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氷河期世代の老後不安を考える:社会と個人が今できること

【氷河期世代の問題 焦点は「老後」】

今、日本社会において改めて注目を集めている「氷河期世代」。彼らが直面する課題の中心には、老後の生活に対する不安があります。「就職氷河期世代」と呼ばれる人たちは、おおよそ現在40代半ばから50代半ばにさしかかる年齢層です。バブル崩壊後の景気低迷によって、新卒での就職が極めて困難だったこの世代は、キャリア形成のスタートラインで大きなハンディを負いました。その影響は、たんに若い頃の経済的な苦労にとどまらず、人生の後半戦にも影を落としています。

◆就職難のスタートラインが生んだ「非正規雇用」の拡大

就職氷河期に大学や短大、専門学校を卒業した多くの若者たちは、希望する職に就くことができず、非正規雇用に甘んじるしかない状況に追い込まれました。正社員への登用チャンスも限定的で、派遣やアルバイトで生計を立てながら社会人生活をスタートした人も少なくありません。

その後、日本経済が多少持ち直しても、彼らは他世代の正社員と比べると立場が不安定なままだったケースが多く、収入面、キャリア形成面、さらには社会保障面で不安を抱えやすい状況に置かれ続けました。雇用形態が将来設計に与える影響の大きさは、誰しもが実感するところかと思います。安定的な収入と職業保障がなければ、住宅購入や結婚、子育てといった人生の大きな選択に二の足を踏むことになります。後の人生にも連鎖するこの「スタートラインの格差」が、今、氷河期世代の老後問題として表面化してきています。

◆年金受給額への影響と将来不安

氷河期世代の不安は、老後の年金に直結しています。厚生年金に長期間加入している正社員と、非正規雇用で短期間ずつ働いた人とでは、将来受け取れる年金額に大きな差が出ます。例えば国民年金だけしか掛けていなかった場合、現行の制度で満額でも年間約80万円台後半、月額に直すと7万円程度にしかなりません。これは到底、生活費をまかなえる水準ではありません。

もちろん、年金だけで生活できないことは、多くの世代に共通する問題となりつつあります。しかし特に氷河期世代の場合、貯蓄を形成する余裕も乏しかった人が多いことから、老後に向けた備えが十分でないケースが目立ちます。さらに、親世代の介護負担を抱える「ダブルケア」の問題も重なり、自分自身の老後設計をする余裕を失っている場合も見受けられます。

◆社会全体でどう支えるか

このままでは、今後20〜30年の間に、生活に困窮する高齢者が急増する恐れがあります。社会保障制度に対する負担も大きくなることが予想されますし、場合によっては孤独死やホームレス化といった、極めて重い社会問題を引き起こすことさえ懸念されています。

国や自治体も事態を重く見ており、氷河期世代支援の施策を打ち出しつつあります。具体的には、就労支援や職業訓練、正社員登用促進策、さらには住宅支援や生活支援に至るまで、多岐にわたる取り組みが進められています。しかし一方で、対象者数が膨大であるため、すべての人を救い上げることは容易ではありません。取り残される人をいかに減らすかが今後の大きな課題です。

また、人生100年時代と言われる現代において、40代〜50代はまだまだ現役世代ともいえます。働く意思と能力のある人をどのように社会が生かしていくか。柔軟な雇用形態の整備や、年齢にとらわれない採用・登用慣行の見直しも、合わせて求められます。

◆個人にできる備えとは

社会の支援を待つだけではなく、個人としてもできる備えを考える必要があります。例えば、今からでも第二のキャリアを形成する努力をしたり、スキルアップに取り組むこと。そして、将来的な家計支出を見直し、少しでも貯蓄に回す努力をすることも大切です。

また、地域コミュニティやボランティア活動に参加することで、人とのつながりを持ち続けることも老後の安心感につながります。孤立を防ぎ、助け合いのネットワークに自ら参加することは、精神的な豊かさにも直結します。

さらに、生活保護制度や地域包括支援センターなど、困ったときに頼れる公的支援策について情報を得ておくことも重要です。予め制度を知っておくだけでも、いざという時の不安感を軽減できます。

◆まとめ〜未来を悲観しないために

氷河期世代の抱える問題は、決して本人だけの責任ではありません。むしろ、社会全体の構造的な問題の結果として生じたものです。それだけに、一人ひとりが孤立せず、社会全体で支え合う視点が求められます。政府や自治体の施策に期待しつつも、私たち一人ひとりが共感と支援の輪を広げていくことが何よりも大切です。

そして、たとえ今が不安であっても、未来を決して悲観する必要はありません。人生には何歳からでも新たにスタートを切るチャンスがあります。小さな一歩、小さな努力の積み重ねが未来を変える力になります。

氷河期世代が安心して老後を迎えられる社会の実現に向けて、今、社会全体で、そして個人としてもできることを一緒に考えていきたいものです。

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