えることができるからです。
ブライダル企業の中には、新たな需要に応えるために、若者に人気のカフェ風の式場を打ち出したり、SNSで映える空間演出を導入したりと、新しい価値提供にチャレンジしています。また、成約数が増えれば少ない単価でも収益性を維持できるというビジネスモデルが成り立ち、持続可能性の高い経営へとつながっていく可能性もあります。
加えて、テクノロジーの活用も進んでいます。オンラインでの打ち合わせや、バーチャル空間での招待など、非対面型の新しい結婚式の形が、時間と場所の制限を乗り越えるツールとして機能しています。こうした取り組みは若者の多様なライフスタイルにもマッチしやすく、今後さらに広がることが期待されています。
「安さ」だけではない、心温まる式の魅力
費用を抑えた結婚式は、「安さ」が大きな魅力であることは間違いありませんが、それだけではありません。形式に縛られないことで、自分たちらしい自由な発想をカタチにしやすくなり、結果として心温まる感動的な式が生まれているのです。
例えば、親しい家族だけを招いた少人数の食事会スタイル、思い出の場所で撮影を行うフォトウェディング、自宅や公園を使ったカジュアルな挙式など、その形態は実にさまざまです。そして、どのスタイルにおいても共通しているのは、「感謝の気持ちを伝えたい」という純粋な想い。余分な演出を省くことで、むしろ本質がより際立つケースも多いようです。
また、「予算が少ないから」と感じていたカップルが、思い切って実施した小規模式の後に「やって本当に良かった」と話す姿も多く見られます。結婚式の価値は金額だけではない――そのことを、7万円台の結婚式が教えてくれているように思えます。
これからの結婚式のかたち
日本の結婚式は、これからますます多様化していくでしょう。コロナ禍を経て培われた柔軟な発想や、新しい生活様式への対応力を活かしながら、自分たちらしい形を模索するカップルが増えると考えられます。
7万円台結婚式は、その先駆けとなり、「結婚式の本来の意味」に改めて目を向けるきっかけを私たちに与えてくれました。お金をかけることも大切な選択肢のひとつですが、限られた予算の中でも心を込めた式を作り上げることができる、という事実は多くの若者にとって大きな希望と言えるでしょう。
結婚という人生の節目を大切にしつつも、その形式に縛られない、もっと自由で、もっと等身大の結婚式が増えていく。そんな時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。
結婚式に関わる全ての人が、祝福に包まれる瞬間を見届けることができるよう、今後もより多様で柔軟なサービスが広がっていくことを期待します。
あなたらしい記念の一日を、心から応援しています。