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高齢ドライバーと免許返納──考えたい交通安全への向き合い方
近年、日本では高齢運転者による自動車事故が社会問題となっています。本日もまた、免許返納後に起きた事故が報道され、改めて交通安全に対する関心が高まっています。
2024年6月、埼玉県さいたま市で、77歳の男性が関与する交通事故が起きました。この事故は、車3台が絡む多重事故となり、複数の負傷者も出ています。驚くべきことに、この男性はすでに運転免許を返納していたにもかかわらず運転していたことが明らかになりました。事故の詳細や背景、社会に与える影響、そして今後私たちがどう向き合っていくべきかについて、改めて考えてみましょう。
■ 事故の概要
報道によると、事故が発生したのはさいたま市桜区の市道上。77歳の男性が運転する軽乗用車が交差点で前方の乗用車に追突、その勢いで乗用車がさらに別の車に衝突するという玉突き事故になりました。この結果、数人が負傷し、救急搬送されています。幸いにも命に別状はないとのことですが、大きな衝撃を伴う事故となりました。
さらに驚くべき点は、事故を起こした男性が一年前、運転免許を自主返納していたという事実です。つまり、運転資格のない状態で自動車を運転していたことになり、道路交通法違反（無免許運転）の疑いも出ています。
■ 高齢者と自動車運転
日本では、高齢運転者による事故が毎年相次いでいます。認知機能の低下や判断能力の鈍化、身体能力の衰えにより、運転操作ミスが起きるリスクが増えるためです。そのため、警察庁は一定年齢以上のドライバーに対して認知機能検査や高齢者講習を義務付けるなど、交通安全対策を強化してきました。また、運転に対する自信がなくなったり、家族や医師からの助言を受けて自主的に免許を返納する動きも少しずつ広がっています。
しかし、今回のように免許を返納した後にも関わらず運転を続けるケースは極めて危険です。一度免許を返納しても「まだ運転できる」と自身を過信してしまう高齢者も存在する中で、どのように再発防止に努めるかが問われています。
■ 「交通弱者」としての高齢者
高齢者の運転に関する議論では、単に「危ないから運転をやめるべき」という意見が目立つこともあります。しかし、地方では公共交通機関が発達していない地域も多く、高齢者が運転をやめることによって生活の質が一気に低下することも現実です。通院、買い物、趣味の活動など、日常生活の多くが車に依存している地域では、免許返納が「生活の断絶」となることもあり得ます。
そのため、都市と地方、地域によって事情が異なることを理解し、単純に免許返納だけを推奨するのではなく、移動の選択肢を増やす努力も必要です。
■ なぜ免許返納後も運転が？
今回の事故で疑問視されたのは、「なぜ免許を返納した後に運転していたのか」という点です。一般的には、免許を持っていなければ、車両を運転することは法律で禁じられています。しかし問題は、周囲がそれをどう監視したり支援できるかという体制にもあります。
例えば、家族は本人の意志を尊重しつつも、車の鍵を管理したり、車両を手放す手続きをサポートすることが考えられます。また、行政や地域社会も、免許返納者向けの移動手段提供や、返納後フォローアップ支援制度を充実させる必要があるでしょう。
個人の責任だけでなく、社会全体で支えることが、再発防止につながるのではないでしょうか。
■ 高齢者の交通事故を防ぐ取り組み
高齢ドライバーの事故を減らすためには、さまざまな取り組みが考えられます。
1. 高齢者専用の運転講習や試験の導入
より厳格に安全運転能力を審査し、運転継続の判断材料とすることが重要です。
2. サポートカー（安全運転支援車両）の活用
自動ブレーキや誤発進抑制機能などを備えた車両を普及させ、事故のリスクを軽減します。
3. 代替交通手段の整備
オンデマンドバス、シェアカー、地域見守りタクシー制度など、高齢者が安全に移動できる手段を提供する取り組みが進められています。
4. 家族、近隣、地域ぐるみの見守り
「運転を続けて大丈夫か」という声掛けをためらわず、異変に気づいたら早めに支援の輪を広げることが大切です。
■ 最後に
高齢社会が進む日本において、高齢者の自動車運転問題は避けて通れない課題です。車は便利な存在である一方で、誤った使い方をすれば凶器にもなりかねません。一人ひとりが「安全運転とは何か」「運転をいつまで続けるべきか」を真剣に考え、必要な時には勇気をもって免許返納や運転の見直しを検討することが求められます。
また、免許を返納した後の暮らしを支える社会インフラを整えることも不可欠です。自分のこと、家族のこと、地域社会のこととして、誰もが積極的に考え、支え合うことで、悲しい事故を一つでも減らしていくことができるはずです。
今回の事故から学びを得て、より安全で安心な社会づくりに向けて、私たち一人一人ができることから始めていきましょう。
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