2024年4月、銀座の街並みを一瞬にして賑やかにした人物がいます。その名はGACKT(ガクト)。彼の登場は、まるでスクリーンから飛び出した映画のワンシーンのようにドラマチックでした。5月24日に公開される実写映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』のPRイベントの一環として、都内・銀座に本物の馬にまたがって颯爽と現れたのです。
突然銀座の交差点に現れた馬上のGACKTに、道行く人々は思わず足を止め、スマートフォンを構えてその姿をカメラに収めようとしました。その一瞬だけ、銀座という日本を代表するハイブランドの街が、まるで中世ヨーロッパの王宮のような異世界に包まれたかのようでした。
今回の騎馬イベントは、GACKTが演じるキャラクター「麻実麗(あさみ・れい)」にちなみ、80もの都道府県名を叫びながら駆け抜けるという壮大な趣向。「埼玉の逆襲再び」という映画のテーマを体現するような演出で、通りかかった人々はもちろん、報道陣、SNSユーザーからも大きな注目を集めました。
この日、GACKTは全身黒の衣装で身を固め、頭には王冠のような金の飾りをつけており、まさに“埼玉の救世主”ともいえる風格。映画の中では誇り高き“埼玉解放戦線”のリーダーである麻実麗として登場しますが、その役柄さながら、現実の東京のど真ん中でも完全にそのキャラクターを体現していました。
今回の映画は、前作『翔んで埼玉』(2019年)に続編として制作されたものであり、前作が公開された当初は“ご当地差別”をギャグとして昇華し、埼玉県民の自虐ネタや自尊心を逆手にとった内容で大きな話題となりました。その中核にいたのが、GACKT演じる麻実麗。彼が本作で再び同役を演じることはファンの間でも熱烈に歓迎されており、復帰作としての注目度も非常に高いといえます。
GACKTは、一時体調不良のため芸能活動を休止していました。2021年に持病の悪化により重度の発声障害を発表し、その後約2年間の活動休止を余儀なくされたのです。しかし2023年、徐々に活動を再開し、この作品が本格的なカムバックを飾る映画作品として位置づけられました。
GACKTという存在は、音楽、映画、テレビ、舞台と多彩なジャンルで活動する稀有なエンターテイナーです。沖縄県出身で、本名は大城ガクト。MALICE MIZER(マリス・ミゼル)というヴィジュアル系バンドのボーカルとして一躍ブレイクし、その類まれな美貌と歌唱力で人気を確立。その後ソロアーティストとして活動を本格化させ、ビジュアルロックにとどまらず、バラード、クラシックアレンジなど幅広い音楽性を展開していきました。
彼のキャリアのユニークな点は、単なる音楽活動にとどまらないところにあります。俳優としての才能も見出され、映画『Moon Child』(2003年)ではhydeと共演し、その幻想的な世界観の中で強烈な存在感を放ちました。また、バラエティ番組では極度の食へのこだわりや、完璧主義な性格を垣間見せ、独自のカリスマ性で視聴者を惹きつけてきました。
そのGACKTが、長い療養期間を経て再び表舞台に復活したことは、彼を長年応援してきたファンにとって非常に感慨深い出来事です。今回の銀座での騎馬イベントは、単なる映画の宣伝を超えて、彼の「完全復帰」を象徴するセレモニーのようでもありました。
また、映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』のストーリーも今作では関西へと舞台を移し、滋賀や京都、大阪などの地域も巻き込んだ壮大な“県民エンタメ”へと発展しています。自虐かつ愛にあふれるユーモアたっぷりの脚本は、再び日本中の笑いと涙を誘うことでしょう。
GACKTはこのイベントで「やっとこの日を迎えられたこと、ものすごく自分でも感慨深い」と語りました。多くの人が心配し、待ち続けた彼の復帰は、多くの希望を与えるものであり、一人の表現者としての執念と努力を感じさせる瞬間でした。
振り返れば、GACKTの歩んできた道は決して平坦なものではありませんでした。個々の作品に真剣に向き合い、身体を削ってまで表現に没頭する姿勢。その姿にこそ、今も変わらぬ「GACKTらしさ」が息づいているのです。
映画、音楽、そして生身のパフォーマンスを通じて、再び我々の前に現れたGACKT。伝説的カリスマが最前線に戻ってきた今、2024年のエンターテインメントは彼を中心に大きく動き出す予感がします。
『翔んで埼玉』というユニークな作品を媒体にして、GACKTは再びその一挙手一投足で人々を魅了し、新たな“伝説”を紡いでいくでしょう。そして私たちは、その物語をリアルタイムで共有していく幸運に恵まれているのです。