大阪・関西万博におけるパビリオン建設や輸送の遅れが報じられるなか、6月18日に日本国際博覧会協会(万博協会)の十倉雅和会長が記者会見を開き、現在の進捗状況と課題について説明を行いました。今回は、その詳細とともに、十倉氏のこれまでの経歴や背景に触れながら、万博を巡る熱い舞台裏に迫ります。
2025年に開催予定の大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、世界中から多くの国・団体が参加予定です。しかし、建設工事の入札不調や、それに伴うスケジュールの遅延が以前から噂されており、開催に向けた進捗が懸念されていました。18日の会見で十倉会長は、こうした課題について真摯に説明しながら、改めて「万博成功への強い決意」を表明しました。
十倉雅和氏は、現在、日本経済団体連合会(経団連)の第15代会長も務める、日本経済界を代表するリーダーの一人です。1950年に兵庫県で生まれ、1974年に東京大学経済学部を卒業後、住友化学工業株式会社(現・住友化学株式会社)に入社。持ち前のリーダーシップと経営手腕で順調にキャリアを重ね、2011年に住友化学の代表取締役社長に就任。その後、代表取締役会長を経て、2021年6月に経団連会長に就任しました。日本経済の発展と社会課題解決を両立させる取り組みを掲げ、多様性やイノベーションの推進にも積極的に取り組んでいます。
そんな十倉氏が万博協会のトップに座る背景には、彼の「難局でこそ力を発揮する」という信念があります。今回の大阪・関西万博の推進においても、数々の課題が浮上するなかで、冷静に現状を分析し、関係者への粘り強い働きかけを行ってきました。
今回の記者会見では、まず各国が建設するタイプAパビリオン(いわゆる「自前建設」のパビリオン)の進捗状況について、現時点では24カ国が着工しており、残る8カ国も間もなく工事を開始する予定であると説明しました。つまり、タイプAパビリオンについては「全て建設の目処が立った」と明言し、憶測や不安を払拭しようとする姿勢を見せました。
一方で、工事の遅れによる輸送計画への影響についても問われましたが、万博協会と各国が連携しながら適切に対応していく方針を示しました。十倉会長は「誰かを責めるよりも、関係者が一丸となって困難を乗り切るべきだ」と語り、厳しい局面においても前向きに力を合わせる重要性を訴えました。
また、会場の建設コスト上昇問題についても触れ、「現状ではコスト増が避けられない」としつつも、追加の財政支援について政府・自治体と調整を進めていることを明らかにしました。開催まで約10カ月というタイミングでの正直な情報開示は、多くの関係者、国民に対する誠意ある対応として評価されつつあります。
十倉氏は以前から「万博は単なるイベントではない。日本経済の再生、都市のイノベーション、人材育成への大きな投資だ」と語ってきました。今回の会見でも、その信念は揺らぐことなく、長期的な視点で大阪・関西万博の意義を訴えました。世界中から最先端技術や文化、アイデアが集まり、未来社会に大きなインパクトを与えるこのイベントを、成功裡に収めるため全力を尽くしていく姿勢を改めて強調しました。
万博会場建設には多くの民間企業も協力していますが、資材価格高騰、人手不足、労働環境改善など、現代日本が直面する社会課題とも直結しており、一筋縄ではいかない状況となっています。それでも、こうした困難を克服するプロセス自体が、未来の日本の成長につながるのだと十倉氏は信じています。
会見の最後に、十倉会長は「今回の万博は単なるショーではない。次の時代、次の世代に向けた挑戦の場だ。その意味でも、皆さんの協力と応援をお願いしたい」と力強く呼びかけました。この言葉には、日本経済界を長年牽引してきたリーダーとしての責任感と、未来への希望が込められていました。
今後も大阪・関西万博に向けた動きからは目が離せません。そして、さまざまな課題と向き合いながらも、成功へと導こうとする人々の努力に、ぜひ注目してみてください。困難を乗り越えるその軌跡こそが、2025年の万博を特別なものにするに違いありません。